表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/23

飛び立つ白鴉(はくあ)

なろう以前に活動していたオンラインゲームのサービス終了から着想を得て書いたものですね。

――滅び消えてしまった世界


管理者が創造せし大樹の

巨葉の元に築かれ

八つの種族が互いに共存しあい


魔物という侵略者から

互いを助けつつ

手にした武器で撃退する


楽しくもあり 苦しくもあり

嬉しくもあり 悲しくもあり

美しくもあり 醜くもあり

希望もあり 絶望もある


そんな物語たちが秘められていた


いつの頃からか

人はいなくなっていった

多かったのが

少しずつ少しずつ


煌めく宝石の輝きを

荒い砥石で削るように


手桶に盛られた砂が

零れ落ちるように


人々は新たな世界に去っていった――


停滞した世界

終わりを迎えた物語

やりがいの無い目標


楽しさは薄れ

退屈さが満ちた


新たな楽しさを見つけるために

全ての人々は去った


現在(今)はもう

一人の老人と 老人の肩に乗った

一匹の白い鴉だけだ


雄大な大樹は

人々が去っていったことで

青々とした幹は朽ち始めており

今にも倒れそうだ


大樹の下に

封印された黒く深い闇が

今か今かと解放を待つ


誰も彼も去った世界に

終焉をもたらすために

解放の時を待ち続ける――


白鴉(はくあ)

私は託そう

この世界の思い出を

この世界で綴られた物語を」


老人の瞳から一筋の涙が流れ落ちると

涙は結晶となり

白鴉へと吸い込まれた


白鴉の瞳は写す

美しいモノを

醜きモノを


白鴉は得る

愛しきモノを

憎きモノを


白鴉は生きる

楽しい時を

苦しい時を――


老人の想いを宿し

白鴉は飛びだった


世界には老人がただ一人となり


封された深い闇という洪水が

大樹を飲み込んで

世界に終焉をもたらす


老人は抗うことなく

思い残すこともなく

ただ瞳を閉じて

終焉の洪水に飲み込まれた――


終焉の洪水は飲み込む


衣装を仕立て、余興を行う婦人が住まう丘陵も


貧しき親子と黄金の魚が生きる湖も


静寂の隠れ里から抜け出した

エルフの少女が住まう砂丘も


失ったものが集まる島がある計りの山も


美しい川と牧場のある高原も


ブドウを愛する老人がいる沼地も


無慈悲な太陽に照らされ続ける

鍛冶師が住まう大地も


幾千の時を生きた老樹が佇む森林も


大賢者の魔法によって造られし

寡黙な名人がいる地溝も


灼熱の炎と料理人が住まう火山も


太古の遺跡と優しき狩人が住まう草原も


破壊から創造をする少女が住まう街道も


迷いの森の奥深くにある隠れ里も


創造者の涙より生まれた湖にある幻の都も


創造者が羽を休める地である聳え立つ岳も


魔物たちの支配者がいた廃墟となった城も


創造者によって滅ぼされた巨塔も


花と芸術に囲まれた美しい都も


黄金の穂波と

穏やかな風に揺れる都も


美しい自然を見せる

山に築かれし都も


何もかもが終わりを迎える


白鴉は終わりゆく世界を振り返らずに


ただただ次なる世界へと

小さな羽を羽ばたかせる


数多の本がある世界へと

終わる世界の思い出を宿して――


これは次なる世界へと繋がる

悲しき(うた)系譜(クロニクル)


滅んだ世界の導き手の

最期の言葉


「ボクであるキミたちへ

これでボクが伝える物語は終わりだ

最後にこの言葉は贈ろう

ボクはキミたちのことを

この身が滅んでしまっても

キミたちの記憶の中で

ずっと見守っているよ


それじゃあ バイバイ」


《終》

サンホラメジャーデビュー前の、最後の同人活動作であるChronicle2ndのオマージュだらけです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ