納涼祭詩
納涼祭の作品群をまとめた作品ですね。
これも寄稿したのは、新嘗祭後なんですけどね。
ルルイエの奥底にて
眠りしクトゥルフは
真夏の夜に
いくつかの夢を視る
ある夢は、夜を華やかせる花火となり
ある夢は、寝たきりの少女とラムネを飲む少年となり
ある夢は、逃げ水を追いかける少女となり
ある夢は、幽霊を見た少女となり
ある夢は、木漏れ日を作り出す若葉の一枚となり
ある夢は、夜の川に光を灯す蛍となり
ある夢は、かき氷を食す少女となり
ある夢は、逃がされる金魚草となり
ある夢は、庭に咲く向日葵となり
ある夢は、過去と現在の子育てを比べる夫婦となり
ある夢は、ラムネを飲む時を語る者となり
ある夢は、身体の棘を抜かれゆくサボテンとなり
ある夢は、アイスクリームを食べる少女となり
ある夢は、木の精と遊んだ少年となり
ある夢は、幼きころの思い出を飲み干そうとする青年となり
ある夢は、ルルイエに堕ちてきた青年の視た幻想となった
ルルイエが視せる
真夏の夜の夢の形を取った
泡沫の幻夢たち
それは、遥かなる永き眠りを続ける
主であるクトゥルフへの慰めなのか
真実は謎のベールに包まれたまま
クトゥルフが目覚めし
星振が正しい位置に揃う時まで
覆い隠されるだろう――
《終》
これは、けっこう評判が良かった記憶があります。