疾走、そして出会い
木々の間を、一人の少女が走っていた。
息は荒く、何かから逃げる様に時々後ろを振り返りながら。
「はあっ…はあっ…」
事実、彼女は逃げていた。森のヌシとも呼ばれる大蟷螂、『ジャックマンティス』から。
「全然っ…振り切れない!」
蟷螂は5m近い体格ながら、高速で移動するモンスター。
少女は、このままでは捕まることを理解しながら、先程の行いを後悔していた。
彼女の名はリリィ、一月程前にデビューした新米冒険者だ。
こうなってしまった訳は、ホーンラビットを追っていた彼女が、蟷螂の縄張りに踏み込んでしまったからだ。
「このままじゃ…きゃっ?!」
足を何かに引っ掛け、転んでしまう。
高速で追いかけて来るモンスターの前で転べば、迫るのは死のみ。
思わず彼女は身構えるがーーーそこには何も居なかった。
「あ、 あれ?もしかして、逃げ切った?よかったぁ。」
彼女は安堵しながら、自分が足を引っ掛けた何かを見る。
「何…これ? 人の…足⁈」
いや、足だけでは無い、自分と同い年くらいの無傷の少年が横たわっていた。
「ええっと…生きてますかー?」
如何すればいいのか分からず、呼びかけてみる。すると、
「魔力供給完了、起動します。」
突然声が発され、少年が起き上がり、唖然とするリリィに言った。
「あの…起こしてくれてありがとうございます。」
(えっ?何これ?如何ゆうこと?)
わけがわからなかった。
(マリョクキョーキュー?キドー?一体なんなの?)
頭の中には疑問ばかりが浮かぶ。
「あの、どうかしました?」
「ひぇ?!はいぃ?!」
「いえ、こちらを見つめて固まっていたので…」
「ああ、なんでも無いの、ごめんなさい。私はリリィ、冒険者よ。それで…幾つか聞いても良い?」
「?ええ、何でしょう?」
少し落ち着いたところで、疑問を口にする。
「あなた、一体何者?名前は?何故こんなところで眠っていたの?」
とりあえず軽い質問をする。
「ええっと、まず名前から答えましょうか。
僕の名前はルーク、機械人形です。ここでは魔力を補給するために眠っていました。」
「ーーは?」
疑問が、増えた。




