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親友である彼との会話も終えた。
やはりと言った物の久しぶりという事もあり積もる話の解消から次に会う約束まで取り付けることが出来てしまい、なんとなく私の中で自身の尻に傷を負わせる事も悪くないと思った所だ。
彼は自宅のアパートに帰り、僅かながらの満足感に浸りながらそのまま自転車を押すような形で元々の目的である薬局に向かって歩を進めている。
「......」
辺りは流石田舎の夜というだけあり怖いほど静かで街灯だけの薄暗さがある。
臆病な私だ。持参していたイヤホンを携帯に繋げ良く有るような芸能人のラジオのチャンネルを覗いた。
「む?」
自転車を押しながらも目に入ったのはトイレットペーパーだった。
怪訝なことにそのトイレットペーパーはそこらへんの道路上に落ちていたとは思えないほど保存状態が良好で、暗い夜道の中、視力の弱い私でさえハッキリ白く輝いていたのだ。
「ほう」
これはこれは珍しいと言うべきか奇怪と言うべきなのか不気味と見るべきなのかと問われる場面ではあるのだが、戸惑っていたのも私には束の間だった。
「そう言えば我が家のトイレットペーパーが切れてた訳だが、いくら保存状態が素晴らしいとは言え道端に落ちている尻を拭く紙を我が家専属の尻拭き紙にするのは果たして、いやしかし......」
そんなつまらぬ葛藤をしている内に私は道路に入りそのトイレットペーパーを自転車の籠にそっと入れた。