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「お?」
「お、やあやあ」
幼馴染に出会った。
トイレから帰還して薬局に向かってその途中の道から偶然の遭遇である。
誰が図らったものか分からぬが彼は中高からの親友で大学に入ってから2年近くほとんど会う時間がなかったために嬉しい再会とも取れる。
私は痛い尻で乗っていた自転車から腰を上げ徒歩で帰宅すると思われる彼の横を歩いた。
「これはこれは親友よ、久々に会うじゃないか。通っていた大学はどうだ?」
これは私だ。
親友は私の目をからかい気見ながら、私の問いにテンポを置いた。
心無しか彼が少しばかり嬉しそうに見える。
「......そいつはもちろん楽しいさ。
アルバイトから理系科目を選択した過ちで高校時代から変わらぬ量の勉強量。友達から誘われた軽音サークルでの休めぬバンド活動。こういう物を青春という奴なんだろうなとばかり思う所だ。」
そう言って彼は片腕に背負っていたギターのケースを改めて背負い直した。
私はそんな彼を「いい事だ。素晴らしい」と茶々を入れた。
彼は薄い笑顔で「そう言うお前は楽しいかい?」なんて事を私に問うたのだ。
「時間を持て余す事を羨むなら間違いなく私は楽しい人間の一部だろう。
ただ娯楽もこれと言った趣味も無い文系には時間があるという事は苦痛でしか無いさ。サークルに入ろうともアルバイトを増やそうとも思わないからね。そういう意味じゃ毎日引っ張りダコである君が羨ましく見えなくもない」
「つまり?」
「退屈さ、君は高校の時と比べてどっちが楽しかった?」
他愛ないの無い問いだが、ここで僅かながら会話に間が出来た事は彼も私も分かっているだろう。