1日きりの恋愛ストーリー
こんなに綺麗な人が犯罪なんて犯してしまったんだろう。それも償えぬほど大きな罪を。僕と目があうと彼女は少し寂しそうに笑った…
その時、僕は決意した。
彼女をこの檻の外へ連れ出してあげようと。
彼女の死刑執行日まで残り24時間。
「おい」
「あら、もう執行かしら?」
呼びかけると彼女は随分と穏やかな口調で問うてきた。死を覚悟している様子だ。
「違う。君は死なせない、僕がここから出す」
僕は牢屋の鍵を取り出して鍵を開けようとした。その俺の手にオリの向こうから伸ばされた彼女の指がわずかに触れる。
「ダメよ、やめて。」
「なぜ!?」
「やっぱり…貴方でしょう?私が食べる牢屋のご飯を美味しいものにコッソリすりかえていたのは。他にも色々よくしてくれたんでしょう?その優しさが嬉しかったわ」
また笑顔。
「ねぇ、私、こんなに人に優しくしてもらったのは初めて。だから貴方が好きになってしまったの」
やっぱり笑顔。
「だから、貴方は私を助けてはダメ。貴方には未来があるんだもの。この先、私はあなたの隣には立てない。今更、後悔しても遅いわね…」
なんで笑えるんだ。こんな状況で、、なぜ僕は泣くことしかできないんだ。
「もっとはやくに貴方と出会えていればこんな事にはならなかったかもしれないわね」
彼女をはやくここから出して連れだしてしまおう。彼女がなんと言おうと助けだそう。
そう思うのに体は金縛りにあったようにぴくりとも動かない。
「はやく行ってちょうだい、あやしまれるわ」
こんなときに自分のことよりも僕のことを優先してくれる。優しい女性じゃないか。死刑にされるなんて嘘っぱちだ…
「そう、それでいいのよ。さようなら」
俺の足は彼女の牢屋を通り過ぎていた。背中に彼女の声を受ける。さっき彼女は僕のことを好きだと言ってくれた。両思いだったんだ。
儚く苦しい僕と彼女の恋愛ストーリー
たった1日で終わりを迎えた
さようなら。僕は君を心の底から愛していた