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天使のチョーカー  作者: 福森 月乃
つばさかがやく
19/19

終章

このたび、無事「天使のチョーカー」完結いたしました。

駄文ながらもこの長文を読んでいただいた方々ありがとうございました。

まだまだ、執筆においては勉強中です。

ご意見、ご感想ございましたら寄せていただければ、次回作の励みになります。

ご愛読本当にありがとうございました。


 学び舎の学食は生徒で溢れていた。

乳幼児から大学生くらいの幅広い年齢層でとても賑やかだ。

厨房で数人のコックとカウンターを切り盛りするしおりの姿がある。

カウンターの一部でも食事ができるようになっており、厨房の中を見ることもできた。

その一角にモデル並みに背が高く中肉中背のスーツ姿の男が座っている。

食器が乗ったトレイを持った小学生くらいの子供たちが口々に言う。「サラリーマンだ」「また来てるよ、サラリーマン」「なに?サラリーマンって」「給料もらって働く人間のこと」「雇われ平社員」「あの人、人間なの?」「違うけど」悪意があるのかないのか子供たちは持っている知識をフル稼働して話している。

 不意にサラリーマンは振り返りギラリと眼鏡を光らせた。

「食事を受けている時は静かに。それと僕はサラリーマンではなくファリアです。悲しいことに民族衣装が死ぬほど似合わなかった為に仕方なくこの格好で…」

嘆く彼を尻目に子供たちは食卓へと向かっていった。

彼は咳払いをすると目の前の焼き魚定食を食べ始める。

子供たちにとって冴えない感じだったが実際は違う印象だ。

背が高くスレンダーな体型。

細面の顔にブルガリのゴールドカラーのスクエアメガネ。

その奥には切れ長の瞳が光り長い睫毛が重たげに瞬いている。

筋のとおった高い上品な鼻。口は程よい大きさで薄い唇が覆っている。

ダークブラウンに染められた髪はショートで掻き流され毛先は軽く遊ばせている。額に掛かった前髪がセクシーだ。

 量販店で買い揃えた安物のスーツを着ているが何故かモデルと見間違えるくらい出来過ぎた出で立ちだ。

 そんな彼は白い歯をみせ爽やかに笑いながらカウンター越しに声をかけた。

「しおりさんの食事、変わらず美味しいな。ついつい足を運んでしまいます」

 忙しく動き回りながらしおりは曖昧な笑顔を返した。

しおりは島を中心に活動をするようになり、以前と変わらずレシピ提供、調理指導などで世界中を飛び回っている。ダージリンの言っていた手伝いは、どんな仕事にせよ二人にとってそれがデートのようなものだった。そして週に二回学び舎の食堂を手伝っている。

 ご機嫌な彼の背後から冷気が忍び寄る。

「あなたはとっくにこの学び舎を卒業したはずですが?」

肩に添えられた手の先に民族衣装姿のダージリンが冷たい視線を投げていた。

 あからさまな嫉妬に指で眼鏡を押し上げ男は鼻で笑いあしらった。

「休憩時間にここで食事をしてはいけない決まりはなかったとおもいます。センセイ」

二人の間に静かな火花が散る。

賑わう人混みをかき分け、黒い髪を揺らしながらミルクティが現れた。

 息を切らせ薄ら汗をかいている。

「クラウンロイヤル、やっぱりここか。教育係のクーはどこだ?」

「クラウンでいいですよ。お昼別に取ろうと言って別れたきりです」

そう言って食事を再開する。

「しょっちゅうここに来るけど、あいつちゃんと仕事してんの?」

小声でダージリンはミルクティに耳打ちした。ミルクティはにやりと笑うと腕組みした。

「お前の再来だと言われてるぜ。出来過ぎ君だ」

「教育係のクーが教育されているって噂は本当か?」

「ああ。噂とおりだな」

笑いをかみ殺しながらミルクティはお道化た口調で言った。

 楽しげに会話を交わすしおりとクラウンロイヤルから目を離さずダージリンは零した。

「何やってるんだ、クーのやつ」

 苛立たしげなダージリンとは対照的にミルクティは愉快そうにマイクを持つふりをした。

「最近は、イケメンと合コンカラオケに夢中らしい」

そこで話を打ち切り、ミルクティはクラウンの腕を引いた。

「食事は終わりです。クーを探して仕事に戻りますよ」

厳しい口調にクラウンの表情が一気に引き締まる。

彼は目を細め最上級の魅力的な笑みを浮かべると、しおりの手を取り指先に唇を寄せた。「また来ます」

女の子たちから黄色い歓声が上がり、男の子たちからはブーイングの嵐だ。

クラウンの行動に一瞬あきれ顔になったミルクティだったが、明らかに不機嫌なダージリンに声をかけた。

「ダージリン。一緒にお願いします。あなたの力が必要なんです」

ミルクティの真剣な眼差しにダージリンは静かに真顔で応え頷いた。

「臨時の講師を手配してください。わたしはこれから出ます」

ミルクティの後にダージリン、クラウンロイヤルと続き賑やかな子供達をかき分け食堂から姿を消した。

 日々変化する忙しい日常を今日も受け入れながら、しおりたちの生活は続く。

寝殿で新たな命が生まれるときも

翼あるものが安らぎに導くときも

闇から出でしものが足を掬うときも

鋼をもつものが誰かの首をはねたときも

魂を追いファリアが舞うときも

                                       了


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