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妖霊夜行  作者: 二鈴
第一章 はじまり
8/31

八権現 悪食と。

悪食と正面から出会い、そのまま部屋に連れ込まれて、高級そうなテーブルを挟んで向かい合う。

何故、こんな状況になったのかというと、強引に彼女に少しばかりお茶をしましょうと誘われて、そのまま流されてしまったからだ。

 断ろうとも思ったが、自分より遥かに格上の相手からの誘いを断る勇気はなく、言われるがままにこうしているというわけだ。

 我ながら情けないとは思うが、下らない事で不利益を被りたくはなかった。

目の前にいるのは、自分よりも圧倒的強者である。ただの不利益が、致命的なものに代わる可能性とてあるのだ。

 だからこそ、大人しくこの場にいるのだ。本題ではないような雑談は、適当に答えておいて、彼女が本当に話したい事を見逃さぬようにしていた。

見逃せば、自分の身が危ないような気がする。命に関わる程の難事とまでは言わないが、どうしようもない厄介事に巻き込まれそうな気がするのだ。

 その予兆を見逃さない程度に会話を続けていると、ここからだと言わんばかりに、悪食が雰囲気を変えて、口を開いた。

 

 「私と出会った時からの様子を見てる限り、私の力、というより中身を分かっているようねぇ。流石八咫烏のお気に入りというべきかしらぁ」

 「ええ、自慢の弟子になれればいいなと思っています。ところで、僕としては早く帰らせていただきたいんですが」

 「それは無理よぉ。わざわざ鍋金が私と会わせようとしたぐらいなんだから。それも少しの会話だけで。それならじっくり話してみたくもなるわぁ」


 ゆきめが、こちらを居た堪れない表情で見ながら、眼の視線だけで謝罪の気持ちを送っているのを見て、溜息を吐きながらも、もう逃げられないと覚悟を決めて付き合う事にする。

あの店員――鍋金に嵌められたというべきなのだろうか。しかし、全くの勘ではあるが、罠を仕掛けるような人物、というより妖怪には決して見えなかった。

 彼からしてみれば、何か理由があるのだろう。隆高があれだけ警告していた人物、悪食と会わせようとするだけのものが、あるはずだ。

 どうせなら、とことん腹を据えて、この空気を耐え忍ぶしかないだろう。


 「貴方からすれば鍋金に嵌められたと思ってもおかしくないでしょうけど、私は悪いけどとっても楽しみなのよぉ?」

 「何が、でしょうか」

 「私の正体を見抜いたうえで、平然と会話を続けられるんですもの。初対面で、震えるだけで済ませられるなんて、なかなかいないわよ」

 「褒めてるんでしょうね」

 「もちろん」


 皮肉で言った言葉を、食えない笑顔で即答される。八権現で見たことになるのは、隆高に続いて、目の前の悪食で二人目となるのだが、どういった人物であるのかは、まだ良くわからない。

話を聞いた限りでは、人を害するであろう存在である妖怪を保護している人物であり、それでいて力は絶大なものがある、という程度の事しか知らない。

 力がある、というのは紛れもない事実だろう。浄眼については、隆高から話を聞いたぐらいでしか分かってはいないが、目の前の権現を相手にして、この力のありがたさを知った。

嫌でも相手の力というものが分かるのは、どういう事か、というのを思い知らされる。

 師匠という事になっている隆高の背後にいたのは、今になって確信できる。異名の通りの『八咫烏』だった。あまりにも眩しい、太陽を連想させるかのような輝き。

ちらりと話に聞いた事があるぐらいだが、あれは確かに、この国の神の一柱だったはずだ。それが、隆高の身に宿っているとなれば、確かに凄まじい力を持っていると言えるだろう。

 では、目の前にいるこの悪食は、どういった力をその身に宿しているのかと思ったが、この女性の場合は宿しているのではない。


――彼女自身が、あの穴になっているのか。


 彼女自身が、真っ黒な穴になっている。それが意味するところは、つまり。


 「まさか、あなた自身が」

 「本当に、驚くほど"視えて"いるわねぇ。そうよ、私の身体、混ぜ物なのよ」


 びっくりしたかと楽しそうに話しかけてくる虚に対して、ゆきめは信じられない、という様子でこちらを見てくる。

普通の人物には、分からないものなのだろう。自分とて、浄眼がなければ、恐らく分からなかっただろう。

 少しだけ、浄眼について分かった事と言えば、明らかに自分よりも格上の相手の力が分かる、という事と、その正体について唐突に理解する、という事だろうか。

どちらも、これからの自分にとっては重要な力になってくるのが、確実だった。

この力のおかげで、極端に力の差がある場合は、はっきりと分かるからだ。到底勝てぬ相手や、一方的に捕食されるだけの存在というのも、脳内に叩き込まれるように分かる。

 そして彼女は、間違いなく、捕食者だ。


 「妖怪とのね。だから毛嫌いするのが多いのよぉ。そんなのが第四位にいるんだから、面白くないに決まってるわよねぇ? うっかり"事故"にでも巻き込まれたら良いのにって思われても仕方ないわねぇ」

 「そ、そうですか」


 この女性、かなりいい性格をしている。早々に、嫌な話ばかりを振られている気がする。

事故というのは言うまでもなく、別の事を意味しているだろう。そういうのに慣れていない、自分ですら分かるように伝えている。

 どうして混ぜ物になってしまったのか、と聞きたいが、踏み込むべき内容でもないだろう。下手を打って機嫌を損ねたら、どうなるか分からないのだ。

 下らない自分の好奇心で、我が身を危険に晒したくはなかった。

 しばらくは、彼女の話を聞くだけに徹していたい。そう思っていたが、悪食がそれを許してくれるかどうかは、彼女の気分次第だろう。


 「特に貴方のお師匠さんはその思いが強いでしょうけどねぇ。無二の友人を"妖怪"に寝取られたようなものだけど、その怒りを混ぜ物の私にぶつけるのは理不尽よねぇ」

 「へ?」

 「ふふ、彼が妖怪を恨む理由の一つよ。……言葉通りに受け取ってくれても構わないわぁ?」


 いきなり地雷を置いてきた彼女に対して、畜生、と思わず吐き出しそうになるが、ぎりぎりで押しとどめる。

隆高の裏話なんて、今聞いたところで、 何にもならない。しかし、妖怪に関する話なら別だ。


 「八つあたりも良い所よねぇ。悪いのは妖怪の口車に乗った、その友人なのに、一方的に妖怪だけを非難するなんて」

 「ですが、もしかしたらその妖怪に騙されて」

 「本当に全ての妖怪が、そうやって人を食い殺す事だけを願っていると思う? 今日貴方が会った、ゆきめと鍋金。二人とも人を食べると本気で思ってるかしら?」


 即座に返答しようとして、言葉に詰まる。

 彼らが、人を襲って喰らうような化物には、到底見えない。

 少なくとも、彼らは違うのだろう。人を食い殺すような化生とは違い、人と共に生きようとしている。ただの人食いの獣ではない。

 其処まで考えて、虚が何を言いたいのか、なんとなくではあるか、分かってきたが、言葉には出さない。

 確実に分かった事柄と、自分の考えだけを述べるのが、一番の正解だろう。

 

 「思いません」

 「断言するのね? もしかしたら、彼女たちが魅せているのは表の顔で、裏では容赦のない人食いの顔を持っているかもしれないのに」

 「人食いが、そもそもこの祓し屋の建物にいられないだろうという、ごく当たり前の発想は出来ます」

 

 いつのまにか、猫の耳を生やした少女が差し出したお茶を手に取り、少しだけ啜る。

彼女も恐らく妖怪であるのには間違いないが、もう気にするような暇もないだろう。悪食の視線が、試すようにこちらを見る。

 

 「分からないわぁ。巧妙に、その姿を隠しているのかもしれないし、本人が気づかぬ所で、人を喰らっているかもしれない。哀れな二口女のようにね」

 「ここはその道のプロが集う所でしょう? そんなプロが見逃すとは思えません」

 「プロですら見分けがつかない程強大な妖怪だっているのよぉ? 貴方のすぐ近くにもいるかもしれないのに」

 「そしたら御終いでしょうね。自分は無残にも食べられてしまう」

 「ええ、御終いねぇ。怖くないのかしら」



 怖いに決まってるだろう、と本音が出そうになるが、堪える。

さっきから胃がきりきりと締め付けられるような感覚に襲われているのに、これ以上その締め付けを強くする様な事を言われても困る。

 こちらの命をすぐにでも奪える存在がいて、さらにその命が、そいつらにとって極上の食事にもなると知ってしまったら、恐れるに決まっている。

 

 「怖いですよ。でも、ある意味それも自然の事かなと」

 

 言ってしまった。悪食の目がぴくりと動く。それから、口角が自然と上がっていく。


 「あらぁ、貴方は自然と言うの? 人が食べられてしまう事が?」

 「あんまり、認めたくはないですけどね。ただ、僕達だって鳥とか牛とか、魚とか、他の生き物食べてますしね。妖怪からしてみればそれと同じようなものでしょう」

 「人には知恵や知識があるけど?」

 「牛とか魚にだって最低限のはあるでしょう。食われないようにするための知恵ぐらいは。でも彼らは罠に引っ掛かったり、実力でその命を奪われたりする。僕達も同じですよ」


 言ってやった、という思いと同時に、やってしまった、という思いが湧いてくる。

これで、じゃあ貴方も食べていいのね、とか言われて食われてしまったら、まさに笑えない。

 そんな不安を抱えながら悪食を見ていると、彼女は柔和な笑みを浮かべる。浮かべただけで、眼はまったくといっていいぐらいには、笑ってなかったが。


 「そう、貴方は人と妖怪を割と"公平"に見ているのね」

 「というより、ゆきめさんと鍋金さんを見て言っているだけですから、また別の妖怪を見たら手のひら返すかもしれませんよ?」

 「そこは分かってるわぁ。まぁ、いいでしょう」


 ゆきめが、その一言を聞いて、ふぅ、と息を吐いてから、アイコンタクトでよかったですね、と全力でアピールしてくる。

もしかして、自分は気づかない間に相当危険な綱渡りをしていたのか。思い返すと、結構突っ込んだ事を言ってしまったような気がする。

 ならば、隆高の友人の話は妖怪に対する偏見を助長するために、わざと言ったのだろうか。

妖怪に対して、その話を聞いてもなお公平に見れるならば良し。もしも、それだけで勝手に妖怪は悪だとする短慮を告げていれば、自分はどうなっていたか。

 想像した瞬間に、背筋が寒くなる。綱渡りどころか、本当に小さい棒切れの上を歩いていたようなものではないのか。

彼女の話しぶりから、人と妖怪を限りなく公平に扱っているようであり、妖怪も人も同じようなものだと考えている節が見られる。

 ゆきめや鍋金、それに隣にいる猫耳の少女も外見は人間に近いものがあるが、全員が妖怪であるのは間違いない。

それらを見た上で、今までの自分が想像する妖怪についての意見を言っていれば、まさに命は無かったのではないか。

 ゆきめは、第一印象から、現在に至るまでの様子からして、助命のお願いをしてくれるかもしれないが、悪食たる彼女がそれを許してくれただろうか。


 「……凄く、命を掛けてたんじゃあ」

 「あー、八咫烏の所のお兄ちゃん、やっとそこに気づいたの?」


 ぼそりと呟いた一言を、猫耳の少女がからかい気味に言葉を飛ばしてくる。

こっちからすれば安堵の言葉を茶化されたように感じるが、反論はしない。反論したところで、自分が間抜けだった事には変わりがないからだ。

 まるでこちらが反応せずに無視をしていると、露骨にむすっとするが、ゆきめが死姫ちゃん、と笑顔で圧力をかける。


 「やーん、ゆきめがいじめるよー、(うつろ)さまー!」

 「はいはい、死姫ったら甘えん坊さんね」


 死姫と呼ばれた少女が、虚と呼ばれた悪食の後ろに隠れる。彼女の本名はうつろというらしい。

別にそれを知った所で、何かが変わるわけでもないが、覚えておいて損は無いだろう。 

 ゆきめが、こういう人がいる場で名前で呼んではなりません、と言うが、虚はまったく気にしていないらしく、言葉を続ける。


 「最初から命を取るつもりはないわよぉ? 試しみたいなものだから」

 「そうですか」


 今更言われても信じられないが、本人が言ってるなら、そういう事なのだろうと、表面上では受けとっておく。

もうどうにでもなれ、という心地になっている自分がいるのを確認して、呆れたものだと自嘲する。

 いざという時には、どうしてもやけっぱちになってしまう事が多い。あの時も、慶介を見捨てていれば、もしかしたら自分は助かっていたかもしれないのに皆と共に残ってしまった。

自分さえ良ければそれでいいとは思えないが、今後はそういう事も必要になってくるかもしれない。

 では、その時になったらその通りに動けるかと言えば、否と言うしかないだろうが。


 そんな自分を、どう判断したのか、虚は指先を弄りながら、妖しく微笑む。

話しにくい人物だ。腹の底を読ませない。表情では笑っていても、次の瞬間にはこっちの首を躊躇いなく跳ね飛ばしてそうでもある。

 開き直ってる身ではあるが、やはりいつ自分の命が飛ばされるのか分からないのは、耐えがたい恐怖なのだ。


 「ふふ、やっぱりあなたは面白いわ。鍋金が呼んだ理由も分かるわぁ」

 「ありがとうございます。……では、そろそろ」

 「ええ、でもその前にもう一つだけ、話してあげるわ。これは引っ掛けでもなんでもなく、私からの個人的なご褒美よぉ」


 ご褒美と聞いて、何が出てくるのか身構える。慶介辺りなら、お姉さんとエッチな事ですか、などとのたまって飛び込むかもしれないが、生憎と自分にはそんな度胸は無い。

悪食がもたらす褒美とはどういうものが出てくるか分からないし、何か曰くつきのを渡されるかもしれない。

 そんなのだったら、どう断ろうかと思ったが、渡されたのは三つの符だった。音と繋という字、それから声と書かれているこの符はなんなのだろうかと、まじまじと見ていると、虚が口を開く。


 「今の時代で言えば、携帯電話みたいなのものねぇ。それで、貴方が知っている人物を思い浮かべて、その符に話しかけてごらんなさい。何事もなければ五分ぐらいは話せるわぁ」

 

 予想以上に便利かつ、普通な物を貰って逆に動揺する。その様子を見て、狙っていた通りだったのか、虚がにやにやとしている。

やられた、と思いつつも、これに何の意味があるのか、という目で虚を見つめると、虚が続けて言葉を紡ぐ。


 「なんで携帯電話とかがあるのに、それを渡すのか。ちょっとは想像つくでしょう?」

 「異界化した場合、それらが無力化されるから、ですか?」

 「そうよぉ。ついでに良い事を教えてあげるとね。異界化の予兆と、貴方達にとって危険な妖怪や化物が近づいてくる時って同じ兆候があるのよぉ」

 「どんな、ですか?」

 「妖怪は闇に生きる者達であって、基本的に光は好まないわぁ。また都市伝説や祟り神のような穢れを強く持つ者も同じねぇ。でもって、ある程度力があるものが出る時は、まず部屋の明かりが何もないのに、いきなり切れたりするわぁ」

 

 それが第一段階だと述べて、虚がこちらを見る。続けてくれと、頷いて促す。


 「それが終わると、完全に光がつかなくなるわぁ。何の異常もないはずなのにね。次に空気が冷たくなってくる。穢れを溜め込んでいるもの程ね。まぁ、これもそれ以上に強大なモノになるとまた違うけれど」

 「それで?」

 「ここまでよ。ここまでは教えてあげるわぁ。後は八咫烏にでも聞いておきなさい」

 「あのけちんぼの弟子になって性格悪くならないようにねー」

 「死姫!」


 虚の言葉に、一言余計な事を足していく死姫にゆきめが頬を膨らませて怒る。

その時だけ、虚の顔が柔和な笑顔に戻ったように見えたが、ただの気のせいだと言うように、雰囲気は変わっていない。

 この符はありがたく貰っていくとして、退出してもいいかと告げる。

虚は、もういいという風に手を振り、ゆきめに手で指示を飛ばすと、ゆきめが立ち上がり、部屋の外へと案内する。

 ゆきめが案内してくれるのだろう。それなら安心だと、ついて行こうとすると、虚がちょっと待ちなさいと、留める。


 「どうしました?」

 「もらった符は、一言主から頂いた、という事にしておきなさい。そっちの方が良いわよぉ? 八咫烏が私を毛嫌いしているのはもう知ってるでしょぉ?」

 「……分かりました。肝心のその一言主様と面識はないのですが、どうすれば」

 「それだけで、八咫烏は納得するわよ」


 はたして、その言い訳が通じるかどうかは別として、そういう事にしておこうとトシは考えた。

下手に正直に言えば、自分が許されたとしても虚に迷惑が掛かりかねない。そして、その迷惑のツケを自分が支払うハメになるかもしれないのだ。

 だったら、素直に好意は受け取っておこう。

そう考えて、ゆきめに案内されるままに、部屋から退出した。








 「あれで良かったんか、虚」

 「良かったのよぉ」


 トシ達が消えた後、何もないはずの空間から裂け目が出来て、男が一人現れる。

虚からしてみれば、限りなく馬鹿な男であるが、嫌いではなかった。というより、自らの内にあるこの感情に対して整理をつけるのは難しい。

 今の虚からしてみれば、どうとも答えづらいが、己の快楽の邪魔にはなっていない。それでいいと、自分を納得させる。


 目の前にいた滋岳俊彦という少年は、面白い。あれだけの脅威を目の当たりにしたのに壊れぬ精神と、浄眼の力、八岐大蛇の力を持っている。

彼自身は、不幸にも巻き込まれただけの一般的な男子のつもりだろうが、そうである可能性は限りなく零に等しい。 

 八咫烏が保護したのも、それが理由だろう。そして自分は、彼を見ているだけで、永遠にも等しい生の中で、新たな楽しみを見つけられたのだ。


 「わっるい顔してんなぁ、虚。そんなだから、他の奴等からも怪しまれるんやで?」

 「私に変な格好をさせようとする貴方よりは大分健全よぉ? あれをばらしたら、貴方の地位はともかく、人望が激減するかもねぇ」


 男がそれを聞いた瞬間に、顔色を変えて、大慌てになる。


 「や、やめんか虚!? そんなことしたら俺の威厳が台無しになるって話やないで!? それにおまえもあかんやろ!?」

 「私にきわどい衣装きてくれって頼まれて、無理やり着せられたとかの方がいいかしらぁ?」

 「……勘弁してくれや、ほんま」


 男がもう降参だと手を挙げた所で、くすりと笑う。この男といる分には、退屈とも程遠い。

こんな身体になってなお、自らの身体を元に戻すか、別の解決方法を模索するこの男は、どうにも嫌いになれない。

 戯言を述べているようで、どこか熱いこの男。故に虚からすれば、あの時、強引にでもこの男に攫って欲しかった。


 「ま、いいわ。あとは話を合せてねぇ、一言主?」

 「へいへい。人使い荒いわ。ほんまに……」


 八権現第三位であり、馬鹿な理想を追いかける男。

 一言主を隣に立たせながら、虚は笑みを深くした。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

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