助っ人?
「友人」のシリーズ、3作目です。
若干の性描写がありますので、苦手な人は引き返してください。
「暇だ………」
夏休み。本来ならあいつと恋人らしくで、デートとかをするべきなのだろうが、休みに入ってすぐ柔道部は1週間の合宿に行ってしまった。
出不精な俺だからずっと家に引きこもって、漫画読んで、ゲームやって、テレビ見て、パソコンいじって、時々宿題をやって。
でもなにか物足りない。物足りない理由はわかってる。あいつがいないから。
なんとなくあいつの顔を思い浮かべて、恥ずかしくなってすぐ消して。それを繰り返してもう6日。
いい加減飽きてきた。
「姉貴の同人誌でも読むか」
バイトで貯めた金をあの夏の戦場で失ってくるうちの姉貴。画集ばっかりで見る気は今までなかったけど、そんなこともどうでもいいくらいに暇だった。
勝手に入っていいよ。と言われてはいるけど一応ノックする。返事はない。
部屋に入ると本や漫画はきっちりと本棚に並んでいるのに、脱ぎ捨てられた下着やらは散乱している。
「相変わらず汚ねえな」
後で洗濯してやらないと。とりあえずこの後の予定を決めた俺は本棚を眺める。
ふと床を見ると、同人誌が一冊放置されてる。珍しいな。と手に取ると、これまた珍しく漫画だった。
「あのゲームのやつか。ふうん、順当なカップリングだな。BLだけど」
薄いから大した時間は潰せないだろうけどないよりマシだ。
部屋に持ち帰ってベッドに横なって広げた。
「うわ!?な、これ!……成人向けかよ」
今までも色々読んできたけどここまで直接的な表現はしてなかったぞ……
うわ…こんなこと、するんだ……わかってたけど…見ると恥ずかしいな…
「う……。こんな読んだら…しかたないよな…」
ティッシュを枕の横まで近づけてズボンを少しずらして熱を持ち始めた部分に手を触れる。
生理現象とはいえ恥ずかしいな……
「ふ……ぅん。……はぁ」
最初は同人誌を見ながらだったのに、今は目を閉じてあいつの顔が浮かんでる。
弄る手も両手になってる。すごく恥ずかしいのに気持ちよくて止まらない……
「ん…!んん……!―――っ」
思わずあいつの名前を口に出したその時
ばあん!と
もう少しというところでけたたましい音でドアが開け放たれる。
そこにはにんまりといやらしい笑みを浮かべ、カメラを持って仁王立ちしている姉貴の姿。
「引っかかったわね!しっかりと撮ったわよ!可愛い弟のちt」
「死ね!クソ姉貴!」
近くにあったティッシュ箱を顔面に投げつける。時計じゃなかっただけマシだろ!
とりあえずズボンをはきなおして、鼻を押さえてうずくまる変態姉に近寄る。
くそ……気持ち悪いし途中だから変な感じだ……
しかもあんな簡単な罠に引っかかった自分が不甲斐無い……
「どういう了見だ」
「まあまあ。良い情報を持ってるのよ」
「ああ?」
この変態、意味のわからないことでシラを切ろうってのか。
「あなたの愛し人、今日帰ってくるってよ。怪我したんだって」
「はあ!?なんであいつの連絡先をお前が知ってんだよ!……じゃなくて!」
「だってぇ、あの時の見てたもん。あのあま〜いキ・ス♪」
恥ずかしさで一気に顔に血が上ってくる。
もう駄目だ。殺すしかない。
ベッドに戻って時計を手に取る。
「ああ!待った待った!ごめん!ホントごめん!消すから!ね?だからそれはやめて!」
「………連絡先は?」
「あの日あの子が帰るときに外で捕まえて聞いたのよ」
「あいつは気軽に教えない。何をダシにした?」
あいつの携帯の番号・アドレスは必要最低限な奴にしか教えないし、入ってない。
そんなやつがこんな変態に教えるはずがない。例え俺の姉でもだ。
「ええと……色々♪」
「死んでしまえ」
「ヒド!実の姉にそんなこと言うなんて!いいじゃん!寝顔写真の1枚や2枚!」
「死ね!いつの間に撮りやがった変態!」
なんでこんな奴が俺の姉なんだ……
ん?あいつが帰ってくる?そっか……
え……怪我!?
「怪我って!?え、なんで!」
「そろそろ駅に着くってよ。迎えにいく?」
「当たり前だろ!」
「じゃあさ〜、あの子喜ばせてみない?」
「ん?」
数十分して駅前。姉によればそろそろ着くらしい。
いやそんなことはどうでもいい。よくないけどいい。
問題は……
「何だよこの格好は!?」
「可愛いわよ♪」
髪を後ろに纏められ、いつもは隠れてる顔にはしっかりとメイクをされた。
そして上はキャミソール、下はしっかりと脱毛処理をされた上で膝上のスカート……
「何でこんな……!」
「静かにしないと、男ってバレちゃうわよ。いいのかな〜」
「〜〜〜〜〜!」
「それに着たのは自分じゃん。興味あったの?」
「ねえよ。でも……あいつが喜ぶなら」
そう。あいつが喜ぶなら女装だってしてやるさ。
見たらなんて言うかな。驚くかな。
すごい楽しみだ。思わず微笑がこぼれる。
「くぅ〜!可愛いぃ!撫で撫でしてあげる!」
「やめろ!」
「あ。着いたみたいね」
駅のホームに電車が入ってくる。
なんだかドキドキしてきた……。怪我、大丈夫かな。
改札にゾロゾロと学校指定のジャージを着た集団が現れる。
そこにあいつを見つけて俺は思わず駆け出した。
「大丈夫!怪我したって聞いて……」
「え…?あ、その…」
言葉を返してくれないから顔を見上げるときょとんとした顔で俺を見てる。
もしかして俺に気づいてない?
周りの部員達は、「いつの間にこんな可愛い彼女作ったんだよ」とか「さすがだな」とか冷やかしてる。
「やあ!」
「あ、あなたは。え、じゃあ」
姉貴が声をかけた事であいつはどうやら気づいたようだ。
気づかれたとわかるとなんか恥ずかしくなってきた…
「怪我したのは俺じゃない。先生だ。安心しろ」
「そうなんだ……。良かった…」
「よく似合ってる」
「……ありがと」
喜んでくれた……。嬉しい…!
このままならどんだけ良かったことか。
姉貴がとんでもない提案をしてきた。
「どう?これからうちに来る?」
そういってあいつの耳に顔を近づけて俺とあいつだけに聞こえるように言った。
「この子、さっきまであなたの名前呼んで慰めてたのよ」
俺の顔が一気に熱くなる。
一方あいつは口端を上げて笑い、答えた。
「じゃあ、是非」