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第八話:甘い買物

 学校からすぐ帰ることになったが、放課後、翔達にチョコレートを渡そうという女子達に囲まれて翔達が学校を出発出来たのは一時間目も半ばのころだった。


 当然、全て持って帰るのが不可能となってしまったため、いくつか学校のロッカーに入れて帰るハメになってしまったが。


 そして、本日ばかりは暴走自転車というわけにはいかず、チョコレートを落とさないようにとゆっくり漕ぐ翔に、紫月は気になっていたことを話し始めた。


「翔君、やっぱりおかしいと思いませんか?」

「何がだ?」

「学年閉鎖になったことです。昨日まで確かに数名は休んでいましたけど、ここまで一気に広がるなんて普通はないかと思いますが」

「そりゃなぁ、学年の半分がいきなり休んだんだもんな。スーパースプレッダーばかりの学年だった、なんてオチかもしれないけど」

「今までも学年閉鎖が何回も起こってたんですか?」

「いや。一度や二度ってところだな」

「じゃあ、その可能性は低そうですね。エスカレーター式の学校なんですし」


 だとすれば一体何が原因なのか、そう紫月はますます考え込んでしまう。故意にウイルスを撒き散らす事など可能なのかと……



 それから天宮家に到着した二人は、こんな時間から家に帰るなどという少し妙な気分を味わいつつ、玄関の扉を開けた。


「ただいま〜!」

「ただいま帰りました」


 ドサリと聞こえた音に反応して、沙南はリビングのドアを開いて高校生組を迎え入れる。ただ、表情はキョトンとしていたが。


「おかえり。翔君と紫月ちゃんも学年閉鎖?」

「もってことは……」


 高校生組がリビングのに視線を向ければ、末っ子組がニコッと笑い、ぴょこんと姿を現し驚いた。


「純! お前達もか!?」

「うん! 皆インフルエンザだから明日もお休みなんだって」

「へえー、やっぱりインフルエンザが流行してんのかなぁ?」

「純君、六年生だけですか?」

「そうみたい」


 コクりと頷く純に紫月は考え込む。どうもおかしい、これほど偶然が重なるなんて有り得ない。


 しかし、学校が休みになって何して遊ぶかという話しになるのが翔と末っ子組である。もちろん、それを止めるつもりはないが。


「でもよ、兄貴達も大変なんだろうなぁ」

「兄さん達は今日一日オペだって言ってましたから、そこまでは影響ないんじゃないですか?」

「じゃあ、大変なのは紗枝ちゃんか」


 あれだけ休んでいるのだ、きっと聖蘭病院はインフルエンザ患者でごった返しているのだろう。


 それから沙南は玄関先に置かれたチョコレートの袋を抱え、その数に感嘆の声を上げた。


「だけど沢山もらったのねぇ」

「半分以上紫月だよ。もう、モテるのなんのって……」

「翔君だって沢山もらってるじゃないですか」

「やきもちとか? でぇっ!!」


 翔は思いっきり頭を叩かれる。ただでさえも恥ずかしいというのに、沙南達の前でいうのはやめてもらいたいものだ。


 ただ、紫月が若干赤くなっていることに、沙南は小さな笑みを零す。


「くだらないこと言ってないで、さっさと着替えてください。買い出しにも行かなくちゃいけないので」

「へいへい。それより沙南ちゃん、秀兄貴達まだ寝てんの?」

「起きて二人で出かけたわよ。すぐに帰ってくるとはいってたけど」

「いいよなぁ、デートかぁ。紫月、俺達も」

「買い出しデートが出来るんですからいいじゃないですか。沙南さん達もついて来て下さるんですし」

「それってデートか?」

「両手に花の男性以上に贅沢でしょう?」


 紫月は絶対否定できない言葉を告げてくれた。確かに沙南と紫月がいる時点で両手に花以上だ。しかし、しっくりはこないのだけれど……


 そんな言い返せない翔に沙南は苦笑して促した。


「ほらほら、早く着替えて買い出しに行きましょ。お昼の材料もちょっと足りないしね」

「うおっ!? そりゃ困る!」


 昼ご飯が遅くなるのは勘弁だと、翔は急いで二階に駆け上がるのだった。



 そのころ、とあるブティックにいた秀と柳は……


「あの、秀さん……」


 頬を赤らめて試着を終えた柳は秀の前に姿を表した。


 彼女が着ているのは薄桃色のワンピース。左右二つの肩紐、キュッとしぼったウエスト、そして少し短めの丈が彼女の繊細さを引き立たせている。


 何を着ても似合う美少女ではあるが、こういった大人っぽさを演出するものは滅多に見られないので、秀はそれはご満悦な表情を浮かべた。


「ああ、とても似合いますね」

「ありがとうございます……」


 柳はさらに俯いた。ミニスカートはともかく、彼女はこういった肌を露出するスタイルというのはいまいち慣れない。それにこういった服を着こなしてしまう最強クラスの女性がいるため、自信がないのも事実だ。


 ただし、秀はだからこそ着せたくなってしまうという、ほぼ八割はからかいたいという理由で彼女に勧めているのだけれど……


「これは買うこと決定ですね。さて、アクセサリーも選びましょうか」

「秀さん、その……」

「ああ、金額は気にしないでください。僕からのプレゼントですから」

「そんな! こんな高いもの!」

「菅原会長のツテですから大丈夫ですよ。何より、今夜は天宮家で騒ぐ予定が変更になりそうですから、先にそのお詫びです」

「えっ? どういうことですか?」


 柳が首を傾げると、秀はガラスケースに入ったアクセサリーを吟味しながら答えた。


「それは兄さん達と合流してからお話し出来るかと思います。でも、せっかくのパーティーなんで柳さんには着飾って頂きたいですし、チョコレートと一緒に君も頂きたいですし」

「なっ……!!」


 一気に茹蛸が出来上がった。その反応に秀の悪戯心はさらにくすぐられ、独特なデザインのシルバーネックレスを選んで柳に近付けば、それは甘美な笑みを浮かべて彼女の耳元で囁く。


「チョコレートと君はどっちが甘いんでしょうねぇ?」

「し、しゅ……!」


 ついにフリーズした柳に秀はネックレスをつけてやり、頬に一つ口づけを落とした。


「さて、お会計してきますから少し待ってて下さいね?」


 そう告げて会計に向かう秀の声は聞こえず、彼女は気の毒なぐらい、しばらくそこに立ち尽くしているのだった……




さて、こんなにいちゃつくカップル、さぞ店員さんは迷惑だろうなと思いますが、秀がやると何故かありかもと……

チョコレートと柳ちゃん、例え何があろうと頂くつもりだ……

というより、邪魔したら……


はい、そんなこんなで年少組は揃って学年閉鎖。

そんな事態に紫月ちゃんはやっぱりおかしいと考え込んでいる模様。

その勘は次回に当たってくれるかなと思います。


なんせ、二日間お休みなんですからね、トラブルの一つや二つ起こらないなんて天空記じゃありませんから(笑)




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