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第五話:シャンパン

 突然王の間に入り込んできた鷹の部隊に、闇の女帝は不機嫌さをあらわにしても慌てることはなかった。こういったところは、いかに女帝という立場がお飾りではないと現れる場面だ。


 ただし彼女の場合、元々の気質もあるが力もある。さらに世界を相手にしても勝てるんじゃないかというものまで、此処には二人もいるのだから……


「天宮秀、奴らを蹴散らせ」

「どういうことです?」

「例の麻薬密輸集団の特殊部隊だ。お前ならすぐに片付けられるだろう」

「僕に命じないで下さい」

「……高級ホテル、ペア宿泊券に裏ルートで取引されているフランス産の媚薬でどうだ?」

「承りました」

「秀様……」


 命じられるのは嫌いでも買収されることに関しては何とも思わないらしい。ただ、その買収も彼の興味を引くものでなければ成立はしないが……


 そんなやりとりがされているとも知らず、武装した鷹の特殊部隊のリーダー格であろう男は、闇の女帝達に銃口を向けながら要求を告げる。


「闇の女帝だな?」

「鷹の無法者が妾に何の用じゃ」

「何、この地下街の権利を我々に譲っていただき、そして貴女には我が主の側室にでも」

「控えよ! 誰に向かって口をきいている!」


 全てを言い終わる前に闇の女帝は言い放った! 彼女の性格上、誰かに飼われるぐらいならその飼い主を消すぐらいのことはやる。特に鷹の下っ端に要求を述べさせる時点で彼等は彼女の敵に値した。


 やれやれ、と思いながらも秀はとりあえず叩き潰すかと上着を脱ぐ。


「闇の女帝、くれぐれも力を発動しないようにお願いしますね。あなたの力は巻き込まれると面倒なので」

「妾も使うつもりはない。さっさと片付けよ。ただし、火は使うな」

「ええ、兄さんが頭を抱えるようなことはしませんよ!」


 その瞬間! 突如秀の姿が消えたかと思えば、目の前に拳が迫っていてリーダー格の男は簡単に殴り飛ばされた!


「うわあ〜〜!!!」

「隊長……!!」


 声を発した時には顎に膝蹴りが決まる! 秀はそのまま顎を蹴って浮かび上がった男の胸を踏み台にして、銃を構えていた男の頭部に回し蹴りを決める。


「撃て!! 撃つんだ!!」

「おっと!」


 秀に向けて銃弾が放たれるが、彼はそれを難無く避けて強烈な乱打を繰り出し、その体を立っていた男達にぶつけて巻き込んだ。


「くっそ〜〜!!」

「ん?」


 ナイフを持って突撃してきた男の顔面を長い足で蹴り飛ばせば、彼は鼻血を吹いてその場に沈む。ただ、落としたナイフを拾い上げれば、秀の柳眉は吊り上がった。どうやら毒付きナイフらしい。


「なるほど、僕に毒を使おうなんていい度胸してますね」

「なっ……!!」


 男達はかつて味わったこともないような悪寒を感じると同時に、強烈な一撃をお見舞いされた。


 そんな秀の鮮やかな戦闘が繰り広げられている中、闇の女帝は側近に命じてシャンパンを持ってこさせ、それを嗜みながら桜姫に尋ねる。


「桜姫、そういえばお主は何の用で来た?」

「はい、明日、天宮家にお越しいただけるように」

「行くに決まっておろう! 純と夢華のために妾がチョコレートと新しい洋服と」

「そこまでにしておいてください。主がまた気苦労なさいますから」

「ふむ、そうか。それよりお主もどうだ? 話はそれだけではないだろう?」

「はい、いただきます」


 桜姫はニコッと笑みを浮かべるとグラスを受け取りそれに口づけた。しかし、どうやら闇の女帝は話が早いらしい。シャンパンの味で、すでに彼女が伝えに来た情報を持っていそうだということを理解した。


「モエ、ですか」

「ああ。土屋が明日、取引現場に行くらしいがそう伝えてやってくれ。じゃなければ妾もモエのシャンパンを楽しめぬよ」

「かしこまりました。では、彩帆殿も?」

「そういうことだ。本来なら純と夢華を連れていきたかったのだがな……」

「……主には御内密にしていただきたいところですね」

「仕方ないだろう、二人に着せたい新しい服が手にはいったんじゃ!」


 その姿を妄想して悶えてしまう闇の女帝に、桜姫は何とつっこめばいいか分からなくなった。確かに、あの末っ子組にいろいろ着せたくなる気持ちは分からないでもないが……


 そして、桜姫は人を殴る音が止まったことに気付いて秀の方を向けば、彼は悪魔のような顔をして唯一意識を持っていた男に詰め寄っていた。


「ひいぃぃ!! 化け物が……!!」

「化け物とは失礼ですね。だけど最後まであなたは意識を保っていられてたんですから良かったじゃないですか。さて、早速あなた達の組織の情報、たっぷり吐いていただきましょうか」


 男の襟首を掴んでニッコリ笑う美男子で、ここまで恐怖を与えるものは世界広しといえども彼ぐらいなものだろう。これから地獄という名の尋問を受ける男が敵ながら気の毒になってしまう。


 だが、幸か不幸か、それは行われなくなった。闇の女帝に耳打ちした側近の言葉に、闇の女帝は秀に告げた。


「天宮秀、そこまでにしてお前は家に帰れ」

「どうしたんですか?」

「篠塚家に鷹の幹部が襲撃し、紫月が睡眠薬にやられたようだ。すでに妾の部下達が天宮家に姉妹を丁重に送り届けようだが早く帰れ」


 秀は怒りで表情を歪めたが、しかし、彼はそれを抑えながらも闇の女帝に真意を問う。


「どういうことなんですか。何故、彼女達が襲撃されなければならないんです!」

「秀様、今回の件には天空記が絡んでる可能性があります。まだ私も調べきれておりません。情報が入り次第すぐにお伝えいたしますからお待ち下さい」


 桜姫は深々と頭を下げる。それだけ厄介な事態になっており、まだ篠塚家が襲撃された理由も定かではなかったのだ。ただ、天空記が絡んでいるからこそ彼女達が狙われたのではないかと……


 桜姫にそう宥められては言い返せず、秀は一つ溜息をついて尋ねた。


「……鷹族なんて民族でもいたんですか、闇の女帝」

「確かにいたな。だが、まだこちらも情報が揃っていない。襲撃犯については柳から詳しく話を聞け」

「ええ、そうします。それとさっき言ってたホテルのチケット、あれは僕達全員分のを手配しといてください。やられっぱなしは僕の性に合いませんから」


 秀は上着を拾い上げると、すぐにその場から駆け出していった。どうやら気付いていたらしい。


「全く、本当に頭の回転が速い奴だ」

「彩帆殿、私もこれでも抑えていますよ。主の病院にも鷹の手が伸びているみたいですし」

「お前も情報が早いな。だが、明日まで全て調べられるか?」

「もちろんです。ですが、その前に皆様が乗り込むことになりそうですけど……」


 あの一行がやられっぱなしな訳がない。それをよく知る二人はクスリと笑うのだった……




さて、たくさんの伏線が張られた今回。

何やら意味深な会話が闇の女帝と桜姫の間で繰り広げられていましたが……

一体どんなことになってしまうのかはまた次回です(笑)


そして、天空記の解説を少々。

天空記とは天界最古の歴史書という設定がしてあります。

このお話に出てくるキャラクター達はそのつながりを持っているという設定です。

詳しくは天空記の本編でご覧下さい。


だけど篠塚家の面々が天宮家にお泊り。

しかもバレンタインデーの日に……

柳ちゃんの身が別の意味で危ないんじゃないか!?




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