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第五十二話:空中戦

 ホテルの外で空中戦を繰り広げていた啓吾と鳥の女神は、互いに傷一つ負わないままの攻防戦を繰り広げていた。


 しかし、攻撃の手数は鳥の女神の方が多く、啓吾は自分の意識が集中しきれない攻撃に関しては重力を使わず宙を蹴って避けている状態が続いていたのである。


「おわっ!!」


 壁に鳥の羽が突き刺さり啓吾は危ないと思いながらもその目は細剣を追っていた。


 おそらく、重力だけではなく力のある者達の攻撃を簡単に裂いてしまう剣だということは分かる。それを何とかして弾かなければこちらの力を消耗するだけだ。


 ただし、彼女の間合いに入ることは難しい上に間合いの外からの攻撃も剣の達人ということも手伝って簡単に防がれてしまうとなれば、どうやって攻略するかを考えなくてはならない。


「さて、直接重力を斬られるとなれば隙を作るしかないか」


 あまりやりたくはないが、と啓吾は傍にあった窓ガラスを砕くと、その破片がフワリと彼の周りを取り巻いた。


 一撃でダメならば手数で勝負するしか方法はなかったのである。


「……手数を増やして隙を突くということですか」

「そうなるな。それに持久戦に持ち込まれてやばいのはそっちだろう?」

「いえ、そちらの方が持つ力量は少ないはず。現代の意識を保たれて覚醒しているという事は少なくとも力に際限を付けているということですから」

「まっ、際限は付けてるけどな」


 啓吾はひょいと肩を竦めてみせた。際限を付けずに戦って意識を啓星に乗っ取られたら、手っ取り早く終わらせるために力を全解放してホテルそのものを潰すに違いないと容易く予測出来るからだ。


 もちろん、柳達を危険な目に遭わせるようなことはしないだろうが、関係ない人間に優しくしてやれるような精神を持ち合わせてないのも啓星である。


「啓星ならもう少し冷徹な戦いをしていたでしょうが……」

「これでも丸くなったんだよ。それに折角のバレンタインデーくらい女を不幸にする事はやめるべきだと思ってな」

「戯れ事を!」


 細剣を横に振り払い、再度光り輝く鳥の羽が啓吾に襲い掛かったが、啓吾は自分を取り巻いていたガラスの破片でそれを相殺してさらにフロアーに散らばっていたガラスの破片を鳥の女神に放った!


「その程度の攻撃など!」

「喰らわせる!」


 鳥の女神の斬撃にガラスの破片が叩き落とされる前、啓吾の目が青く輝けばガラスの破片は一旦ピタリと止まって鳥の女神から離れる。


 しかし、それは鳥の女神の周りを綺麗な軌道を描いて避け、背後に固まると再度鋭く彼女に襲い掛かった!


「くっ……!」


 くるりと一回転して鳥の羽を舞わせ何とかガラスの破片は叩き落としたが、その直後にすぐ重力が身体に掛かり鳥の女神はそれを細剣で切り裂くことになる。


 どうやら自分に休む暇すら与えずに攻撃を仕掛けて隙を突くつもりなのだろうが、それでもまだ啓吾の攻撃スピードは追いついていない。


「重力は無意味だと分からないのですか?」

「その剣にはだろう? だが!」


 鳥の女神の下からガラスの破片が舞い上がってきて、彼女はそれを防ぎ切れず衣や肌にいくつかの切り傷を負う。


 しかし、表情を歪めたもののその手から細剣を離すことはなくガラスの破片そのものが持つ重力を無効化させて攻撃をおさめた。


「くっ!!」


 額を僅かに掠めたガラス片が彼女を傷付け赤い血を流させる。だが、それを気にせず鳥の女神は啓吾の更なる攻撃を防ぐために神経を研ぎ澄ませる。


「次は何をなさるおつもりですか?」

「今のでダメだったから懐に飛び込む」

「なっ……!!」


 あっさりと手の内を明かした啓吾の言葉に鳥の女神は言葉を失った。いくら何でも無謀もいいところだと敵ながらに思うのと同時に、自分が嘗められているのではないかという怒りさえ覚える。


 それに鳥の女神が手にしている細剣は重力を無効化するもの。この空中で斬られれば啓吾は地上まで真っ逆さまだ。


「俺にとって厄介なのは女神様の力ではなくその細剣のみだ。それにそろそろ気絶しといてもらわねぇと俺のスタミナは桜姫よりも少ないからな、武帝とまともにやり合った時に困る」


 全ては後の戦いのため、そうきっぱり言い切られた鳥の女神は怒りでさらに力を上げた!


「ふざけるな! 啓星っ!!」

「ちっ!!」


 四方八方から鋭い鳥の羽が啓吾に襲い掛かってきて、今度はガラス片でそれを相殺するだけではなく弾き返した!


 しかし、ある程度それを読んでいたのか鳥の女神はさらに上空へと飛び上がると、啓吾の上からまるで雨のように鳥の羽を降らせる!


「落ちるがいい!!」

「……落ちるのはそっちだ」

「なっ!!」


 影が射したかと思って鳥の女神が上空を見上げれば、巨大なアンテナが降ってきて彼女はそれを紙一重でよける。


 だが、その一瞬の間に啓吾は鳥の女神の背後を取ると剣を持っていた手を捻り上げて落とさせ、首筋に一撃お見舞いした。


「うっ……!」

「悪いな、天宮兄弟ほどじゃねぇけど俺も武道の一つくらいはかじってんだよ」

「啓……星……!」


 さらに力を解放されては面倒だと、啓吾は鳥の女神に重力を掛けて意識を完全に失わせる。


 そして、とりあえずは鳥の女神をどこか安全な場所に移すべきだと思ったところへ、秀が割れた窓ガラスのある階から啓吾を呼んだ。


「啓吾さん!」

「ん? 次男坊か」


 丁度良かったと啓吾はふわりと重力を緩めながら秀のいる階まで下りて行くと、鳥の女神を秀に渡しながら尋ねた。


「お前の方は片付いたのか?」

「片付いたと言うより反旗を翻してもらったんですよ。今、兄さん達の戦いを止めるために説得しに行ってもらってます」

「ああ、多分そりゃ無理だろうな」

「えっ?」


 鳥の女神がこちらの手にあるというのに、とでも言いたそうな顔を秀は啓吾に向けるが、彼はこの戦いが終わらない理由をきちんと捉えていた。


「鳥の女神は確かにこっちの手中に収まったが鳳凰は武帝の呪いを受けてんだろ? だったら説得したところで戦いが収まるはずがない」


 確かにその通りで説得程度で止まる戦いだったのなら、既に龍と鳳凰の戦いは終わって辺りは静まっていてもいいのだろう。しかし、感じるのは二人が未だにぶつかり続けている気配だ。


 そして、その二人の戦いを止めるためにも啓吾はやらなくてはならないことがある。


「次男坊、お前達は先に船に戻ってろ。ここから先は俺も力を全解放するしかなくなりそうだからな」

「全解放って……!」


 啓吾の視線の先にその答えはあった。上空に浮かんでいる男こそが全ての元凶……


「……やっと黒幕が出てきやがったか、武帝!」


 ついに啓吾の元に武帝は現れたのである……




お待たせしました☆

すっかり放置プレーだったこちらのお話。

でも書けて良かったなぁと。


さて、啓吾兄さんと鳥の女神の空中戦。

何とか啓吾兄さんが勝利してくれました。

ただし、休む間もなくすぐに武帝とのバトルに突入しそうな感じです。

だけどちゃんと桜姫も来てくれますから二人で頑張ってよ!


次回は龍と鳳凰の戦いも書けるといいかなぁと。

にしても……、本当にバレンタインデーなんだろうかこの話……




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