表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/62

第四十七話:太陽と火

 目の前に現れた全長三メートル以上ありそうな鷹の化け物は沙南達を見下ろした。その真っ赤な目には欲望はもちろん、二百代前からの怨みも込められている。それを受けながらも森達の前に沙南と柳は庇うように立った。


 なんせ、二人の後ろには武帝にボロボロにされて意識のない桜姫と立つことさえ出来ない闇の女帝もいるのだから。


「森さん、宮岡さん、ここは私達が食い止めるから早く龍さん達に二人を診てもらって!」

「だが!」

「大丈夫です。私には火の力がありますから戦えます!」


 確かに沙南と柳の力ならば目の前の化け物を食い止められるだろうが、天宮家の面々と違って攻撃を受ければ傷ついてしまうことは自分達と一緒だ。しかし、この窮地を乗り切れる手札が今は二人の力だけしかない。


「いいから行って! 患者優先にしないとそれこそ龍さん達に嫌われちゃうんだから!!」


 折角のバレンタインデーにそっちの方が御免だと言わんばかりに、沙南は途中ここまで来るときに伸びていたSPから拝借した銃を鷹族の主に向けながら叫ぶ。

 いつもなら銃をぶっ放してる方がよっぽど龍を青くするのだが、今はそれを突っ込んでる場合ではない。


「沙南姫、覚醒もせずに戦うつもりか?」

「当たり前! 折角のバレンタインデーなのに私が覚醒して恋人達の一夜を消し去りたくはないもの! それにあなたの目的は沙南姫を手中におさめることなら現代の私としても会わせたくないわ!」


 沙南の力は太陽。彼女が覚醒すれば恋人達の甘い一夜は朝へと変わってしまう。

 それに龍達と違って彼女は意識を現代の折原沙南として留めておくことは出来ず、最悪、太陽の力を暴走させてしまうリスクがあるのだ。それを唯一止められる龍がいないまま覚醒するわけにはいかない。


 ただし、それでも彼女は引くつもりはなかった。その強い意志を宿した目に鷹族の主はくつりと喉を鳴らす。やはりその意志の強さは変わらないと改めて思う。


「だが、お前が沙南姫の生まれ変わりだということに変わりはない。私のものとなってもらう!!」

「お断りよ!」


 そう告げて沙南は発砲するが、やはり鷹族ということだけあって銃弾は全く効いていない。それに鷹族の主はニヤリと笑みを浮かて沙南を気絶させようと腕を振り下ろすが、そうはさせまいと柳の放つ火球が側面に直撃した!


「くっ……! 柳泉!!」

「まだよ!!」

「くうっ……!」


 柳はさらに火炎放射を放って鷹族の主を後ろに引かせる!


「誰にも指一本触れさせはしない!」

「このっ……! ぐあっ……!」


 今度は眩しい太陽光が鷹族の主に襲い掛かり、そのあとさらに柳がいくつもの火球を撃ち込んだ!


「覚醒していないからって太陽の力が扱えない訳じゃないのよ! 目潰しぐらいは出来るんだから!」


 ただし、それ以上の攻撃技となればさすがにまだ使えはじめて半年というところではうまくコントロール出来ないのが現状だ。それだけ太陽の力というものがかなり巨大だということは沙南自身が理解していた。


「森さん、宮岡さん! ここは乗り切るから早く行って!」


 絶対持ちこたえてみせるからと、まるで姫君の風格を醸し出している沙南の視線に貫かれると、意を決したように二人はその場をあとにすることにした。


「すぐ戻るから待っててくれ!」


 そう言い残して森は闇の女帝を、宮岡は桜姫を抱えて部屋から出て階段を駆け降りる! ただし、闇の女帝は二人だけを残していくことに不満をぶつけた。


「森! 覚醒していない二人だけを残して」

「だから一分だけ持ちこたえてもらうんだ! 立ちも出来ないくせにあそこに残ったところで何が出来る!」

「くっ……!」


 森の言ってることは正しい。本来、闇の女帝が万全な状態ならあの程度ぐらい軽く始末出来たのだが、それすら出来ないほど力を消耗しているのだ。残ったところで足手まといになる。


「良、近くて安全な部屋はあるか!?」

「唯一無事なのは情報室のみだろうな。そこならこの宿泊棟のシステムぐらい掌握してやるからついて来い」

「分かった!」


 二人はさらにスピードを上げて情報室を目指すのだった。



 一方、龍と鳳凰の戦闘の気配を感じて宿泊棟の最上階へ向かうのに迂回ルートをとっていた高校生組と啓吾だったが、ふと、啓吾は脳裏に聞こえてきた声に足を止めた。


「啓吾さん?」

「兄さん、どうしたんです?」


 突然止まった啓吾に翔と紫月は尋ねると、啓吾は何やら脳内で誰かと話すのに集中しており目を閉じてその言葉に頷いている。彼とそこまで意志が疎通出来るものといえば、ただ二人だけ……


 そして話が終わったのか、少し青い光を帯びた目を開けて啓吾は二人に告げた。


「……三男坊、紫月、お前達は桜姫達と合流しろ」

「えっ?」


 桜姫の位置はと、紫月は発信機の位置を確かめればそこには四人が固まっている状態だった。


「啓吾さん、森兄ちゃん達もいるみたいだからあんまり問題ないんじゃないか?」

「ああ、だけど柳と沙南お嬢さんだけ残して離れたりはしないだろ。俺は最上階に行くからお前達は桜姫達のとこに行け」


 つまりそうしなければならない状況となっているというなら、考えられることはただ一つだけ。


「ってことは桜姫姉ちゃんは怪我してんじゃねぇのか!? だったら啓吾さんが桜姫姉ちゃんの所に行った方が……!」

「その桜姫が柳達のとこに行けって語りかけて来てんだ。だったらそうするのがベストだろ」


 面倒だからこれ以上説明させんな、と啓吾はそれ以上の質問は却下することにした。


 もちろん、医者としてはすぐに桜姫達の元へ行くべきなのだろうが、これ以上患者を増やさないことも、ましてや龍が一番守りたいものをむざむざと敵にやられるわけにもいかないのだ。


 それに彼女から武帝の存在を聞かされたとなれば、沙南と柳が狙われないとも限らない。いや、寧ろ二百代前のことを考えれば沙南を狙って来る可能性は充分過ぎるほどある。なんせ、天空王に怨みがあったことは確かで……


「とにかく、まだ残党と大物が残ってんのは確かだから、桜姫達と合流したあとは末っ子組達とも合流しろ。分かったな?」

「……分かった」

「はい、兄さんも無茶はしないように」

「極力な」


 こうして高校生組と啓吾も二手に分かれるのだった。武帝の狙いを誰も知らないまま、孤島のホテルはしばらくの間、まるで彼の箱庭のまま時が過ぎていく……




え〜、大変お待たせした今回です。

しかもちょっと短いかもねぇ……というつっこみも……

はい、ゲームばっかしてるからこんなことになるんですよね(笑)


さて、今回は沙南ちゃんと柳ちゃんが戦うという、天空記ではあんまりない話に。

なんせ通常なら戦ってるだろう桜姫と闇の女帝がリタイア状態ですからね。


でも、女子大生二人がどこまで頑張ってくれるのかは緒俐としても楽しみです☆

だけど、啓吾兄さんも急がないとこのあと大変なことになりますからね!

何だかんだ言いつつ、忙しくなるのが啓吾兄さんですから(笑)


では、次回もお楽しみに☆




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ