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第四十四話:大将は誰?

 石の大地で天の旗を掲げた天空軍は本陣を構え、これから襲撃して来るであろう鳥族の連合軍に備えていた。

 ただし、いつも士気盛んな天空軍ではあるが、今回彼等は少々困惑している事がある。それは天空軍のシスコンと腹黒のことだ。


 そして、その元凶である人物達に意見出来る少年はいるにはいるのだが、彼も会議中の元凶達に意見出来るほど勇ましくはない。

 いや、それは勇気という言葉では言い表してはいけない、まさに特攻、名誉の戦死とされる偉業なのかもしれないが……


「珍しいですね、啓星が出てくるなんて」

「ああ、戦自体は面倒で仕方ないんだが、わざわざこっちの犠牲をそう出す訳にもいかないだろう?」

「おや、今回は私が出る時点で負け戦になど致しませんが?」

「作戦はな。だが、一応鳥の化け物が出てくるなら俺が遊んでやった方がいいだろ?」


 そう、啓星が出るといってきたのは後にさらなる戦が起こると予測していたから。しかし、彼の悪巧みを考えている顔に秀が気付かないわけがなかった。


「結局、ただのストレス発散のために暴れたいだけじゃないですか」

「お前だって人のこと言えないだろ」

「当たり前です。私の柳泉をどうかしようなんて変態がいる時点で消してやりたい気分ですから」

「誰がお前のだ! 潰すぞ!」


 柳泉のことになるといつも言い合いが始まるため、また出陣の時間が遅れていく。それでもいつもきちんと訓練を積んでいるため、例え戦が始まったとしても全く問題ないのが天空軍の強さである。


 だが、作戦などほぼ関係なく戦場を暴れ回る少年にも一つだけ確認しておきたいことはある。


「……なぁ、紫月」

「はい」

「今回の戦の大将って秀兄者と啓星、どっちになるんだ?」


 翔の質問はもっともで紫月も多少考え込んだが、兄の性格をよく知っている性かとりあえずの解答を返した。


「南天空太子様でよろしいとは思いますが……」

「う〜ん、だけどさ、秀兄者は大将って言うより参謀にまわる気だしな」

「でも、兄上はあくまでも従者ですから大将を名乗るのもどうかと」

「かといって立てないわけにはいかないんじゃないか? 天空軍がどっちだって迷ってるし」

「天空王様はいらっしゃいませんしね……」


 その時、偵察から戻ってきた桜姫が青の装束の袖をフワリと揺らしてその場に姿を現した。


 彼女の登場に兵士達は膝を折りつつも心の中で大歓声をあげながら万歳三唱し、彼女も未だ大将が決まってないのだろうという状況を予測していたのか、秀達のいるテントの中へと入った。


「南天空太子様、啓星様」

「桜姫」


 桜姫の登場に一旦二人は言い争いを止める。一応、二人もここは戦場だということは頭にあったらしく、本日は火と重力がぶつかって周りに危害を及ぼすようなことまでには至っていない。


 そして彼女は二人の中に入って兵達が聞きたがっていたことを提案した。


「兵達がどちらが大将なのか困惑してますので御決めになって下さいませ」

「啓星、あなたで良いでしょう? 私は参謀にまわりたいですから」

「面倒なこと押し付けるな。俺はあくまでも従者なんだから前線に出てやる」

「いえ、やってください!」

「太子なんだからお前がやれ! 俺は暴れたいんだよ!」


 どうやら今回は二人とも自由に動きたいらしい。気持ちは分からないこともないが、ここまで私情で戦に出る大将というのは味方もだが敵も困惑するだろう。

 翔が大将の時は慣れているのか、全く問題ないと思われているのだが……


 その時、外が少し騒がしくなったかと思えばテントの簾が開かれて呆れた声が入って来た。


「何をやってる」

「兄上!」

「龍!」

「主!」


 天空王の登場に三人は驚き、すぐにテントの外に出て彼の前に膝を折る。大将が出て来てくれれば自分達は好き勝手に出来るというものだ。


 ただ、今回のような戦に何故龍が出て来たのかという疑問は残る。


「龍、天宮にいなくて良かったのか?」

「純達や将軍達がいるなら問題ない。それよりお前達の方がよっぽど気掛かりだから来たんだ」


 じゃなければ、ゆっくり読書でもしていられたものだと言いた気な顔に兵士達は心の底から気苦労を背負い込んでいる大将を憐れんだ。


 そして、その大将の発する空気が変わると、兵士達の気も一気に引き締まった。


「全軍、今度の戦で怪我はもちろん無駄死には絶対するな。これからさらに激しい戦が予測される。敵を倒す前に各々が身を守れ、良いな?」

「はっ!」


 勇ましい声に龍はコクリと頷き、気苦労要素その一の弟にもきちんと注意を促しておく。


「翔、あまり暴れすぎるなよ」

「分かってるって!」


 ニッと笑い返してくれるが、どこまでが彼の暴れ過ぎの許容範囲に入るのかは龍な頭を悩ませるところがある。


 しかし、今回はその四までが非常に嫌な予感しかしなくてならなかったのだ。龍は眉を顰めながらもおそらく聞く気はない命令を下しておく。


「それと秀、啓星、桜姫、相手を壊滅させるような無茶苦茶な戦をすることはやめろよ」


 それに対して三人は同じような意味合いを持つ笑みを含んだ表情で返してくれた。


「やだなぁ、そこまでやるわけないじゃないですか」

「さっきいつもの倍の火薬を持った工作部隊がいたけどな」

「龍、その程度気にするなって!」

「相手の国で奇怪な地震が起こったという情報が入ってきたぞ」

「主、ご心配には及びません」

「桜姫、いきなり方向転換した幾部隊が崖から落ちたと報告が入ってきたが?」


 三人は全てお見通しである大将にそれ以上の反論はしなかった。なんせ、それは全て自分達がやったことに違いないのだから……


 龍は深い溜息を吐き出したが、彼が天空軍の大将だということに変わりがない言葉を告げた。


「まぁいい。お前達の気持ちが分からないこともないからな。向こうの大将は鷹族の太子だ。沙南姫達に散々迷惑を掛けているのだから好きにやれ」

「有り難き幸せ!!!」

「鷹族の太子にのみだからな!」


 三人の声がいつもの倍弾んでいる。大将からの許可が下りたとなれば何をしても構わないということ。おそらく、鷹族の太子のみなんて言葉はスルーだ。


 意気揚々としている三人に龍はさらに深い溜息を吐き出して、三人の被害に巻き込まれないようにと翔と紫月に忠告しておくことにした。


「翔、紫月」

「ん?」

「はい」

「お前達は前方だけ蹴散らしたらすぐに戻ってこい。寧ろ天宮に戻っても構わん」


 その意見に翔は目を丸くした。彼は突撃隊長だ、敵の大将への活路を切り開く役目が仕事である。


「へっ? 進まなくて良いのか?」

「ああ、むしろ天宮で待機していた方が良かったのかもしれないな……」


 今日何度目になるのかという溜息を龍はまた吐き出すのだった。




遅くなりましてすみません!!

しかもあまり進んでないという……


今回は戦の大将の件で揉めたという……

これが天空軍ならではの問題です(笑)

戦に勝つことは問題ないみたいですが、どうも私情が絡んで来るみたいでして……


だけど、龍が出て来てくれてよかったなぁと。

うん、出てこなかったら本当大変なことになるんだろうな。

戦前に例のS三人は既にいろいろねぇ……


次回は一体どんな戦になるのかお楽しみに(笑)




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