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第四十話:一撃

 鷹族の主との試合前、伸脚していた龍のもとに赤い胴着を纏った鳳凰が近付いてきた。


「少し心が乱れておいでですね、天空王殿」

「これは鳳凰殿」


 龍が礼を取ると鳳凰も頭を下げる。本来なら自分になど下げる必要など全くないというのに、この礼儀を重んじる王は自分を一人の近衛兵としてではなく、一武道家として見てくれているようである。


 まぁ、彼の従者やら天空族の将軍達を見ていれば、彼を一人の王としてではなく、親しき友や知己といった感じで接してくれた方が心が休まってはいるようだけれど。


 それよりもと鳳凰は光帝から面白がって聞いてくるようにと言われた命を、出来るだけ龍に失礼にならないよう配慮して尋ねた。


「沙南姫様のことをお聞きになった性だと見受けられますが」

「ああ、その通り」


 案外、龍にしてはあっさり肯定してくれたことに鳳凰は目を丸くする。いつもの彼なら少しは動揺するというのに。


「鷹族の主がハーレムを好んでいることは知っているが、沙南姫様にまで危害が及んでると聞いては冷静に戦えるかどうか」


 あくまでも手合わせという名目だからと龍は苦笑する。あれほどのドS達が集まる天空族の主とはとても思えないな、と鳳凰は改めて思った。


 これは少しこちらから背中を押すべきかと考えた鳳凰は、光帝の名の下に自分の意見も添えておくことにした。


「天空王殿、光帝も貴方と同じ心境です。遠慮なく叩きのめして下さい」

「しかし……」

「願わくば、私との手合わせの時にはいつものように」


 フッと口元に鳳凰は笑みを浮かべれば、そうだなと龍は思う。毎回、弟達と同じように鳳凰と手合わせ出来ることは彼の楽しみの一つだ。

 一武道家として、鳳凰と戦うことに集中出来ないのも失礼だというもの。


「ああ、分かった」


 迷いは完全に吹っ切れ、龍はいつものように相手を倒すことに決めたのだった。



 それからまもなくして、遂に龍と鷹族の主との試合の刻限となった。啓星の提案により、沙南姫は武道場には来ないほうがいいだろうということで、彼女はまだ柳泉と紗枝とお茶を楽しんでおくことにした。


 そして、龍と鷹族の主の試合に多くのものが注目する中、龍と対峙した途端に真っ赤な目をして鷹族の主は突っ掛かった。


「貴様が天空王か、何とも不細工な」

「引っ込みなさい! 鷹族の馬鹿!」

「あんたの方が最悪よ!」

「鏡ぐらい見てみなさいよ!」


 龍が反論する前に女達が鷹族の主に野次を飛ばす。

 ただ、不細工と言われた龍は全く気にしていないのだが、主を馬鹿にされたことに対して桜姫は怒りを通り越して深い溜息を吐き出した。


「はぁ……」

「どうした桜姫」

「いえ、あの馬鹿は顔も人生も破滅の一途を辿ってるというのに……」

「お前、本当辛口だよな……」

「まだ付け足せますが」

「いや、やめとけ」


 女達の百人掛かりで浴びせる罵声より桜姫の辛口の方が間違いなく性質は悪いだろう。下手をすれば心の一つや二つは閉ざしてしまうほどの暴言まで出てくるに違いない。


 そんな二人の従者の会話など当然聞こえてはおらず、鷹族の主は龍に勝敗によっての条件を突き付けた。


「天空王、この試合でお前が叩きのめされたら二度と太陽宮には来るな! いや、沙南姫と会うな! それに自然界の女神にもだ!」

「では、そちらが負けたら太陽宮にも参上せず沙南姫にも紗枝殿にも近付かないんだな?」


 すぐに切り返した龍に天空族の一行はナイスだと思うが、それを本当に守るのかといえばきっと守らないのだろう。


 しかし、彼はあくまでも龍に負けることなど全く考えてすらいないようで、まず有り得ないことを口にするのだった。


「それは無理な話だ。沙南姫は私の妻となるのだからな。そして、紗枝殿はぐしっしっ……!」


 それに啓星がピクリと反応する。一体、紗枝に何をさせる気だと思うが、聞きたくもないというのも事実だ。

 そんな啓星は珍しいため、桜姫はクスリと小さな笑みを零した。


「桜姫、龍にやらせる前に俺達がしばきたくないか?」

「同感ですが、主がご自分で片付けたい御様子ですから堪えて下さい」


 それは龍のオーラがなんだか歪んで来たことだけで分かる。下手をすれば本気で空でも落として目の前の馬鹿を抹消してしまうんじゃないかという勢いだ。


 ただ、それはそれで大歓迎だと、高見の見物を決め込んでいる光帝を見上げれば非常に分かるのだが……


「それと南天空太子!!」

「何です」


 突然自分の名を呼ばれた秀は、それはたいそう嫌そうな表情を浮かべた。傍にいた啓星と桜姫は何となく彼が言おうとしていることを予測したが、今のところは黙っている。


 そして、その予測どおりの言葉を高らかに鷹族の主は吐き出したのだ。


「お前にも柳泉という従者がいるようだな!」

「ええ、私の柳泉に何か?」


 私の、という言葉にシスコンは青筋を立てるが、今は暴れないようにと桜姫に制されて無理矢理啓星は自分を押さえ付ける。


 ただ、抑え切れてない感情が重力を放出させ、至るところの壁にヒビを入れてしまうのはどうにもならないようだが……


 しかし、鷹族の馬鹿主は死んでも言ってはならないことをそれはおおっぴらに叫んだ。


「貴様も私に負けたら柳泉を差し出せ! 愛妾としてたっぷりと可愛がってやるわ!!」


 それにブチ切れた音を聞いた者は多数。特に秀と啓星の周りからは一斉に人が引いてくれたぐらいだ。

 弟妹や将軍達は、言っちまったよ……、と恐怖や呆れといった表情を浮かべるので精一杯だ。


「……ほう、今日は鷹の丸焼きを私自ら調理しましょうかね」

「秀、骨は俺が全て粉砕してやるから残しとけ」

「秀太子、啓星様、私も頭部などの切り刻みたい部分がございますので、是非お手伝いさせてください」


 三人の周りにいた腕の立つ武道家ですらその殺気に冷汗を流した。龍は太陽宮だけは破壊しないようにと願う気持ちでいっぱいになっているが……


「桜姫! 貴様も天空王などではなく私の従者として」

「黙りなさい! 私の主は天空王様のみ。あなたのような愚か者に仕えることは末代までの恥にしかなりません」


 キッと睨んだ上にそこまで言うかと思える切り返し。ただ、龍も沙南姫達だけでなく桜姫にまで手を出すというのなら主としてすべきことは定まった。


「鷹族の太子殿、そちらが負ければさっきの条件に天空族に関わる女性陣に近寄らないと誓ってもらう。人の従者にも手を出されては迷惑だ」

「ならばお前が負ければ全て差し出すんだな?」

「否! 天空族の名にかけて負けなどしない! 誰もお前の悪趣味なハーレムになどに渡すものか!」


 そこで沙南姫を誰にも渡さないと言えばいいのに……、と天空族の一行は思うわけだが、鷹族の主が怒りでその姿を鷹の化け物へと変えるには充分過ぎる言葉だった。


 そして、大きく翼を広げて彼は龍に鋭い爪を立てて突っ込んでいく!


「天空王〜〜〜!!」

「はああっ!!」


 まさに一撃! 道場に大穴を開けるほどの威力で鷹族の主は沈められ、それが天空記に記される内容になるのだった……




久し振りに一週間開かなかったような……

はい、本日更新出来て良かったなぁ。

二百代前はコントが多くて書きやすいのなんの(笑)


さて、今回は鷹族の馬鹿主が一撃でぶっ飛ばされたという、天空記の内容に沿ったお話でした。

まぁ、当然の結果といえば結果ですが……


そして、次回はいよいよ武帝も絡んで来るかなぁと。

鷹族の馬鹿主との接点も解明されますよ☆

楽しみにしていてくださいね。

コントも入れたいなぁ……




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