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第三十六話:覇気

 一撃が生み出す衝撃波はぶつかる度に大きくなっていく。会場で人が気絶しているだけ余計な騒ぎにならなくて良かったと紫月は思うが、出来るだけ早目に決着をつけなければいろいろな意味で厄介なことになる。


 なんせ、少しずつではあるが、翔の力が膨れ上がってきているのと同時に、自分の意識も引っ張られていく感じもしているのだから……


「おらああっ!!」

「ぐっ……!!」


 一撃が確実に重たくなってきている。目の色が時々、金色を覗かせているということは西天空太子としての力が若干加わっている性なのだろう。


 ただ、それを本人は気付かずに自分に攻撃を仕掛けていることは分かる。それだけ紫月が大切だということは二百代前から変わっていないのは確かで……


「大切な者のために力は上がるか……」

「それが出来ずに守れるものなんてあるもんか!」


 翔は蜻蛉の側頭部を狙って強烈な蹴りを繰り出すが、蜻蛉はその足首を掴んで翔を壁まで投げ飛ばす。


「くっ……! おわっ!!」


 壁まで投げ飛ばされた直後に蜻蛉はすぐ傍に来ていて壁に穴が開くほど強烈な一撃を叩き込むが、翔はそれを体勢を低くしてかわし、さらに下段回し蹴りを繰り出せば蜻蛉は上空に高く飛び上がった。


「鷹に変身しなくても飛べるのかよ!」

「風に乗ればいいだけのことだ」

「じゃあ、無風なら飛べないんだな」


 ピタリと会場内の風が止めば蜻蛉は落ちては来たが、翔はすぐに攻撃には移らなかった。落ちて来る直後に攻撃をかわす方法も逆にこちらを突いて来ることも蜻蛉なら可能だ。


 翔にしては油断してないな……、と紫月は思う。やはり、西天空太子だった頃の戦いの直感が影響してるのだろうか。二百代前も油断癖はあったのだし……


「無風の状態で勝ち目はあるのか?」

「あるさ。もともと頑丈で化け物ぐらい一撃で倒せる力はあるんだからよ。それにお前だって急所に入れば崩れるだろう?」


 翔の言うことはもっとも。今までの攻撃は全て塞がれてきたからこそ蜻蛉は倒れることはなかった。つまり、急所に一撃叩き込めば翔に勝機はあるということ。


 ただし、無風の状態といえども蜻蛉のスピードが速いことも翔のスピードが落ちることにも変わりない。それを補う方法は……


「紫月」

「はい」

「腰抜かさずに立ってられるか?」


 その一言で翔が何をしようとしているのか紫月は理解した。しかし、それが本当に出来て相手に通用するのかはかなりの賭けにはなるのだろうけど……


「少し離れてますから思う存分やってください。ただ、やるからには負けないで下さい」

「オウッ!」


 翔に負けるななんて言葉を掛けたのはきっと始めてだ。いつも余裕で背中合わせに戦えないことの方が珍しく、それに一対一の闘いでも信じていられた。


 だが、今回の敵はそれだけ厄介で信じることだけでは翔が負けてしまいそうな気がして……


 それでも、翔のプライドを傷つけたくないと思う自分が手出し無用だと告げて来るのだ。二百代前の自分だけじゃなく、篠塚紫月として。


「……気は抜けないようだな」


 蜻蛉はスッと構えた。翔が何をやるのか検討がついたからだろう、今まで以上に隙がない。それから紫月もふわりと風を身に纏って翔から離れた。そして、また風の流れはピタリと止まる。


「この戦い方は嫌いなんだけど、紫月を取られんのは絶対嫌だから覚悟しろ」


 翔は傍にあったテーブルをひょっと片手で持ち上げる。風が使えない以上、隙を作る方法は一手でも多い方がこちらの勝機に繋がるのだ。翔は一息つくと、その目を黄金に輝かせた!


「……!! 西天空太子!!」

「おらぁああ!!」


 剛速球でテーブルを投げ飛ばした後、さらにもう一つ傍にあったテーブルを蹴り飛ばして蜻蛉への直撃を狙うが、蜻蛉はそれを瞬時に避けて彼も傍のテーブルを蹴り飛ばした!


「喰らうかよ!!」


 翔は飛んできたテーブルを簡単に粉砕した後、同じように突っ込んできた蜻蛉にストレートを繰り出す!


「喰らえ!!」

「甘い!!」


 翔のストレートを横に避けてかわし、前のめりになったにも関わらずそのまま後ろ回し蹴りを放ってきた翔の攻撃も蜻蛉は止める。


 そして、翔の足首を掴んだ蜻蛉はそのまま骨の一本ぐらい折って戦闘不能にさせようとしたが、突然、空気は変わる! いや、翔が変えたのだ!


「くっ……!」


 変わった空気の正体は覇気。まるで龍を思わせるようなあの圧倒的な威圧感が蜻蛉に叩き付けられ、その瞬時に翔は緩んだ手から足を引き離して蜻蛉の頬を殴り付けた!


「ぐっ……!!」

「おらぁあああ!!」


 さらにもう一撃翔は腹部に叩き込むが、その手応えに目を見開く。入った拳は浅い!!


「翔君!!」

「くっ……!!」


 まずいと思って紫月は飛び出そうとしたが、後ろから手首を掴まれてそれを阻止される。そして、目をきつく閉じた翔の身体は蜻蛉の攻撃を受ける直前に後方へと引き寄せられた。


「全く……、情けねぇな三男坊」

「でも、もった方じゃないですか?」


 上から降ってきた声は間違いなくいつも聞いてるもの。翔は目を開けて顔を上げるとやはりあの二人だ。


「あっ……」


 ニヤリと笑った啓吾とだらし無いとでも言いたげな秀がギリギリのところで間に合ったらしい。通常ならもっと早く来れたはずなのでは……、と冷静なものがいればそうつっこんでくれただろうが……


「南天空太子殿、啓星殿……」


 どうやら秀と啓吾に対しても敬意を払うらしい。武道の腕の差なのかそれとも二人の風格がそうさせているのかは分からないが、翔よりは明らかに区別されているのだろう。


 すると、秀はニッコリ笑いながら翔の前に進み出た。ここから先は兄に譲れということなのだろう。


「うちの出来の悪い弟が相手をしたみたいですが、やはりあなたの方が上でしたか」


 そうはっきり言うなよ……、と翔は言いたげだが、実際に助けてもらっているので口出し出来ない。


「で、どっちと戦いたいんだ? 蜻蛉さんよ」


 啓吾まで出て来ると翔はさらに沈み込んだ。風のタイプの翔と相性が悪い相手ではあるが、それを抜きにしてもこの二人が蜻蛉に負けるようなことは考えられない。

 なんせ、火と重力。とても蜻蛉が敵う相手ではないことぐらい本人も理解しているだろう。


「どちらとも倒すしかありません」

「いや、あなたが反旗を翻せば戦わなくて済むんですけどね」

「それは拒否します」


 やれやれ、と思いながらとりあえず気絶させておくかと啓吾は力を解放しようとしたが、突然、脳裏に嫌な予感が走る! そして、この感覚の持ち主は……!


「……!! 次男坊、お前がこいつをやれ」

「どうしたんですか?」

「桜姫になんかあった」

「えっ……!?」

「桜姫姉ちゃんに!?」


 そう、事態はまた動き出していたのである……




翔が負けたぁ!!!

そしてやって来た宇宙一最悪な兄達!

うん、やっぱりこの二人はおいしいところはもっていきます。

オカマにモテるほどかっこいいんですから(笑)



でも、翔君にしてはよく頑張ったなと思います。

覚醒ギリギリで戦ってるんですからね。

それに少しずつ龍に近付こうと彼なりに成長しているのであります。



さて、啓吾兄さんが同じ従者同士なのか桜姫のピンチを感じ取ってる模様。

さぁ、次回は一体どうなるの!?




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