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第三十三話:麻薬会場

 それは桜姫が烏帽子を倒した直後だった。突然空間が歪んだと思った瞬間、烏帽子に衝撃波を放つ者が現れたのである!


「武帝……!」


 その名を告げると同時に桜姫は烏帽子の前に入り込んだ!


「くっ……!!」

「桜姫殿……!!」


 花びらの盾で武帝の攻撃から烏帽子を守り、桜姫はさらに力を解放して武帝に攻撃を仕掛ければ、彼は一旦距離をとった。それと同時に桜姫は烏帽子を抱えて後方に飛ぶ。


「何故……!!」

「事情を知った以上、あなたを死なせることで主がやりきれない思いをなさいます。それに武帝という権力を振りかざして、二百代前に天空族としても毎回迷惑を被ったものです。当然、その報いは受けていただきます」


 ふわりと再び花びらを纏って桜姫は臨戦態勢を整える。烏帽子がやられて増援が来ないということは、鳳凰が龍達の下へ向かっている可能性が高い。さすがの龍も鳳凰と戦って力を消費しないはずがないなら、武帝をここで食い止めておかないわけにはいかない!


 しかし、武帝は既に桜姫の力が天の力の解放も含めてどの程度が理解しているのか、口角を吊り上げて彼女に尋ねた。


「花の女神に劣らぬ桜の姫君よ、一度だけ問う。天空王を裏切り我が元へ下らぬか?」

「戯言を……」

「これでもお前の力は買っておるのだ。天空王が認めた従者であり、啓星よりも高い資質を持っておりさらに女だ。私との子供を!!」


 花びらが鋭く武帝の頬を切り付けた! それにスッと武帝の頬から血が流れるが、彼はそれを全く気にも留めなかった。ただ、桜姫の表情は有り得ないぐらい冷たくなっているが……


「その歪んだ顔と年齢を考えてから述べなさい。森将軍以上に性質の悪い殿方など生きている価値すら認められません」


 ここに一行がいたなら、間違いなく森はギリギリのラインで生かされているのか……、とツッコミが入っただろう。


「そうか……、ならばたっぷり痛ぶったあと薬漬けの人形にしてやる……」


 巨大な覇気が桜姫に叩き付けられ、彼女も完全に力を解放するのだった……



 一方、麻薬パーティーの行われている棟の警備員を翔と紫月はあっさり悶絶させ、さすがに末っ子組に見せられない光景もあるだろうと屋根裏に上がってパーティー会場を見渡せば、それはひどい光景だった。


「うわぁ……、悪趣味だな」

「ああ、森がいたら大喜びで踊り出すような光景だが……」


 麻薬の取引だけではなく、実際に麻薬漬けにした奴隷やら、さらには今から試そうというような輩までいる。


 そのあまりのひどさに医者である龍や紗枝は怒りを覚えるが、怒りのままに暴れることは危険だ。それが分かっているからこそ、紗枝はニッコリ笑って末っ子組に告げる。


「残念だけど、末っ子ちゃん達はちょっと会場内に入るのオススメ出来ないから外で待っててくれる?」

「ダメなの?」

「ええ、小学生には刺激が強すぎるわね。それに万が一薬を打たれたら子供には堪えられないから……」


 紗枝の目には、すでに奴隷と化している純達とあまり変わらない年代の子供を見つけて内心煮えたぎるような怒りを覚えていた。まずはあの飼い主と化している男からシバき倒してやろうと心に決めて……


 そして、紗枝と同じようにキレかけていた龍もあくまでも冷静でいようと心掛けているため沙南に促した。


「沙南ちゃん」

「何?」

「君も純達と待っててくれ」


 太陽の力を解放すれば問題ないが、リスクが高い以上は彼女も会場内で戦闘に参加させるわけにはいかない。

 それが分かるのか、沙南は今回は大人しくする事にした。


「分かったわ」

「純、夢華ちゃん、沙南ちゃんを頼んだよ」

「うん!」

「任せて!」


 心強い返事に龍は二人の頭を撫でてやる。この二人がいればあらかたの襲撃は問題なく片付くだろう。


「翔、紫月ちゃん、俺が会場内に重力である程度気絶させるから残りを一気に頼むよ。それと柳ちゃんは結界を頼む」

「オウ!」

「はい」

「わかりました」


 会場内の手練はおそらく翔と紫月の二人で十分片付く。それに柳の高熱の結界さえあれば龍も力を温存できる。


「あと、紗枝ちゃんと先輩達は俺の援護をお願いします。そろそろ鳳凰が出てこないとおかしいですから」

「了解!」


 そう、出てこないとおかしいのだ。闇の女帝が敵の手中に落ちたことが分かり、おそらく鳳凰が彼女を倒したのだと予測出来る。


 しかし、こちらの女性陣が狙いだというなら桜姫か自分達のもとに出てこない方がおかしい。だが、桜姫は烏帽子と戦っているとなればこちらに出てくるはずだが……


「龍兄貴、また悩んでんのか?」

「ああ、気苦労が堪えないしな」

「全く、心配しなくても鳳凰は絶対出てくるさ。だからさっさとケンカを済まして帰ってチョコレート食おうぜ!」

「そうよ、龍さん。今年こそはあっと言わせるメッセージを考えたんだから!」


 そう告げてくれる翔と沙南の気遣いは有り難い。鳳凰が出て来ないことが何かある気がして深く考え込む傾向にあったから……


「そうだな。まっ、秀と啓吾がもうそろそろ合流してくれるだろうから何とかなるか」

「オカマに捕まってなければ、だけどね」

「紗枝ちゃん……」


 非常に楽しそうに告げてくれるが、捕まってたら洒落にならないのでは……、と龍は本気で思う。特に啓吾はオカマに対してトラウマまで持ってるようだし……


 そんな親友の無事を願いつつ、そろそろ仕掛けるかと龍は翔と紫月に視線を向ければ二人とも準備万端と応えてくれる。


「よし、じゃあ……!!」

「ぐっ……!!」

「くっ……!!」

「体が……!!」


 龍が重力をパーティー会場内にいる者達に掛ければ、一般人は次々と倒れていく。しかし、やはり来ると予測していた者達は臨戦体勢を整えれば、天井から二人の高校生が風を纏って飛び降りてきた。


 そして、テーブルの上に降りた翔は相変わらずなポーズを決めながら高らかに叫ぶ!


「西天空太子の華麗な武技! しかと見よ!」

「ふざけるなぁ!!」

「よっと!!」


 いきなり突っ込んできた男の頭上を踏み台にし、翔は軽く跳躍するとこちらに発砲してくる男達に流れるような動作で拳打と蹴りを繰り出していく。


「おらぁ!!」

「ぐはっ!!」

「うがっ!!」


 男の右頬を殴りつけてぶっ飛ばしたあと、椅子の背もたれの部分をボールのように蹴って発砲して来るものにぶつけ、さらに風を纏ってふわりと舞い上がり別の小隊を一人一撃叩き込んで悶絶させた。


「吹き飛びなさい!!」

「うわああぁ〜〜!!」


 一方、紫月の放った蹴りでSP達は吹き飛ばされて壁に叩き付けられたが、それをものともせず上空へ舞い上がった男がいた。


「紫月ちゃん! そいつは出来るぞ! 気をつけろ!」

「はい!」


 龍の忠告に応えて紫月も上空へと舞い上がる。だが、その男の頬に走っている傷を見るなり彼女はハッとした!


「まさか……!!」

「ターゲット確認……」


 男が静かに呟いたと同時に、まずいと龍はその場から一足飛びで紫月の下へ向かう。彼が叩き付けるのは殺気だ!


「今回は致命傷を狙う」

「くっ……!!」


 一撃目の蹴りで紫月は地上ギリギリまで弾かれたが、風の力で床に叩き付けられることだけは避けた。それから紫月は強い風を身に纏って二撃目に備えたが、男が上空から急降下してきたスピードにすぐ危険を覚えて後ろに飛ぶ!


 しかし、男は床に穴を開けながらもバランスの一つも崩さずに後ろに飛んだ紫月にナイフを突き立てようと突っ込んできた!


「覚悟」

「蜻蛉っ!!」


 龍が叫んだ名こそ鷹族でも屈指の武術家、蜻蛉だったのである……




今回も何日待たせてるんだ!との指摘がありそうですが……

はい、とりあえず更新です。


烏帽子との決着がついたと思ってもすぐに武帝と対峙するはめになった桜姫。

本当、彼女はよく働きます。

龍達より今回は動いてるんじゃないか!?


そして、麻薬会場内でも攻防が始まりまして、ついに篠塚家を襲ってきた蜻蛉が出て来ました!

紫月ちゃんでも苦戦した相手、さぁ、三男坊が次回どれだけ頑張ってくれるのか!?


だけど啓吾兄さんと秀……、早く合流しないのかしら……

まだケンカ中なのかなぁ??




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