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第二十七話:オカマ街

 じゃんけんで負けてオカマ街ヘと来ていた秀と啓吾は来た早々に囲まれてしまい、一旦は抜け出したもののまた囲まれを繰り返して珍しくダメージを受けていた。


 ただし、ダメージというのは肉体的にではなく精神的にである……


「……啓吾さん、パーティー会場には僕一人で乗り込みますから、ここは啓吾さんにお任せします」

「お前ならこいつらぐらい一瞬で燃やせるだろう? 日頃のストレス発散にでも使え」

「だったら啓吾さんの方が適役ですよ。さぁ、遠慮せずにやってください」

「だからいいって言ってんだろ? 俺はオカマ嫌いなんだよ!!」


 そう、全てはその一言に尽きる。


 啓吾も性同一性障害とか、女形とか、ただ単にお笑いとしての女装というぐらいなら認めている。おまけに綺麗なニューハーフなら感心すら覚えるぐらいだ。


 しかし、いかにも厳つい男がド下手な化粧をして、危険過ぎる色香を漂わせてそちらの道に引き込こもうと襲い掛かって来られては、オカマが嫌いだと叫びたくなっても無理はない。


「うぶなお兄さんね。今日はバレンタインデーだし、チョコレート漬けにでもしちゃおうかしら?」

「啓吾さんは汚れてますよ」

「お前なんか真っ黒だろうが」


 こういう時でも互いをけなし合うことは忘れない。というより、自分達がそんな目に遭わされるなんて想像もしたくないのでけなしあってた方が楽だ。


 しかし、秀は思考を切り替えて柳のことを思えば微笑を浮かべた。


「チョコレート漬けですか。柳さんにやってみるのはいいかもしれませんね」

「おい、次男坊……!! 何をやるって?」

「決まってるでしょう? チョコレートと一緒に柳さんを頂こうかと」

「テメェ……!!」

「啓吾さんだって紗枝さんにやるでしょう?」

「やんねぇよ! チョコレートなんかなくてもあいつは十分甘い」


 本人達が聞いたら間違いなく茹蛸になるか怒るかだが、一番聞かなくて良かったのは史上最強の恋愛初心者殿だ。


 真っ赤になるだけではなく、沙南にどうするのかというツッコミが一行から入り、さらに突っ込んだ話にまで間違いなくなっていただろうから……


 そう言い合いながら何とかいつもの調子に二人は戻ってきたのだが、そう現実は甘くなかった。


「お兄さん達、可愛いから教えてあげるけど、機密院に逆らわないほうが身のためよ? じゃないと御人形さんにされてしまうからね」


 ウインク付きの発言に二人はかなりのダメージを受けた。精神攻撃とはいつも以上にきつい……。だが、それでも二人はギリギリの精神で耐えた。


 しかし、精神攻撃に関する痛恨の一撃がやって来る。


「だけど、ここで諦めるなら私達が調教して可愛がってあげる。すぐに快感に目覚めるわよん」

「啓吾さん! もう僕はダメです! 柳さんは幸せにしますからここで骨を埋めてください!」

「いろんな意味でふざけんな! それに俺は調教したいタイプなんだよ! 死んでもこんな奴らに好きにされてたまるか!!」


 嫌悪感と欲望と本能がまぜこぜになって、二人は初めて敵前逃亡まで考えた。こんな時に龍がいてくれたら相手を威圧して終わったのかもしれないと、二人は心の底から助けすら求めたい気持ちになった。


 だが、それはオカマ達にとっては宣戦布告と取られたようである。少し低い声色で、オカマの頭領とでも言うべき厳つい男が二人の意志を確かめる。


「つまり、あなた達は私達の御人形にはならないのね?」

「なるか!!」

「拒否します!!」


 即答で答えたときに空気が変わった。冬の夜風に殺気が混ざり始め、それに二人もようやく落ち着きを取り戻す。むしろ、その空気こそが心地好いと感じてしまうほどに。


「そう、だったら……」


 オカマ達は顔付きを変え、手に様々な武器を取る。その中に鞭やらチェーンやら、蝋燭の類があることには目を伏せておこう。


「力付くでなってもらうわよ」

「次男坊、今回だけフォローしてやるから一気に消し飛ばせ!」

「今回だけ礼を述べさせていただきますよ。触れられたくもないですからね」


 二人は臨戦体勢をとり、突っ込んで来るであろうオカマ達と対峙した。いくらオカマといえども生身の人間。肉体の強度も力も秀の方が完全に上だ。


 だが、オカマ達はただの人間ではなかった。


「南天空太子、啓星、自分達のみが現代で力を覚醒させていると思わないことよ」


 また、二百代前の名前だ……、啓吾は心の中でそう呟けば、オカマ達はみるみるうちに巨大化していき、ついには鷹の化け物へと姿を変えた。どうやら、人間の言葉を話す化け物とは彼等のことらしい。


 しかし、秀の感想は別視点だった。しかも最も過ぎる意見だ。


「……鷹族って、オカマが多かったんですか?」

「いや、これはたまたま現代で目覚めたんじゃねぇのか? 鳳凰がオカマだったら引くだろ?」

「兄さんと戦ってほしいとも思いませんよ」


 それは啓吾も同感だが、そろそろ無駄口を叩いてる暇はなさそうだ。彼等も鷹族というのならそこそこの力を持っており、啓吾も全て重力で縛り付けることは不可能なのだから。


「次男坊、面倒だから覚醒だけはするな」

「分かってますよ!」


 次の瞬間、秀か指を鳴らせば爆炎が上がり、それを合図に化け物達が襲い掛かってきた!


「身ぐるみ剥ぎ取ってやるわ!!」

「死んでも御免です!!」


 振り下ろしてきた剣を秀は軽やかに避けて宙で一回転すると、炎を纏った足で火炎放射を放って化け物の身を焦がす。


 そして、空中での身動きが鷹族より劣るため、その隙をついて秀に後から別の化け物が襲い掛かってきた!


「南天空太子!!」

「おっと」


 秀の重力を操り、啓吾はその攻撃を避けさせる。そして、それから解放されると、秀は屋根を一蹴りして襲い掛かってきた化け物の鳩尾に強烈な一撃をお見舞いして悶絶させた。


「先に啓星を始末しろ!!」

「だからって何で俺の方にはそっち系ばかりが集まって来るんだよ……」

「細い腰がタイプだからよ!!」

「答えんなぁ!!」

「グオオッ!!」


 化け物の姿をしてそんな危険過ぎる言葉を吐かれた啓吾は、目を青く光らせるまで力を解放して化け物達を沈めた。

 どうしていつも自分はそんな人種に好かれるのかと、それは苦い過去を思い出しながら……


「そこまでになさい! 柳泉と自然界の女神を消し飛ばすわよ!」

「兄さんが傍にいてそんなことが可能だと思いますか?」

「ぐはぁっ!!」


 寧ろ手を出したら、死ぬだけで済むと思うなという殺気に当てられ、化け物達はさらに強烈な一撃をお見舞いされる。


「だったら細菌兵器を使うわ! あなた達がここに来たのもそのためでしょう!?」


 それにはピタリと二人は止まった。ただ、残す敵はオカマの頭領一人になってはいたが。


「やっぱりあるみたいですね」

「まっ、じゃなければこんなとこに来る必要はなかったからな」


 二人がここに来た理由は細菌兵器の有無を確かめるため。そして、出来ればその破壊をという命令を受けたためだ。土屋が秀と啓吾が最も適役だと言ったのもそのためである。


「どうするの? 一体どこで起動するか分からないわよ?」


 下手をすれば龍達の元に細菌兵器があるかもしれないと頭領は脅すが、それが通じる相手だったら冷徹非道の参謀なんて代名詞が秀に付くはずがない。


 それを証拠に、秀は全く動じることもなくあっさり切り替えした。


「やったらどうですか?」

「なっ!?」

「僕達がここに来たのは、あくまでも細菌兵器があるかどうかを確認しに来たまでのこと。あなたが使ったとしてもおそらく僕達は覚醒するか、最悪の場合は兄さんが天を落として世界を破滅させるかのどちらかですし」


 確かにそうだな、と啓吾もまったく脅しには動じなかった。寧ろ、やった瞬間に全てを消してやるつもりだと睨み返す。


「また、天空王は世界を破滅に導くというの……」

「その選択はあなたに掛かってるだけのこと。だいたい、天を統べる王に刃向かうあなた達の方が問題でしょう?

 空を自由に飛べるというのにケンカを売る馬鹿には、罰の一つぐらいお見舞いされることぐらい当然です」


 こちらも手を出されなければ干渉しないというのに、と言わんばかりに秀は答えるが、鷹族にとっては全て不条理な理由にしか聞こえていないわけで……


「でも二百代前、私達鷹族には罰を受ける理由など存在しなかった……!」

「えっ?」

「お前達天空族のおかげで、そして沙南姫の性で!! 我が一族が……! 何より隊長がどれだけ苦渋の決断をさせられたと思うのだぁ!!!」


 一体、どういうことなのかと思ったが、秀は向かってきた頭領に火球を放って飛び上がり、後頭部を蹴って地面に沈めた。


 そして、何やら思い当たることのありそうな啓吾に秀は尋ねる。


「……啓吾さん」

「ああ、もしかしたら鳳凰は……」


 真実は、二百代前に……




はい、いつもに増してある意味苦戦していた秀と啓吾兄さんでした(笑)

二人とも美形でかなりオカマ受けしそうな容姿の持ち主らしいですね。

特に啓吾兄さんはそれで辛い過去が……


さて、二人がオカマ街に来たのは細菌兵器があるかどうか確かめるため。

やれるものならやってみろと秀は言ってますが、実際はまずいですからね。

きっと彼がまたとんでもない知識をフル活用して潰してくれると思いますが……


そして、オカマの頭領が言ってた鳳凰の苦渋の決断。

どうやらお話は二百代前に遡るのであります。


因みに天空記本編でも明かされていない、光帝殺害の日に戻りますので、お楽しみに☆




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