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第二十二話:武の道

 話は二百代前に遡る……


 その日、太陽宮で開かれる武術の手合わせに訪れていた天空王こと龍は、渡り廊下から武道場へと向かう光帝の近衛隊長である鳳凰を見つけた。


「鳳凰殿」


 声をかけられた方に振り返る武道家は、龍の姿を見るなり深く頭を下げた。


「これは天空王様。お久しぶりです」

「こちらこそ、久し振りの手合わせを楽しみにしていました」


 名門の王が一介の近衛兵である自分に何故頭を下げるのかと、鳳凰は毎度不思議でならなかった。武人としての礼儀といえど、本来彼は頭を下げるべきではない。


 なんせ、彼は光帝が是非自分の娘をと薦めているほどの人物なのだから……


「それより鳳凰殿、最近鷹族が妙な動きを見せていると聞くが」

「はい、鷹族の主が悪事を働いていることは事実。多くの女達が慰みものとなっていると聞きます。心苦しい限りですが」


 話を反らさなくともよいと、鳳凰はその目で訴えて来る。それを感じ取り、龍も前置きは止めて直接告げることにした。


「鳳凰殿、天空軍に鷹族討伐の命が下った。だが、鷹族は鳳凰殿の同胞だ。鷹族の城には鳳凰殿の家族や友人もいるだろう、私はその者達を手に掛けることをしたくない。今のうちにこちらへ呼ぶことは出来ないだろうか」


 やはりそういうことかと、鳳凰は察していたと同時に目の前にいる男の甘さを改めて知った。


 これほどの力と器をもっているというのに、武で全てを制することを潔しとせず、さらに巻き込みたくないものを何とか助けられないかと模索する甘い王なのだ。自分を信頼してくれてはいるのだろうが、これがスパイだった場合、どうする気だというのだろう。


 しかし、こんな王だからこそ、光帝も沙南姫も、何より自分が主以外に膝を折ってもいいとまで思ってしまうのだけれど。


「天空王様、鷹族は仕えるべき主のために武の道を進む民族。例え家族だろうと、それを破ることは出来ません」

「しかし……」

「情けは無用。親兄弟であろうと主が悪事を働いているのは事実。それに加担しているのであれば斬り捨てて下さい」

「鳳凰殿……」

「あなたも沙南姫が狙われているというのに迷ってどうするのです。天を従えるべき王が鷹族の主などに沙南姫を渡してはならない」


 迷いなき目は龍を真っすぐに射抜いていた……



 機密院の本拠地に向かうため、一行は一度着替えてクルーザーに乗り込む。秀が少しでも暖を取れるようにと熱球をいくつか出してくれてはいるが、冬の海風は凍てつくような冷たさで、末っ子組はピッタリと寄り添うように座っていた。


「寒いよ〜!」

「大丈夫? 夢華ちゃん」

「うん、頑張る!」


 そんな光景にクルーザーを運転しながら森は自分の境遇を非常に哀れみたくなったが、さらに追い打ちを掛ける次男坊がここにはいる。


 火と熱の力を操れるだけでもこの寒さをまず感じることがないというのに、それ以上に暑苦しいと感じてしまうほどイチャイチャして、幸せを満喫している光景がいやでも目に飛び込んで来るのだから……


「あの、秀さん……」

「はい、何でしょう?」

「温かいのは嬉しいんですけど、恥ずかしいんですが……」


 後ろから包み込まれて、これでもかというほど密着して、おまけにこの甘い空気を漂わせる青年に柳は心臓がもたないと心の中で悲鳴を上げる。


 しかし、この青年はそれが楽しくて仕方がないという性質の悪さしか持っていないため、柳が俯けば俯くほどその悪戯は過熱していくばかりだ。


「すみません、でも寒いときは人肌が一番ですからね。柳さんとこうしていると心まで熱くなるんですよ」

「ひやっ!」


 今日は一体、何度口づけを落とされているのだろう。もちろん、とても嬉しいのだが、いつも以上に近いことが体中の熱を上昇させられて、いてもたってもいられなくなる。


 しかし、抗議したところで受け入れてくれることはないのだろうが……


 そんな二人をいつもなら邪魔しに行くはずのシスコンは、寒さと紗枝に止められたため、今現在は龍達と会話中である。


「さすがに重力じゃ、寒さまでは防げないか」

「無茶いうな。というよりお前だって自然界の女神ならこの寒さ何とかならないのかよ」

「こんなところに風よけの木を召喚するわけにはいかないでしょ?」


 重力を使えようが、自然界の女神様であろうが寒さはどうにもならないらしい。しかし、元はといえば空に問題があるのならと啓吾と紗枝の視線は龍に向く。


「龍、お前の天の力で」

「世界を滅ぼすつもりか」


 龍は間髪入れずに答えた。天の力は気温を変化させるものではなく空を落とす攻撃性のもの。そんなものを使うわけにはいかない。ならばと沙南にも視線が向くが、彼女ももっともなことを告げた。


「太陽光は夜にはね」


 さすがに夜に太陽を昇らせるわけにもいかない。それに太陽のような小さな光弾も作り出せるが熱量が半端ないため、やらない方が無難である。


 そして、結局啓吾の寒さ対策も残されてるのは一つだけだ。


「紗枝」

「きゃっ!」


 啓吾は紗枝の腕を引っ張ると、そのまま自分の腕の中に閉じ込める。しかも絶対逃げ出さないように重力まで使って。


「やっぱり人肌が一番だよな」

「離しなさい啓吾!」

「俺は寒いの嫌いなんだよ。しばらく湯たんぽになってろ」

「だからって重力で縛るな!」


 ご満悦な顔を殴りたくても殴ることが出来ない。いっそのこと木でも召喚して縛り付けてやろうかと思ったが、耳元で大人しくしてろと囁かれて抵抗を止める。卑怯な奴だと心の中で悪態をついて。


 しかし、一番顔を赤く染めているのは紗枝ではなく、純粋な悪の総大将だったりする。そんな龍を見て、桜姫はサラリと促した。


「主、どうぞ沙南様を抱きしめて」

「人前でやるかぁ! それより、機密院の本部の情報を教えてくれ」


 人前ではやらないんだ、と沙南以外が心の中でつっこむが、とりあえず作戦会議をやらないわけにもいかず、桜姫は機密院の情報を提供することにした。


「まず、機密院の組織については先程紫月様がおっしゃっていたとおり、トップに鷹族の暗愚な主が、麻薬組織として淳将軍が追っているのが鷹と言う名の戦闘部隊となります」


 そこまでは全員理解しているらしく、コクコクと頷く。


「彼等の現代での目的はハーレムの形成と暗愚な主は言うでしょうが、鷹に関してはおそらく天空族への復讐かと思われます」

「でもさ、それと麻薬って何の関係があるわけ?」


 肉まんをかじりながら翔はもっともなことを尋ねる。資金稼ぎも一つの理由にあげられることは分かるが、鷹の二百代前は光帝に仕えていた親衛隊だ。どう考えても麻薬とは無関係な気がする。


「翔様のおっしゃることはごもっともですが、世の中には肉体を改造する薬というものが存在するのも事実です。当然その逆の肉体を衰えさせる薬もございますが」

「じゃあ、鷹はその麻薬を手にするために動いてるってこと?」

「はい、多くの製薬会社が絡んでいることも考えてですが」


 これはまた面倒なことになりそうだな、と紗枝を湯たんぽがわりにしながらも啓吾は思うのだった。




はい、お待たせしました☆

しばらくの間は番外編に集中しますので、ちょっとは更新も早くなるかなと思います。


でも、本編の影響を受けてか、こちらのアクセスも増えてとてもホクホクさせていただいてます。

うん、本当緒俐は幸せものですね☆


さて、今回は龍と鳳凰の二百代前を書かせていただきました。

何やら、鷹族討伐前にやり取りがあったみたいで……

この続きもまた後日になりますね。


そして、相変わらずイチャイチャしてる秀と啓吾兄さん。

でも、それに顔を赤くするのが龍という(笑)

彼にはまだ純情なままでいてもらいます。


でも、こういうタイプがぐっと押しが強くなったりするのも緒俐的にはツボですけどね(笑)




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