炉辺談話 2
「最近、うちの子勉強しなくなっちゃったのよねぇ……奥さんのところはどう?」
「うちの子もそう!全然言うこと聞かなくなっちゃった。困ったわ」
「私の家の子はもう学校の勉強だけじゃ追い付かなくなっちゃって……だから、塾に入れようかと思っているの。どこかいいところないかしら?」
「駅前の塾はいいって聞いたわ。あの田中さん、通わせてるって話よ」
「田中さんって、あの三年生の子どもいる奥さん?三年生から塾通いなんて大変ねぇ……」
「うちは少年団で忙しいから無理だわ。早見先生暇だからなんだろうけど、休みの日はずっと少年団入れているの」
「ありがたい話じゃない?一生懸命やってくれているんでしょ?」
「一生懸命なのはいいけど、休んだらレギュラー外されるもの。一生懸命通って、少年団の色々な手伝いして、やっとレギュラー取れるのよ」
「えー、そんなの大変じゃない?」
「大変なんてもんじゃないわよ。ここ最近は、ずっと練習試合。隣町の小学校でやるからって言って、送り迎えしなきゃならないわけ。そういうのも休んだら、アウトだもの」
「けど、孝彦君なら多少休んでも実力でOKなんじゃないの?体も大きいし、体力もあるでしょ?」
「ダメダメ、その辺はポリシーあるのか早見先生は絶対そうするんだって。先生がそういう訳じゃないんだけど、六年生の晃君、それでレギュラー外されたらしいわよ」
「けど、それって子どもの問題だけじゃなくて、親の問題じゃない。なんか納得いかないわ」
「じゃあ、また教育委員会にメールしようかしら?」
「またって、こないだメールしたの?」
「私はしなかったけど、この前噂でメールしたって人の話は聞いたのよ」
「えー、誰?誰?遠藤さんとか?あの人、いっつも先生の文句ばっかり言ってるし」
「違うのよ。うちのクラスの柏木さんって話」
「本当?だって、柏木さんってあの柏木さん?なんか上品そうなお母さんじゃなかった?」「でもね、お子さんの雅彦君、最近学校言ってないらしいわよ」
「あ、なんか私も聞いた。具合が悪いって話を金子先生はしてるけど、実はいじめがあったんじゃないか?って、こないだ鈴木さんが言ってた」
「そうそう。それで、柏木さんと仲の良い北さんがね。だいぶ前にこのお茶会に北さん来た時あったでしょ?あの時、教育委員会にメールする、しないの話したじゃない」
「あー、したかも。なんか北さん乗り気だったやつでしょ?」
「そうそう。それで、北さんと柏木さんが会った時にその話したんだって。そしたら、柏木さん乗り気になったみたいで。インターネットとか全然詳しくない人だったのに、勉強して委員会にメールしたらしいわよ」
「えー、すごい!モンスターペアレントみたい!それでそれで?どうなったの?」
「そんなに詳しくは聞いてはいないけど、まだ何もないみたい。メールしたの聞いたのは一昨日くらいなんだけど」
「どんなメールしたのかしら?」
「なんか、『うちの子がいじめられているのに、担任は何もしてくれません。担任を早く変えてください』みたいなこと書いたらしいわよ。しかも金子先生の名前は出して、自分は匿名でやったみたいよ」
「匿名なんだ!匿名じゃ聞かなさそうだよね。ってか、本当にモンスターじゃない?」
「うちの子、金子先生のことけっこう好きだから、変わったら困るわぁ」
「どうなのメガネ先生?いいの?」
「なんか一生懸命はやってくれてるみたい。授業もわかりやすいって言うしね。けど、フレンドリーなタイプではないかな?」
「なんか真面目そうだもんね。インテリ系?な感じするもん。早見先生にも少し見習ってほしいわ」
「えー、早見先生の方がなんか楽しそうじゃない?」
「楽しいわ楽しいらしいけど、言葉遣いは悪いし、授業も何やってるかわからないって、浩太は言ってたわ。宿題すら出してくれないのよ!」
「今時、宿題出さないって駄目じゃない?」
「だから、塾に行かそうとしてるのよ。もう無理だもの」
「うちの子も入れようかなぁ?入れるなら一緒に入れましょうね」
「もちろんよ。抜け駆けしちゃだめよ」
「あ、そろそろお開きにしない?帰ってくるわ」
「はーい。じゃあ、今日も一人三〇〇円ね」
「はーい」