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第3話 うさちゃん絆創膏
川の向こうから、
人の気配がした。
水桶を抱えた親子だ。
子どもが、
足元の石につまずいた。
「――っ」
泣き声は、あがらなかった。
けれど、膝を押さえている。
トミは、立ち上がった。
何も言わずに、
ポシェットから布を取り出す。
ノンアルコールの、
ウォッシュタオルだ。
「ちょいと、見せておくれ」
傷は、浅い。
拭いて、
うさちゃんの絆創膏を、
ぺたりと貼った。
「……あ」
子どもが、
絆創膏を見て、目を丸くする。
「だいじょうぶだよ」
トミは、
そう言って、にっこり笑った。
「……ありがとうございます」
母親は、
川の向こうを指さした。
「あの先に、町がありますよ」
土の道が、
森の向こうへ伸びている。
「困ったら、来るといいです」
トミは、
一度だけ、そちらを見た。
「そうかい、ありがとうさん」
笑顔で答える。
子どもは、
何度も振り返っていた。
トミは、川を見た。
水がある。
魚もいる。
……今日は、ここでいい。




