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第10話 おにぎりは鬼を斬る武器ではありません。
今日も、トミのコテージは冒険者で賑わっていた。
「そうかいそうかい、これからモンスター退治かい。
それなら――」
トミはキッチンに行くと小さな包を持って戻ってきた。
「ほれ、おにぎりだよ。持っておいき」
「え?鬼斬り?」
「腹が減っては戦はできぬ、だからね、おにぎり持っていきんさい」
他の冒険者がダンジョンから戻ってきた。
「バーチャンの『鬼斬り』は鬼を斬るパワーをあたえてくれるんだぜ」
「バーチャン!助かったよ!」
「『鬼斬り』の加護があってさ」
「あなたの『鬼斬り』のおかげで鬼を斬れた!」
口々に感謝を言う冒険者に、トミは首を傾げた。
「鬼を斬る…?」
「ああ。
バーチャンが作ってくれた『鬼斬り』を食べたら、こう、身体の奥から力がわいてきてさ」
トミは、ふぅ、と小さく笑うと
「違う違う」
包丁をトントンと動かしながら
「腹が減ってたら力が出ねぇだけだべ」
ダンジョンから帰ってきた冒険者に、けんちん汁を振る舞う。
「あんたさんが努力しただけだべさ。
飯食って、ちゃんと休んで、そんで勝ったんだ。
それはあんたさん達の力だよ」
トミは、ただ微笑むだけだった。
「私は握っただけさね。
それにしても――」
少し考え込む。
「名前がよくないみたいだねぇ。
これからは『おむすび』ていうかの」
苦笑しながら、食欲を刺激するいい香りがする鍋をかきまわした。




