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第1話 トミ婆ちゃん、避難用シューターで異世界へ
けたたましく鳴る火災報知器。
飛び交う客の悲鳴。
従業員が声を張り上げて
避難誘導をする。
「お婆ちゃん、こっち!」
5階、地上からおよそ15m前後――
「ままよ!」
トミは避難用シューターに飛び込んだ。
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ぽいっ。
トミは万歳の姿勢のまま、
どこかへ放り出された。
感触が、受け取り布ではない。
充満する煙もない。
肌に当たる熱さもない。
その代わり、そよそよとした風にあおられ、
木にぷらーんとぶら下がっていた。
「……ここ、どこだい?」
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枝を伝って、
なんとか地上に降りる。
手荷物確認。
ポシェット、ある。
リュック、ある。
……よしっ。
あたりを見渡す。
ビルはない。
さて、どうしたものか。
まずは、水だね。
慌てたって、ろくなことはない。
補聴器の感度を上げて、
周囲の音を聞く。
……水の音。
川を見つけた。
まずは、水を見る。
濁りはない。
泡も、妙な色もない。
……。
魚が、ぴちゃんと跳ねた。
「悪くは、なさそうだね」
トミは、いきなり口はつけなかった。
「今日は、ここまでだね」
夜に動くのは、ろくなことがない。
トミは川から少し離れた場所に、
アルミシートを広げた。
ガサ、と音がする。
「……まあ、仕方ないね」
リュックを枕にして、
トミは目を閉じた。
水がある。
今日は、それで十分だ。




