表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

デート

「デートしようよ」

 この言葉を発するのに時間はかからなかった。凪はスマホの画面に向けて元気よく声を発していた。まるで断られる事はないだろうという自信満ちた発声だった。今日は7月27日土曜日。快晴に恵まれ絶好のデート日和。凪は裕君をデートに誘った。

「いいけど」

「貸し1ね。私が声かけなかったら裕君絶対外でないでしょ」

「うるせーな。今日は家で勉強する予定だったんだけど?」

「いいじゃんいいじゃん!たまにはさこうぱーっと遊ぼうよ!」


 夕暮れのアウトレットは、人でごった返していた。夕焼けに染まった空が、なお一層深くなる暗さを想像させてくる。凪と裕はアウトレットの入り口で落ち合った。

「今日は何買うの?」

「決めてない」

 ぶっきらぼうな裕に、凪は続ける。

「昔ね、ここお母さんと来たことがあるの。その時はまだ小学生だったんだけど。」

「そっか」

「ここから見る海がきれいだったなぁ」

「凪って何で吹奏楽部に入ったんだ?」

突然の質問に、凪は驚いた。

「え?……そりゃあ、裕君を応援するためだよ。野球、辞めちゃったでしょ?かなしかったなぁ。ねえ何で辞めたりしたのよ」

「それは、気分だよ気分。野球ってガラじゃ無いっつうか。」


裕君は本当にそれでいいの?本音が少し垣間見えた気がした。裕君はおそらく本気で言っていない。そう確信していた。

「ごめん変なこと聞いちゃったね」

 全然変な事じゃない。むしろ厚かましいほどにおせっかいな私の性格からして、この質問は正解だったはずだ。ショッピングモールの大通りを歩きながら、私は考えた。もし裕君が野球を辞めずに部活を続けていたら、私は嬉しいのだろうか。確かに、裕君を応援できるのは嬉しいことだが、こうして休日にショッピングモールやアウトレットに出かけることも無かっただろう。でもそんな事、明らかに利己的な考えだ。裕君は本当は野球がしたかったのだろうか。

 「俺がいないから、吹奏楽辞めるとか言うなよ?」

 「辞めないよ。私は好きで続けてるんだもん。」

 「じゃあ卒業まで辞めないに何賭ける?」

 「そういうのを賭け事にするもんじゃありません」

 私だって辞めたくなる時はある。でも、白熱した野球の試合で応援歌を演奏している時の景色が見たくて、この部活動を続けている。もう夏の大会は終わってしまったのだけれど。

 

 Shipsでチノパンを見ながら、二人はお互いを意識することも無く、ラフな気持ちで買い物を楽しんでいる。ただ時だけが過ぎ去っているように思えた。

 ベンチでスタバのフラペチーノを飲んでいる時だった。

 「俺、引っ越すんだよね。」

 裕君は突然真剣な声で凪に話す。

 「母の施設移ることになって、それで9月から別の高校に通うことになった。」

 「え、何でよ。そこからうちの高校通えばいいじゃん!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ