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異世界転生したら知識神のスキルがチートすぎて、 冒険者なのに国家と神と魔王に目をつけられました ー王都・教会編ー  作者: 蒼月アルト


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9/9

第9話 観測装置

教会を出てから、

空の色が少し違って見えた。


同じ王都。

同じ街路。

同じ人の流れ。


なのに――

世界が一段、

“内側に折り畳まれた”感覚。


(……見られている)


それは、

直感だった。



「レオン」


宿に戻るなり、

セレナが言った。


「教会区画に入ってから、

魔力の流れが変わっています」


「やっぱり?」


「ええ。

まるで――

測定されているみたい」


測定。


その言葉に、

《知識神の演算式アーカイヴ》が

淡く反応した。


起動。


……だが。


(……視えない)


教会周辺だけ、

情報が抜け落ちている。


数式が、

途中で途切れる。


(隠している、

というより……)


(観測する側の装置か)



翌日。


再び、

教会から使者が来た。


今度は、

断れない。


「短い時間です。

“確認”だけ」


確認。


便利な言葉だ。



案内されたのは、

前回とは違う地下区画。


白い壁。

静かな通路。


そして――

中央に置かれた

巨大な水晶柱。


「……なに、これ」


ミルフィが、

思わず声を漏らす。


「転生者観測装置です」


淡々とした声。


ルナ=セレフィアだった。



「教会は、

神の声を聞くだけの場所ではありません」


彼女は、

水晶に手をかざす。


淡い光。


「世界の安定を保つため、

“異物”を把握する必要があります」


異物。


その言葉が、

胸に引っかかる。


「……異界の魂、

という意味で?」


「はい」


否定はない。



水晶に、

光が走る。


俺の視界が、

一瞬だけ揺れた。


《アーカイヴ》が、

強制的に反応する。


だが――

逆に、

“覗かれている”感覚。


(……これは)


(俺が見る側じゃない)


(見られる側だ)



「心配はいりません」


ルナは、

そう言った。


「これは、

攻撃のための装置ではありません」


「……管理のため、

ですか」


少し、

間を置いて。


「……はい」


その沈黙が、

全てを語っていた。



水晶の中に、

像が浮かぶ。


断片的な映像。


戦場。

ダンジョン。

王城。


そして――

倒れていく英雄たち。


(……過去の転生者)


「彼らは、

世界を救いました」


ルナの声は、

震えていない。


「同時に、

世界の歪みを

大きくもしました」


「だから、

管理する?」


「だから、

“制御”します」


言い切った。



「英雄は、

強すぎると危険です」


「……誰にとって?」


問いかける。


「世界にとって」


即答。


だが、

それは――

誰の世界だ。



《アーカイヴ》が、

解析を進める。


観測。

記録。

介入。


英雄の行動パターン。

感情の揺れ。

思想の傾向。


(……なるほど)


(これは、

“飼育”だ)



「レオン様」


ルナが、

俺を見た。


「あなたは、

非常に安定しています」


「そうですか?」


「はい。

今のところは」


今のところ。


未来が、

含まれている。



「ですが」


続く言葉に、

空気が重くなる。


「あなたの力は、

想定を超えています」


「……それは」


「危険、

という意味ではありません」


彼女は、

少しだけ視線を逸らした。


「“例外”という意味です」



例外。


管理できないもの。


それは、

この装置の

最大の欠陥だ。


「……ルナさん」


あえて、

名を呼んだ。


「あなた自身は、

どう思ってる」


彼女は、

すぐには答えなかった。



「私は……」


わずかに、

言葉を探す。


「世界が壊れるより、

管理された方が

良いと思っています」


「でも?」


沈黙。


それが、

答えだった。



地下区画を出る。


地上の光が、

再び目に入る。


だが――

さっきよりも、

遠く感じた。


「……ねえ、

レオン」


ミルフィが、

不安そうに聞く。


「これってさ……

ずっと、

続くの?」


「続けさせない」


即答した。


それは、

決意だった。



王都に戻る途中。


《アーカイヴ》が、

一つの結論を提示する。


――教会は

――敵ではない

――だが、

――自由の味方でもない


(……なら)


(俺が選ぶ)


英雄になるか。

管理されるか。


それ以外の道を。



その夜。


遠くで、

再び鐘が鳴った。


今度は、

三度。


《アーカイヴ》に、

強いノイズ。


(……本格的に、

囲われ始めたな)


観測装置は、

完成している。


次に来るのは――

制限。


英雄候補レオン=アルケイオン。


その存在は、

今この瞬間、

教会の記録に

こう刻まれた。


――

《管理優先度:高》

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

本作は、王都・教会編をもって幕を閉じます。


英雄となって、

管理や制御を振り切り、

不完全な自由を手にするのか。


あるいは、

世界の安定の一部として、

管理される存在に落ち着くのか。


どちらが正しく、

どちらが幸せかは、

分かりません。


レオンは選択の手前に立っています。

そして、その先は――

読者一人ひとりの想像の中にあります。


もしこの物語を読み終えたあと、

「自分なら、どちらを選ぶだろうか」と

少しでも考えていただけたなら、

それで十分です。


最後までお付き合いいただき、

本当にありがとうございました。


この物語はここで一区切りですが、物語を書く手はまだ止まっていません。

ほかの世界の話もありますので、よければ覗いてみてください。

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