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異世界転生したら知識神のスキルがチートすぎて、 冒険者なのに国家と神と魔王に目をつけられました ー王都・教会編ー  作者: 蒼月アルト


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第7話 王都の檻

王都《ルミナス=アーク》に滞在して、

七日目。


最初に感じた違和感は、

もう“確信”に変わっていた。


――自由が、

少しずつ削られている。



「……警備、

増えてない?」


朝、宿の食堂で

ミルフィが尻尾を揺らしながら言った。


「昨日までは、

いなかったよね?」


「増えている」


即答したのは、

セレナだった。


「配置が変わっています。

巡回の間隔も短い」


《知識神の演算式アーカイヴ》を

起動せずとも、分かる。


宿の前。

通りの角。

屋根の上。


視線が、

確実に増えている。


(……始まったな)



「英雄候補殿」


外へ出ようとした瞬間、

衛兵に声をかけられた。


「本日は、

行動予定をお聞かせください」


丁寧な口調。

だが、

選択肢はない。


「市内の散策を」


「承知しました。

護衛をお付けします」


護衛。


それは、

王都における

最も柔らかい拘束だ。


「……結構です」


俺は、

穏やかに断った。


「冒険者ですので」


「規則です」


規則。


便利な言葉だ。



結局、

護衛は付いた。


二名。


距離は取るが、

常に視界に入る位置。


ミルフィが、

小声で囁く。


「ねえ、

これってさ……」


「うん」


「檻、だよね」


否定できない。



街を歩く。


昨日まで入れた通りに、

今日は入れない。


「立ち入り禁止です」


「理由は?」


「上からの指示で」


上。


それが誰かは、

誰も言わない。


国家か。

貴族か。

あるいは――

教会か。



「……やり方が、

綺麗すぎますね」


セレナが言う。


「力を使わせないための、

最適解です」


剣を抜けば、

危険人物。


魔法を使えば、

監視対象。


何もしなければ、

ただの“従順な英雄候補”。


王都は、

戦わせないことで

英雄を無力化する。



午後。


リリアが、

深刻な顔で戻ってきた。


「……王城から、

“お願い”が来た」


「内容は?」


「移動の事前申請」


一瞬、

空気が止まる。


「……冒険者に?」


「英雄候補だから、

だそうだ」


それは、

もはや招待ではない。


管理だ。



「……怒らないの?」


ミルフィが、

不安そうに聞く。


「怒るよ」


正直に答える。


「でも、

今怒ったら負けだ」


王都は、

感情的な英雄を

待っている。


それを理由に、

檻を完成させるために。



夕方。


王城の外壁を見上げる。


高く、

分厚く、

隙がない。


「……昔は、

守るための壁だったんでしょうね」


アイリスが言う。


「今は?」


「守る、

という名目で……」


「閉じ込める」


続きを、

俺が言った。



その夜。


部屋に戻り、

《アーカイヴ》を起動する。


王都全域。

監視網。

通行制限。


全てが、

一つの図として

浮かび上がる。


完璧だ。


逃げ道も、

反抗の余地も、

最小限に抑えられている。


(……英雄を

暴れさせないための都市設計)


感心するほどだ。



だが。


《アーカイヴ》が、

一つだけ

“歪み”を示した。


――教会区画

――情報ノイズ

――未解析領域


(……まだ、

踏み込むなってことか)


国家の檻は、

理解できる。


だが、

理解できないものは

より危険だ。



扉をノックする音。


「……レオン」


リリアだった。


「最悪を想定しろ」


低い声。


「次は、

“保護”という名の拘束だ」


「教会か」


「ああ」


短い会話。


だが、

重い。



窓を開ける。


王都の夜景が、

美しく広がる。


灯り。

秩序。

静寂。


完璧な都。


だが、

その美しさは――

逃げ場のなさでもある。


「……英雄は、

ここでは生きられない」


呟く。


正確には、

考える英雄は、だ。



《アーカイヴ》が、

一つの結論を出す。


――現状維持

→ 完全拘束

→ 名誉職ルート


――抵抗

→ 強制排除

→ 記録抹消


(……どちらも、

却下だ)


だから、

第三の選択肢を選ぶ。


「……まだ、

出る時じゃない」


だが、

準備は始める。


この檻が

完全に閉じる前に。



その時。


遠くで、

教会の鐘が鳴った。


一度。

二度。


今までより、

少し近い。


《アーカイヴ》に、

強いノイズ。


(……見られてる)


王都の檻は、

もう完成しかけている。


次に来るのは――

観測。


剣でも、

政治でもない。


もっと静かで、

逃げにくいもの。


レオン=アルケイオン。


英雄候補。


その立場は、

今この瞬間、

“管理対象”へと

書き換えられつつあった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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