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異世界転生したら知識神のスキルがチートすぎて、 冒険者なのに国家と神と魔王に目をつけられました ー王都・教会編ー  作者: 蒼月アルト


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第6話 貴族令嬢の視線 ――クラリス=アーデン視点

英雄候補レオン=アルケイオン。


その名を初めて聞いた時、

私は鼻で笑った。


また一人、

地方で力を得て調子に乗った

“使い捨ての英雄”が

王都に呼ばれただけ。


それ以上でも、

それ以下でもない。


――はずだった。



王都《ルミナス=アーク》は、

嘘を嫌う街ではない。


むしろ、

嘘を上手に使える者が生き残る街だ。


貴族とは、

そのための教育を受けた存在。


事実を歪め、

言葉を選び、

沈黙を武器にする。


だからこそ、

私は自負していた。


――この街で、

“読めない人間”などいない、と。



「穀物相場が、

動いています」


執務室で、

補佐官が報告してきた。


「例の商会が、

価格操作をやめました」


「……理由は?」


「不明です」


不明。


それは、

この街で最も不気味な言葉だ。


誰かが得をし、

誰かが損をする。


そこに必ず、

理由はある。


「……レオン=アルケイオン」


名前を口にした瞬間、

胸の奥が僅かにざわついた。



彼は、

奇妙な男だ。


王都に来てから、

何もしていない。


――表向きは。


派閥に属さず、

勧誘を受け流し、

演説もしない。


それなのに、

街が少しずつ動いている。


これは、

英雄のやり方ではない。


英雄なら、

声を上げる。


剣を抜く。


正義を語る。


だが彼は、

語らない。



「……理解できない」


窓辺で、

私は街を見下ろした。


貧民区。

商業区。

貴族街。


王都は、

完璧な均衡で成り立っている。


誰かが勝ち、

誰かが負ける。


それが、

“正しい”。


なのに――

彼はその均衡を

壊さずに、ズラした。


それが、

最も危険なやり方だと

彼は理解しているのだろうか。



宴での言葉が、

蘇る。


『英雄になるかどうかは、

俺が決めることじゃない』


傲慢ではない。


だが、

謙虚でもない。


彼は、

“枠”そのものを

拒否している。


それは、

貴族社会において

最も嫌われる態度だ。



「……彼を、

どう評価すべきかしら」


補佐官は、

言葉に詰まった。


「英雄……

ではありません」


「ええ」


「ですが……

無力でもない」


その評価が、

全てだった。



私は、

記録を開いた。


レオン=アルケイオン。

スラム出身。

冒険者。


特筆すべき家系なし。

貴族との血縁なし。


――なのに。


王都の中枢に、

静かに爪を立てている。


(……危険)


英雄は、

処理できる。


使い潰すか、

幽閉すればいい。


だが――

思想を持つ冒険者は、

処理しづらい。


しかも、

それを自覚している。



「……直接、

話すべきかしら」


迷いが生じたことに、

私は驚いた。


貴族は、

感情で動かない。


理解できないものは、

排除する。


それが、

正解のはず。


なのに――

彼を排除する未来が、

一番“荒れる”と

直感が告げている。



数日後。


廊下で、

偶然を装って彼とすれ違った。


「……ごきげんよう」


「どうも」


彼は、

丁寧に頭を下げる。


――礼儀はある。


だが、

へりくだっていない。


「王都は、

お気に召しました?」


試すように問う。


「……勉強になります」


曖昧な答え。


だが、

嘘は感じない。


「英雄候補として?」


「冒険者としてです」


即答。


(……やはり)



「忠告しますわ」


私は、

あえて冷たい声で言った。


「この都で、

自由に考える英雄は

長く生きられません」


彼は、

少しだけ笑った。


「覚えておきます」


否定も、

同意もない。


その態度が、

腹立たしい。



部屋に戻り、

私は深く息を吐いた。


怒りではない。


恐怖でもない。


――興味。


それが、

一番厄介だ。


(……理解したくないのに)


彼は、

英雄ではない。


だが。


英雄よりも、

ずっと厄介な存在だ。



「……教会にも、

伝えておきなさい」


補佐官に、

そう命じた。


「この冒険者は、

“管理”が必要だと」


それは、

彼を守るためでもあり、

王都を守るためでもある。


そして――

自分自身を守るため。



夜。


王都の灯りが、

静かに揺れる。


私は、

一つの結論に辿り着いた。


――レオン=アルケイオンは、

敵か、味方か。


まだ、

決められない。


だが一つだけ、

確信している。


彼を理解しないまま

排除するのは――

最悪の選択だ。


貴族令嬢クラリス=アーデン。


私は初めて、

“英雄候補”ではなく、

一人の男を見ている。


それが、

王都にとって

どれほど危険な兆しなのか――

まだ、誰も気づいていない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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