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異世界転生したら知識神のスキルがチートすぎて、 冒険者なのに国家と神と魔王に目をつけられました ー王都・教会編ー  作者: 蒼月アルト


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第4話 無力な英雄

英雄は、

戦場では王だった。


だが――

戦争が終わった瞬間、

王は不要になる。



王都の朝は、

どこか静かだ。


人の数は多い。

往来も盛んだ。


それなのに、

騒がしくない。


理由は単純だ。


この街では、

声を上げる必要がない。


あるいは――

上げない方が、

安全だからだ。



「……ここです」


案内役の下級役人が、

立ち止まった。


貴族街の外れ。

手入れはされているが、

華やかさはない。


屋敷というより、

施設だ。


「元英雄殿が、

お住まいになっています」


“元”。


その言葉が、

妙に耳に残った。



扉が開く。


現れたのは、

白髪交じりの男だった。


背は高い。

体格も、まだしっかりしている。


だが、

目が――

死んでいた。


「……誰だ?」


声は低く、

感情が薄い。


「冒険者のレオン=アルケイオンです」


名を告げると、

男は一瞬だけ反応した。


「……ああ」


「新しい、

英雄候補か」


その言葉に、

誰も返せなかった。



屋敷の中は、

整然としている。


だが、

生活感がない。


必要なものは揃っている。

だが、

選択肢がない。


《アーカイヴ》が、

淡々と情報を提示する。


――外出制限

――面会制限

――発言記録:削除


(……名誉職)


そう呼ばれる、

幽閉。



「英雄殿は……

今は何を?」


アイリスが、

恐る恐る尋ねた。


男は、

少し考えてから答える。


「何も」


「……何も?」


「何も考えず、

何も決めず、

何も変えない」


淡々とした声。


「それが、

一番長生きする」


ミルフィが、

息を呑む。


セレナは、

唇を噛みしめた。



「……後悔は?」


俺が聞く。


男は、

しばらく黙っていた。


「戦ったことは、

後悔していない」


「仲間を守ったことも、

後悔していない」


「だが――」


視線が、

床に落ちる。


「考えたことは、

後悔している」


「考えた?」


「ああ」


男は、

かすかに笑った。


「戦後、

この国を良くしようとした」


《アーカイヴ》が、

過去ログを呼び出す。


――改革提言

――権限剥奪

――名誉職


「英雄は、

戦うためにいる」


男は、

静かに言った。


「考える英雄は、

邪魔だ」



屋敷を出た後、

誰もすぐには口を開かなかった。


重い沈黙。


「……英雄って」


ミルフィが、

震える声で言う。


「なに……?」


答えは、

簡単だ。


「便利な象徴だ」


アイリスが、

拳を強く握る。


「そんなの……

間違ってます!」


「間違ってる」


肯定する。


「でも、

正しい」


矛盾した言葉。


だが、

それが現実だ。



午後。


今度は、

別の元英雄の記録を見せられた。


戦死。

事故死。

病死。


あるいは――

記録抹消。


「……英雄は、

消えるんですね」


セレナが、

静かに言った。


「消される」


訂正する。


英雄は、

終わった後に不要になる。


だから、

消す。



「レオン」


リリアが、

低い声で言う。


「分かっただろ」


「……ああ」


「ここでは、

英雄は無力だ」


剣も、

魔法も、

意味を持たない。


あるのは、

立場と許可。



夕方。


王都の外壁を眺めながら、

俺は立ち止まった。


高い。

分厚い。

隙がない。


(……檻だな)


王都は、

英雄を守る。


同時に、

自由を奪う。


「……俺は」


呟く。


「こうはならない」


アイリスが、

真っ直ぐにこちらを見る。


「はい」


セレナも、

静かに頷く。


ミルフィは、

尻尾を揺らす。


「一緒なら、

ならないよ」


その言葉に、

少し救われた。



夜。


宿に戻る。


《アーカイヴ》を起動する。


英雄たちの末路。

王都の構造。

管理の仕組み。


全てが、

一本の線で繋がった。


(……だから、

英雄は消える)


英雄が無力になる場所。


それが、

この王都だ。



窓の外。


再び、

教会の鐘が鳴った。


規則正しく、

逃げ場のない音。


《アーカイヴ》が、

強いノイズを検知する。


(……次は、

教会が動く)


国家が、

英雄を無力化するなら。


教会は――

管理する。


「……来るな」


そう思った瞬間。


扉の外で、

足音が止まった。


次の“檻”は、

すぐそこまで来ている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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