身に覚えのない罪に対して容赦ない罰
追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
(旧題:剣と弓の世界で俺だけ魔法を使える~最強ゆえに余裕がある追放生活~)
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広場に残った村人から敵意を向けられたエルド・スターンは、慌てて俺を指差した。
「こ、こいつが悪い! 俺の息子であるテリヒトの攻撃を避けるから!」
しかし、村人の態度は変わらない。
追い詰められたエルドは、左腰に下げていたロングソードを抜く。
「む、息子の仇だ! ノダック村を燃やした罪も、今ここで――」
「スターン! お前はもう、この村の代官ではない!」
ジャコメオ・ヴァルガ子爵の宣言で、エルドはビクッとする。
ガランガランと、剣が落ちた。
恐る恐る、ジャコメオのほうを向く。
「そんな! い、今すぐに、こいつを叩きのめすので――」
「貴様たち親子が選べるのは、私についてくるか、この村に残るかだ!」
ぐるりと見回すも、殺意を込めた視線だけ。
俺を見たときには、中指を立ててやった。
すると、妙齢の美少女であるマリカ・フォン・ミシャールを見つめる。
助けてくれそうなのは、もう彼女ぐらい。
(元父親ながら、ひでーな……)
騎士爵からロリコンにジョブチェンジしたアホを見ていたら、マリカは顔をそむけたまま。
「た、頼む! 俺を雇ってくれ! 騎士爵でいい!」
恥ずかしがっていると思ったらしく、荒々しい足音でマリカに迫る。
仕方ないので、足を払ってから空中コンボでも決めようか? と思ったが――
ジャコメオの護衛らしき男が、ロングソードを抜いた。
そのまま、エルドと正面から向き合う。
剣気を感じたようで、何も持っていないエルドは立ち止まった。
すかさず、ジャコメオが告げる。
「スターン? 新しい息子と一緒に来るか、それとも、村に住むか?」
「……連れて行ってください」
うつむいたエルドは、降参した。
最後まで、傲慢なまま。
――数時間後
俺とマリカは、ジャコメオ・ヴァルガ子爵にフォローされて、近くの街に辿り着いた。
でなければ、俺にも飛び火しそうな勢いだったから……。
マリカの金で食事をしつつ、話し合う。
「元家族だけど、勘当されたから別にいいよ……」
頷いたマリカが、自分の意見を述べる。
「スターンを代官にして、テリヒトを連れてきたのは、あの男! いかにも善良な演技で、上手く誤魔化したものだわ……」
俺がいたとはいえ、諸悪の根源はヴァルガ子爵だよな?
言われれば、納得。
「それはそうだが……。あの2人は、どうなると思う?」
パスタをもぐもぐしたマリカが、推理する。
「どちらも売られる! あの村を復興させるだけの元手にはならないだろうけど」
生かしておいても害になるだけ、と続けたマリカに、やっぱりこいつは貴族だな、と感じた。
「俺の知らないところで勝手にくたばるのなら、それでいいか……」
◇
「野郎ども! しっかり働けよ!」
傭兵団のボスが、馬上で叫んだ。
徒歩のエルド・スターンは、退職金の代わりに持ってきたアーマーで、剣を抜いた。
一山いくらで売られて、今は金のために殺して奪う連中の1人。
少し離れた場所には、同じように武装した男どもが固まっている。
やがて、正面からぶつかり合い、満員電車のような状態で殺し合いが始まった。
金属同士がぶつかり、怒声や血が飛び交う。
けれど、乱戦になった瞬間に、味方だけのはずの真後ろからアーマーの隙間を通して刺された。
「ぐほっ!?」
理解できないエルドに、誰かの声が説明する。
「てめー、この前にせっかく捕まえた女と楽しむのを邪魔したろ? 俺たちみたいな傭兵に、騎士みたいな考えはいらねえ! その他にも、いちいち鬱陶しいんだよ! そのアーマーや剣は、俺らで有効活用してやるから、安心してくたばりやがれ!」
地面に倒れ込んだら、短刀で首を搔き切られた。
もはや助からないエルドは手を伸ばすも、味方の数人に装備をはがされ、そのまま放置された。
お互いに金で殺し合うため、傭兵同士のぶつかり合いは本気じゃない。
死人や重傷者が出たのに、粗野な連中は慣れた動きで離れていく。
元兵士、元騎士もいるが、基本的に実力主義。
特に、他のゴロツキをまとめられる人間が重宝される。
気絶したままで運ばれた息子、テリヒトは、別の場所へ売られたようだ。
他の死体や見捨てられた重傷者と転がりつつ、エルドは息を吐いた。
「子爵の息子だから、あいつはマシなところか……。くそったれ」
すると、平民らしき連中がバラバラとやってきた。
若い女が、こちらを見る。
思わぬチャンスに、エルドは必死にアピールする。
「た、助けてくれ……」
驚いた女は、周りの人間を呼ぶ。
(今度は……畑でも耕して暮らそう。新しい女も見つけて……)
痛みに耐えつつ、希望を持つ。
やがて、若い女が両手で重そうに何かを運んできた。
治療をしてくれるのだろう、と思ったエルドは、警戒しない。
いっぽう、長い柄の先に細長い金属のくちばしがあるようなツルハシを振りかぶった女は、勢いよく振り下ろす。
「……よいしょ!」
遠心力と重力が合わさった一撃は、エルドの頭と妄想を打ち砕いた。
落ち武者狩りの村人が、生き残りを助けるわけがない。
彼らも傭兵団に襲われていて、恨み骨髄だ。
過去作は、こちらです!
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