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ミスルヒヤ王国の終焉

追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!

https://hatuyuki-ku.com/?p=4566

 フランソワーズは、デアゼー教の拠点を訪れた。


 天井が高い聖堂になっていて、古い建物だ。


 周りが騒然とする中、低身長の彼女は堂々と歩く……。


 水の都ヴァッサーシュタットにおいて観光地であるものの、アーデンティア帝国のメインストリームであるデアゼー教の中心。


 お祈りに来た信者も、怪訝(けげん)な表情を隠さない。


「どのような、ご用でしょうか?」


 いかにも武闘派の男たちに、半包囲された。


 素手で戦えるらしく、立っているだけの姿勢もプレッシャーが違う。


 足を止めたフランは、笑顔で告げる。


「水の精霊ウンディーネが、来てあげたよ? 僕に宝珠を見せて! 砂漠になるはずのここをオアシスに変えるほどの宝珠を!」


 その叫びで、礼拝堂のホールは騒然となる。


 人目がある場所で少女を殴るわけにもいかず、素手の男たちは渋い顔へ。


 すると、奥から神官と思われる正装をした数人の男が出てくる。


「フランソワーズ様ですね? ようこそ、デアゼー教の生誕の地へ! しかしながら、神聖なる場でそのような冗談は……。奥で、話しましょう」


「ハイハイ……」


 ひらひらと片手を振ったフランは、その案内に従う。


 それを見ていた礼拝者が、興味を失った。



 関係者だけが歩く通路を抜けて、宿坊と思われる空間を横目に、荘厳なホールへ。


 その中央には、立派な台座に安置された宝珠……。


「あれ?」


「そうです……。ここからは、お一人でどうぞ! 触っても、構いませんよ?」


 貼り付けた笑みの神官が、穏やかに告げた。


 しかし、フランが尋ねる。


「イシス女王でなければ、ダメじゃない?」


「よく知っていますね? ですが、見学となりますから……」


 神官が受け流すも、笑顔のフランは粘る。


「じゃ、やめておく!」


「分かりました……。イシス女王になった気分で、どうぞ」


 それを聞いたフランが、下に複雑な模様が描かれた床に足を踏み入れる。


 先ほど告げた通り、神官たちはその場に残ったまま。


 中央の台座にたどり着いたフランは、宝珠に触れた。


 その瞬間、宝珠が光り出す。


 フランの手を通して、生気を吸い取るような雰囲気……。


 すると、対応していた神官が笑い出す。


「ハハハハハ! これで、貴様は終わりだ! てっきり、ファリダから聞いているかと思えば、あっけない」


 生気を吸い取られたまま、フランが尋ねる。


「ファリダが逃げた後に、どうやって誤魔化したの?」


「ふんっ! ミスルヒヤ王国を支えてきた偉大な神官の末裔(まつえい)たる我々と比べれば、どれだけ死のうが知ったことか!」


「ほうほう? やっぱり、イシス女王の血筋は関係なかったと……」


 フランの返答に、神官たちは改めて見る。


 生気を吸い取られて衰弱するはずの少女は、ケロリとしたまま。


 1人の神官が、疑問を口にする。


「なぜ――」


 水を生み出すという、デアゼー教の奇跡。


 その根源となっている宝珠は、フランの力を吸い続けた。


 やがて、宝珠は悲鳴のような響きへ。


 見守っていた神官どもが、叫ぶ。


「やめろ! 貴様も、死にたくないだろう!?」


「お前を飼ってやる! 今回は、もう十分だ!」


 しかし、フランは伸ばした手を触れたまま。


 ヒビが入り始めた宝珠に構わず、笑顔で告げる。


「僕が許せないのは……。ミスルヒヤ王国のイシス女王をコケにしていること! 女王を敬わないことは、別にいい。でも、都合がいいところだけ利用するのは、ちょっとね?」


 苦笑したフランに対して、宝珠はヒビだらけ。


 慌てた神官どもが、口々に叫ぶ。


「それを壊せば、ヴァッサーシュタットは滅びるぞ!?」

「デアゼー教を敵に回して、タダで済むと思うな!」

「今なら、許そう!」


 肩を震わせて笑ったフランが、力強く宣言する。


「今は、僕がイシス女王だ! いいよ? お前たちがデアゼー教の幹部でいたいなら、好きにすればいい。この宝珠なしで!」


 宝珠は、一部が崩壊している。


 ようやく決心した神官の一部が、儀式魔術のような刻印がある床に走り出す。


 けれど、フランが発生させた水の渦巻きによって阻まれた。


 呪詛のように叫び続ける神官どもの声は、動き続ける水の音でかき消される。


 中心にいるフランが、この場を締めくくる。


「女王を祭り上げて生贄にしてきたなら、それに殉じなよ? 砂漠じゃ、よくあるある♪」


 さすが、砂漠のオアシスに潜伏していた反政府ゲリラ。


 容赦ない……。


 宝珠は、最後の悲鳴を上げた。


 ほぼ同時に中心から強い光を放ちつつ、水の膜で防御しているフランを除いて、全方位への散弾のように飛び散る。


「ガッ!」

「ぐうっ……」


 一部を食らったらしい神官どもが呻くも、騒ぎを聞きつけた警備によってホールの出口を囲む。


「よくも……」

「デアゼー教の聖地と知っての、狼藉(ろうぜき)か!?」


 今にも殺そうという勢いに、フランは満面の笑み。


「最後のイシス女王として、宣言するよ? ミスルヒヤ王国は完全に滅びた! 後は、好きにするといい」


 一斉に押し寄せた警備は、水をぶちまけたように消えたフランに正気を削られた。


 床に広がっている水が震えて、彼女の声。


『ハハハハハハ! 原点にして聖地が、王国の遺産にすがるだけとは! せいぜい、頑張りなよ? 数年もしないうちに砂漠へ戻るだろうけど』


 血相を変えた男が床にある水たまりを踏むも、それっきり、フランの声は消えた。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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