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剣を捨てて殴ったら人生が変わった!  作者: 初雪空
第一章 追放というか勘当された
6/19

脳筋に知識のアップデートはなく、取り返しもつかない

追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!

(旧題:剣と弓の世界で俺だけ魔法を使える~最強ゆえに余裕がある追放生活~)

https://hatuyuki-ku.com/?p=4566

 元父親のエルド・スターンがマジックソード学院から付き添ったマリカ・フォン・ミシャールに目をつけたことで、空気が一変した。


 引きつった笑みのマリカは、ようやく自己紹介する。


「私は、マリカ・フォン・ミシャール伯爵令嬢です! 今のお話は、聞かなかったことに――」

「ハッハッハッ! 軽々しく爵位を言ったら、いけないよ? 伯爵家に、君のような令嬢はいない」


 エルドが、頓珍漢なことを言い出した。


 …………


 ああ、そうか!


 こいつ、自分の派閥をまとめているほうの伯爵だと思っているのか!


 騎士爵なんて、目の前の敵を倒せば、それでいいからな……。


(男爵なら、こういった話は最初に叩きこまれるだろうが)


 そう思いつつ元母親のナディネ・スターンを見れば、口を出す気はないようだ。


(夫のエルドに逆らえば、自分が困るからねえ? こんなもんか!)


 こんなアホでも、ノダック村の独裁者だ。


 マリカが激怒した場合、俺も困る。

 なぜなら、最寄りの大きな街までの旅費を出してもらう必要があるから。


(筋肉バカの騎士爵が騒いでも、相手にされない。口約束だけで、とにかく帰るか?)


 今度は、俺が視線を送った。


 それを受けたマリカも、うんざりした表情から同じ意見のようだ。


「スターン(きょう)? その件は、持ち帰って検討いたします。お父様に相談しないと……」


 翻訳すると、お前の暴言をミシャール伯爵に報告するから、首を洗っておけ。


 しかし、貴族の言い回しが通用しないエルドは満面の笑み。


「そうか、そうか! うむ! お前の父親にも言わないとな! ナディネ、彼女の婚礼衣装などを準備しておけ」


「えっ! あの……」


 状況を理解している元母親は、オロオロする。


 マリカの父親であるミシャール伯爵が知ったら、貴族としての派閥が異なっても騎士爵なんぞ一瞬でクビだ。


 そもそも、騎士爵は貴族ではない。


 代官として赴任すれば、立場上は貴族ってだけ。


(何なら、物理的に首が飛ぶ……)


 向き合って座る俺やマリカを交互に見るも、フォローなし。


 マリカは怒りながら微笑んでいるし、たった今、勘当された俺は他人だ。


(元父親と、せいぜい元気でな?)


 復讐する気はないが、アホの肩を持って追い出した人間にすがるな。


 エルドを潰すと決めたマリカは、立ち上がった。


「では、失礼いたします……」


「せっかくだから泊まっていけ、と言いたいが……。早く、父親に言わないとな!」


 意味深な笑みを浮かべたマリカが、それに応じる。


「ええ……。楽しみになさってください」


 もはや、マリカが自分の息子の嫁になったかのような扱いだ。


 相手にされなくなった俺も、立ち上がる。


 旦那を横目に近づいてきたナディネが、話しかけてくる。


「ティル! お父さんに――」

「言いたければ、自分で言えよ? 他人になった俺に、すり寄ってくんな」


 自分を養っているエルドに良い顔をしながら、必要な事実は他人に言わせてヘイト回避ってか?


 冗談じゃない!


「だって……」


 立ちすくむナディネを放置して、屋敷の外へ出れば――


 村の若い奴らが剣を振っていた広場に、馬車が停まっていた。


(家紋が描かれている……。貴族らしき中年男と、その息子……にしては余所余所しいな?)


 貴族に目をつけられないよう、村の連中は遠巻きに囲んでいる。


 それに対して、マリカと一緒に歩いているエルドは得意げに歩み寄る。


「ジャコメオ・ヴァルガ子爵! ちょうど、良かった! 俺の息子になるテリヒトにぴったりの嫁を見つけましたぞ?」


 敬語と言いにくい呼びかけに、ジャコメオは顔をしかめた。


 しかし、マリカを見て、驚いた顔へ。


「ほう! 村に、これほどの美人がいたとは……。良かったな、テリヒト? 六男として子爵家を出ても、楽しい生活になりそうだ」


 少し間が空いたことで、このオッサンが愛人にしたかった雰囲気だが、ここは昼の村の中。


(大勢に、注目されている……。追い出す息子から奪えば、悪い噂になるよな?)


 貴族にしては子供を作りすぎで、愛人がいるのだろう。


(空きが出たとはいえ、六男にも仕事を紹介するか! 面倒見はいい)


 俺が傍観者になっていたら、テリヒトと呼ばれた男子はニヤニヤする。


「はい、父上! ……ヴァルガ子爵」


 マリカの正面で向かい合い、貴族の令息らしい会釈。


「では、レディ……。エスコートさせていただきます」


 テリヒトが、ぎこちない動きでマリカの片手を取ろうとしたら――


 パアンッ!


 スナップを利かせたビンタで、テリヒトが差し出した手は弾かれた。


 思わぬ展開に、目を丸くする一同。


 手を払ったマリカは、俺を指差しつつ、宣言する。


「私は、あの方と婚約しています! 手に触れたければ、彼を倒してからにしてください」


 恥をかかされたテリヒトは、痛む手をさすりつつ、驚く。


「なっ!?」


 ジャコメオは、無表情に。


「どういうことかね、スターン卿?」


「いいいい、いえ! これは、彼女なりの冗談で――」

「冗談ではありません」


 マリカの返事で、逃げ道は塞がれた。


 俺がテリヒトと決闘する流れも……。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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