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第55話 フランちゃんの沸点は、ものすごく低い

追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!

https://hatuyuki-ku.com/?p=4566

 帝都ロイトフェーンの晩餐会。


 主人とされたソフィア・デュ・ロシュフォールに付き添うフランソワーズは、立ったままで周りを見る。


 地味目だが、これまで着たこともないドレスで、フワフワした感じ。


(こちらを見ては、目を逸らす……。気分が悪い!)


 視線を戻せば、ソフィアは行列を作っている先頭と話しているだけ。


 少しばかり抜けても、気づかれない。


 自己完結したフランは、1人で見て回り、並べられた料理とドリンクを飲み食い。


 外国の使節団を迎えているだけあって、どれも美味!


 それでなくても、砂漠のオアシスで食うに食わずだったフランにはご馳走だが……。


「今いいですか、フランソワーズさん?」


 聞き覚えのある声に、振り向く。


 同じように着飾っている、聖女リナだ。


 フランは、口をモグモグさせながら尋ねる。


「何?」


「デアゼー教にいる水の精霊ウンディーネ様が、お呼びです……。ご足労くださいますよう、お願い申し上げます」


 困った表情をしていることから、メッセンジャーを強要されたようだ。


 見れば、隣にいるはずの巨乳娘がいない……。


「あー、ハイハイ! オッパイちゃんが、人質なの?」


「シャロは、ウンディーネ様のところにいます」


 人質のようだ。


(あいつ、ティルに色目を使っているから、始末したいんだけど……)


 彼に嫌われたら、泣くに泣けない。


 土を操るソフィアや風を支配しているマリカ・フォン・ミシャールが、真実を告げるだろう。


 つまり、選択の余地はない。


 ため息をついた後で、皿を近くの長テーブルに置く。


「今回は助けるけど、当てにしないでね?」


「申し訳ございません……」


 深々と頭を下げたリナに、フランは頭を切り替える。


(知らない間に殺されました、凌辱されましたじゃ、ティルに言い訳できないし……。見ておいたほうが、いいか!)


 ソフィアは忙しくて、役立たず。


 ここで点数を稼いでおけば、良い印象を与えられるだろう。


「気が変わったよ! 何とかしてあげるから、ティルにちゃんと言ってね?」


「は、はいっ! ありがとうございます……」


 急なことで、リナは困惑しているようだ。


 しかし、千載一遇のチャンス!


「ところで、ソフィアさんは?」

「……いいから! 呼んでいるんでしょ?」


 ソフィアと共同では、意味がない。


 焦ったフランソワーズに急かされ、2人でデアゼー教がいるエリアへ。



 いかにも聖職者といった服装の一団。


 鮮やかなピンク色の長髪、涼しげな水色の瞳をした女子は、フランソワーズを見据えた。


「あなたが、水の精霊ウンディーネを僭称(せんしょう)している方ですか?」


「お前がね?」


 言い返したフランに、溜息をついた女子が自己紹介。


「私は、ルトリシアと申します……。アーデンティア帝国を導くデアゼー教における、水の精霊ウンディーネ! 帝都の聖堂で日々、お祈りを――」

「話の途中で悪いんだけど……。リナとシャーロットを返してくれない?」


 フランの率直な物言いに、ルトリシアは首を振った。


 代わりに、側近らしき男が答える。


「その2人は、皇帝陛下より預かっています……。聖堂にお越しいただければ、話をできるよう取り計らいますので」


 慇懃無礼に言いつつも、探るような視線。


 反政府ゲリラとして修羅場をくぐっているフランは、誘い込んでの殺害と、読む。


 その時に、ソフィアが駆け付けた。


「フラン? わたくしの傍を離れないよう、言いましたよね?」


 すると、暗殺したがっている男が作り笑顔。


「これはこれは……。ロシュフォール様のお時間をいただくわけには、参りません! このお話はまたの機会に――」

「何のことでしょう? デアゼー教の上級司祭のお話となれば、確認しておきたく存じます」


 張り付けた笑みの男が、受け流す。


「いえいえ、たいした話ではございません……。滞在される場所へ、後日に連絡いたしますので! 失礼します」


 不機嫌なまま、そっぽを向いていたルトリシアを連れていく。


 周りの聖職者、信者たちも、静かに立ち去った。



 ――数日後


 スベクル共和国の大使館に住んでいるソフィアは、忙しい。


 毎日のように会議をして、アーデンティア帝国の貴族、商会、共和国の互助会との調整。


 ソフィア宛だが、デアゼー教からの封書を見つけたフランソワーズは、勝手に開ける。


 一通り読めば、聖女リナとシャーロットは水の都ヴァッサーシュタットへ移送されたそうだ。


(ソフィアが気づく前に!)


 手紙を放り出したフランは、私物をまとめると、ヴァッサーシュタットへ向かう蒸気バスへ乗り込む。


 運賃などを払うために、ソフィアの名義でお金を調達した。


 そのうち、返す。



 大勢で賑わうバスは、整備された土道を突き進む。


 風光明媚な景色も手伝い、座っているフランは居眠り。



 フランが気づいたら、真っ暗な場所にいた。


 手足を縛られていたから、空中の水分によるウォーターカッターで縄を切る。


 ごそごそと動けば、床から振動が伝わってきた。


 どうやら、蒸気で動く車のようだ。


 外に出られそうなところを、同じく切った。


 明るい空間に出てみれば、まさに自分が乗り込んだ蒸気バスだった!


 驚く乗客の一部は、取り押さえようと飛び掛かって――


 運転手を含めた全員の頭が水球に包まれ、ゴボボと、溺れ出す。


 くぐもった声を上げつつ、両手で水球を剝がそうとする面々。


 それらを消したフランは、笑顔で告げる。


「とりあえず、運賃を返して? ……あと、僕のお金を盗ったやつは全て出せ」


 自分の服の上からペタペタと触ったフランは、現金を奪われたことを知り、さらに激怒した。


 さあ、生き延びろ!

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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