やっぱり愚息が悪いな! 責任を取らせよう!
追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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――精霊が目覚めた時に、世界は滅びる
ララ・リーメルトは、聖女リナの発言を思い出す。
(世界の守護者か……。マリカちゃんは、浮世離れしたところがあったけどさ?)
風の精霊、シルフィード。
サーヴァス会戦でアーデンティア帝国を一蹴したのも、そのシルフことマリカだと思われているが――
(実際には、ティル君だ! マリカちゃんの言動から、あの子に加護か、似たような力がある?)
マリカが聖女リナの護衛をやめ、王都へ舞い戻ったことで、飛空艇を撃墜した。
真実は、こうだ。
ララが考えをまとめる間にも、謁見の間は揺れ続ける。
すると、玉座に座っている国王が叫ぶ。
「分かった! リーメルト隊長が帝国に通じて裏切った情報は、誤りだったようだな?」
さっきと正反対の発言をした途端に、揺れがやむ。
密かに息を吐いた国王が、全員の注目を浴びたまま、ゆっくりと話す。
「城を壊されては、かなわん! 風の精霊シルフィードとの関係が分かっただけで、十分……。サーヴァス平原での大敗の原因は、やはり総指揮官で捕虜となった愚息にあったか」
ティエリー・レ・サクリフィ王子が、隣で腰を浮かせる。
「ち、父上!?」
「何を驚いておる? 貴様が主導しての会戦だったであろう?」
手の平がロボットのように回転し続けている国王に、げんなりするララ。
(ここまでくると、逆に清々しいね? ボクとの会話もなかったことにする気か!)
しかし、助かったのも事実。
先ほどの発言だけで、不敬罪による処刑。
再び片膝をついたララに対し、壁際にいるギャラリーの中から反論する声。
「お、お待ちください、国王陛下! ティエリー王子に、今一度のチャンスを! シルフィード様が見目麗しい乙女ならば、王子殿下とのご婚約がふさわしいかと! これは敗戦ではなく、苦境に陥った殿下をお助けするために降臨されたシルフィード様との恋の物語でございます」
どうやら、王子の派閥らしい。
「よくも、言えた……」
「ティエリー王子のせいで、どれだけの被害が出たと」
「我らの教義に、ズケズケと……」
白い目で見る貴族、あるいは、文官や武官だが、それに同意する連中も。
「素晴らしい、お考えです!」
「マジックソード学院に足を運ばれた王子殿下を見初めたのでしょう」
ワイワイと騒がしくなりかけた時に、カンカンと、国王の侍従が鳴らした。
静かになる。
それを確認した後で、国王は口を開いた。
「色々な意見があろうて……。余は、臣下の考えを否定しないぞ? いずれにせよ、多くの犠牲が出た! リーメルトの嫌疑が晴れたゆえ、二旗隊の隊長を続けることを許す。副隊長も同様とする! 会戦に出た一旗から三旗に休暇を取らせると同時に、他の隊で王都の警護と防衛を行え! みな、大変だろうがよろしく頼むぞ?」
ハハッ! と、畏まる面々。
にやりとした国王は、独り言のように付け加える。
「ティエリーが風の精霊シルフィードに求婚したければ、すればいい……。だが、余は中立であり、今の時点ではティエリーが責任を取るべきという考えである。二旗の隊長と副隊長は、下がれ」
途中から、風の精霊と見なされたマリカ・フォン・ミシャールの争奪戦へ。
誰もララを糾弾せず、その気もない。
謁見の間を後にしたララに、さっそく売り込んでくる奴ら。
「リーメルト様! ミシャール伯爵令嬢をご紹介していただきたく――」
「悪いけど、疲れているんだよ……。二旗の立て直しがあるから、他の人も書面で申し込んでくれ! あとで返答する」
その宣言で、金魚の糞みたいにゾロゾロとついてきた連中が散る。
「承知しました! では、後ほど……」
「あなた様の会戦における勇姿、ぜひ拝見したかった! それでは」
調子のいい社交辞令を並べつつ。
呆れた副隊長のナスターシャ・フィルスが、奴らの背中を見ながら、ぼそっと呟く。
「何を考えているのでしょう?」
「……勝ち馬に乗ることだよ! 今は、マリカちゃんに乗ることかな?」
唐突な下ネタだが、ナスターシャに言い返す気力はない。
「とにかく、二旗の現状把握ですね……」
山のように届いた封書を積んだまま、2人は部隊の立て直しに明け暮れた。
手のひら返しで、また国賊になりかねない身。
封書を開けて、斜め読みする時間すら惜しいし、自分たちを見捨てた奴らの相手をする気もない。
その一方で、王都に二旗隊がサーヴァス平原で支えたことの事実が伝えられ、庶民も手の平を返した。
他の勢力も、降って湧いた風の精霊を巡り、慌ただしく動き出す。
しかしながら、王子派閥の貴族の屋敷では、奇妙な現象が起きていた……。
――王都にある屋敷の1つ
風が吹かない。
そうなったら、どうなるのか?
平たく言えば、サウナと同じ状態になる。
臭いは籠もり、蒸発した水が滞留することで、耐えがたい環境が続くのだ。
滞在している当主は、ダンッと、肘掛けを叩いた。
「ええいっ! 今日もか!?」
立ったままで控えている執事が、頭を下げた。
「申し訳ございません、旦那さま……」
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