2人のサイズを足してもシャーロットに及ばず
追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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――アーデンティア帝国の野営陣地
技官の制服を着ている若い女が、ない胸を張っていた。
紫色の髪はロングで、無造作に2つのお下げ。
しかし、年上のお姉さんといった感じ。
青みがかった紫色、いわゆるヴァイオレット色。
IDによれば、イヴリン・リュトヴィッツ。
見た目通りの落ち着いた声で、調子に乗る。
「ハーハッハッ! 見ましたか、ベティさん? 私が開発した新型の蒸気機関を! おかげで、戦車による蹂躙と、高速の車による前線突破!」
巨大な建物を思わせる動力は高圧のスチームで動き続けて、それぞれに伸びているホースのような物体で伝わっているようだ。
聞いているのは、ベティ・フォン・トロッケル。
同じく技官で、ピンク色のロングをそのまま靡かせ、ピンク色に見える淡い赤目。
お姉さんのイヴリンに対し、ロリの可愛らしさ。
気だるげに見上げて、突っ込む。
「せやなー! ウチらの勝ち……。味方がサクリフィ王国軍のVIPを確保してきたら、サクッと退こうか?」
「えっ? このまま、王都まで進軍するんじゃ――」
「ないのは、あんたの胸だけにしとき! こんな馬鹿でかい蒸気機関、どーやって運ぶん? ネタが割れていないから王国軍は崩れたけど、ウチらだって余裕があるわけじゃない……。連続稼働で爆発せんとは限らん! 繋げているホースだって、いつまで持つやら」
ポカンとしたイヴリンは、頷く。
「あ、はい……。というか、胸でいじるの止めてくれません?」
「考えとく! イヴ、戦車部隊の中央が崩れた! 非常警報! 護衛はとっとと動いて!」
双眼鏡を覗いていたベティの叫びで、周りの兵士が慌ててサイレンを鳴らし、信号弾を上げた。
ウゥウウウウッ!
その音が続く中で、色付きの煙が上空へ伸びていく。
遅れて、イヴリンも双眼鏡を覗き、前に進軍していたはずの戦車部隊で中央だけ綺麗にないことを知る。
「うそっ!? 王国軍にも秘密兵器が? 非戦闘員へ告げる! 退避、または自衛の武器を持ってください!」
その命令で、全員がマスケット銃やソードを持つ。
(蒸気機関をやられれば、前線に突出している部隊が丸腰に……)
退けないイヴリンは、士官用のリボルバーを抜く。
どうやら、一部には火薬式の銃もあるようだ。
(護衛の部隊で止めつつ、増援が来るまで――)
その時に、主戦場の端に展開していた部隊が一斉に発砲する音。
どうやら、正体不明の敵が射程に入ったらしい。
「やりました?」
「……フラグ立てるの、やめい!」
可愛らしい声で叫んだベティは、銃口を下へ向けたリボルバーを両手で持ちつつ、敵がどうなったのかを探る。
スチームによる動きで、耳がおかしくなる轟音ばかり。
ほぼ、視界に頼っている。
護衛の部隊や、それ以外も、左右を見回す。
「いたか?」
「……見つからん!」
「やったんじゃないか?」
「死体か残骸を見つけるまで、油断するな!」
指揮官の叫びで、改めて全員による捜索……。
「上だぁあああああっ!」
誰かの絶叫で、残らず上空へ視線を移した。
小さな点だった物体は、重力に従って加速しつつ、その姿をさらけ出す。
地上で立つように足から落ちてきた、ティル。
ベティは、にやりとした笑顔を見た。
「えっ……」
だが、イヴリンの叫びで我に返る。
「あぁあああっ! いや、待って! そこダメ! ダメなのぉおおおっ!」
状況が違えば、Hなセリフだ。
しかし、落下スピードのままに落下した少年は、お姉さんの弱い部分ではなく、近づいただけで死にそうな高温スチームを発生させている建物のような動力部へ右拳を叩きつける。
生身の人間が出したとは思えない、金属がひしゃげる音は、その場にいた全員の耳を麻痺させた。
でも、それだけに留まらない。
イヴリンはとっさに信号ピストルを空に向けつつ、“無力化された” という色を打ち上げた。
少しでも聞いてくれれば、と思いつつ、自身も夢のような感覚で絶叫する。
「総員、撤退ぃいいいいいっ!」
次の瞬間、上から大きく凹んだ動力機関は爆発した。
高温スチームが暴走すれば、それは立派な兵器。
外側へ広がった爆風に吹き飛ばされつつ、イヴリンは気を失った。
――数時間後
屋根のない軍用車が、4つのタイヤで走っている。
「んっ……。ここは?」
イヴリンは、体に伝わる振動で目覚めた。
上体を起こせば、前の座席でハンドルを握っているベティが振り向く。
「気がついたか! 良い話と悪い話があるでー!」
「良い話からで……」
前に向き直ったベティは、バックミラーで確認しつつ、話し出す。
「ウチらは助かった! 少なくとも、命はな……。帝国軍は動力を失い、総崩れや! 王国軍もボロボロだから、追撃は今のところない」
「そうですか……。悪い話は?」
顔に縦線を入れたベティは、端的に言う。
「その蒸気機関をぶっ壊した張本人が、これに乗っとる」
「ああ、そうですか……。え゛っ?」
反射的に応じたイヴリンは、初めて人の気配に気づいた。
ギギギと顔を向ければ、そこには退屈そうな少年、ティルの顔。
「よっ!」
「ギャアァアアアッ!」
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