人生では、何が役に立つか分からない
追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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周りは、サクリフィ王国軍ばかり。
(見るからに、偉そうな奴ら……)
騒がしく動いている人々を横目に、俺たちは天幕の1つに。
立ち止まって振り返る、デストロイヤー騎士団の隊長。
丸いゴーグル2つが俺たちを見たまま、告げる。
『ここまでだ! お前らの装備は、回収させてもらうぞ?』
装甲に覆われた人差し指が、同じ格好をしている俺とシャーロットを順番に示した。
「分かっている」
「……礼は言っておくわ」
『騒ぐなよ? 手伝うだけだ』
『同じく』
ガシャガシャと隊長の部下2人が入ってきて、装備を外すのを手伝う。
俺たちが騒がないよう、背後から声をかけてきた。
元の服装に戻りつつ、俺は正面に立っている重装甲の騎士を見る。
「こいつを餌に、王子へ近づきたい……。それができる服装はあるか?」
手伝っている2人が、驚く気配。
いっぽう、隊長が肩を震わせる。
『ククク……。そうきたか! あいつは、その巨乳にご執心だったからな? 少し待て』
顔が見えない隊長は、片手を向けた後で、天幕から出て行った。
じきに、ドゴッと殴る音。
ズルズルと引きずる音と共に、隊長が戻ってきた。
『そら! エレメンタル騎士団の制服だ! サイズ違いは、我慢しろ』
ドサッと、気絶している男が放り出された。
白をベースにした、儀礼的な平服だ。
一目で、上の騎士だと分かる。
外した重装甲を抱えた奴らと共に、隊長は出て行く。
『じゃあな! お前たちに幸運があれば、連れ出せるだろう……』
ガシャガシャと、人型の死神が立ち去った。
残された俺は、急いで倒れている男の騎士服を剥ぎ取りつつ、ボロ布を口に噛ませる。
マジックソード学院の知識で着直しつつ、男を縛り付けているシャーロットに言う。
「シャロ? お前をティエリー王子へ捧げる体で、奴に近づく。聖女リナも、その近くにいるだろう! いなくても、人質にできる」
思わず反論しかけたシャーロットは、しぶしぶ頷く。
「ええ……」
気絶した男が見つかれば、その制服を着ている俺は言い訳できず。
堂々と天幕を出て、両手を縛った縄を持ったままでお散歩。
近くにいた騎士の見習いと思われる少年に、声をかける。
「おい、貴様! ティエリー王子殿下は、どこにいらっしゃる?」
「……な、何のご用でしょう、騎士さま?」
わざとらしく首を振った俺は、居丈高に命じる。
「誰が、聞き返せと言った? 貴様は王族なのか?」
「……い、いえ! 失礼しました! 殿下は司令部にいるはずです!」
雰囲気に呑まれて、敬礼した少年。
近づいてきた騎士の男が、声をかける。
「何だ? 今は忙しい――」
「こ、こちらの方が、王子殿下を探しておられるようで……」
俺のほうを見た男は、少年が仕えている騎士か、同じ騎士団のようだ。
「名前は? 用件も聞かずに案内することは――」
首をかしげている奴に、毅然と言う。
「私は、殿下の特命で動いている! 貴殿こそ、覚悟されよ! 所属と名前をお伺いしても?」
「も、申し訳ありません! こちらです……」
よし、通った!
奴隷になったシャーロットを引き連れ、周りの注目を集めつつの練り歩き。
やがて、騎士の男は立ち去る。
(ここからだ……)
立派な天幕が張られていて、簡易的な柵で囲われているエリア。
組み立て式と思われる建物があり、一兵卒の実家よりも快適そうだ。
立哨をしている騎士の1人が、俺たちをジロリと睨む。
「何の用だ?」
「ティエリー王子殿下の特命により、この女を連れてきた! お目通りを願いたい」
しかし、今度は勝手が違う。
相手は、王族に仕えている近衛騎士、あるいは、親衛隊だ。
「聞いておらん! 殿下がその女をご所望であれば、ここで預かる!」
「申し訳ないが、私の任務だ……。通してもらおう」
俺の言葉で、武装した近衛騎士2人が立てていたハルバードを両手で構え、こちらへ向ける。
「お飾りの騎士団もどきが! あまり、調子に乗るなよ?」
「……王都に帰って、神殿の中で震えてろ」
周りにいた連中も、ざわつく。
前に歩み出た俺は、ハルバードの先に自ら当たる。
「いいだろう! そこまで言われては、私も退けぬ! やればいい! 我らエレメンタル騎士団を敵に回す気があるのなら!」
頬に当たったことで、血が流れる。
そのプレッシャーに押された近衛騎士は、わずかに下がった。
「チッ! この狂人が……」
「おい、マズいぞ?」
同じくハルバードを突きつけている同僚の声で、毒づいた男も見回す。
あまり好意的ではない視線が、2人に集まった。
同じような騎士服を着ている奴らは、敵意を向けている。
奥から、慌てて駆け寄ってくる男が1人。
「何をしている!?」
ハルバードを立てて、敬礼する2人。
「こ、この者が、王子の特命だと!」
「現在、詳しく調べて――」
周りを気にしている男は、首を横に振った。
「なら、入ってもらえ! これ以上、騒ぎにするな!」
「「ハッ!」」
再び敬礼した近衛騎士2人を後目に、俺はシャーロットを歩かせつつ、王族がいるエリアへ。
(マジックソード学院にいなければ、この真似事も無理だった……)
俺の魔法剣は、落第だった。
しかし、多くの貴族の子弟と過ごし、騎士らしい振る舞いを見聞きしたことは、無駄ではなかったようだ。
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