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剣を捨てて殴ったら人生が変わった!  作者: 初雪空
第三章 サーヴァス会戦
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私に、死んだ魚を愛でる趣味はありません……

追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!

https://hatuyuki-ku.com/?p=4566

二旗(にき)に請求してくれ」

「……畏まりました」


 ララ・リーメルトの宣言で、俺とシャーロットは夜会に出られそうな正装になった。


 貴族が出入りするような店を出て、馬車で乗り付けたのは、同じく高級店。


 広い個室に案内され、丸テーブルを囲む。


 お互いに自己紹介を済ませれば、ナスターシャ・フィルスが頭を下げた。


「知らぬ事とはいえ、大変失礼いたしました……」


「あなたの対応は、当然でした」

「私は、気にしていません」


 俺とシャーロットが許したことで、柔らかい雰囲気になった。


 ロリロリしたララが、興味深そうに俺を眺める。


「君が、マリカちゃんの想い人……。で、そちらが恋人?」


 笑っているが、目は真剣だ。


 そのプレッシャーを受けたシャーロットは、身を固くした。


「いえ、その……」


「瀕死だったので、やむなく助けました。そのような威圧は、止めてくれませんか?」


 俺の指摘に、ララは表情を変えた。


「へえ~? そのオッパイ、ずいぶん気に入ったようだね? マリカちゃんの好意を知らないと? 伯爵令嬢と並び立つには、そんな好き勝手に――」

「やめてください」


 当の本人からのストップで、ララは黙った。


 マリカ・フォン・ミシャールは、ララを見据えたまま、言い切る。


「私に、死んだ魚を愛でる趣味はありません……」


 息を呑んだララは、マリカを見た。


「君は……いや、止そう! すまなかったね、2人とも?」


「いえ」

「…………」


 雰囲気が悪くなったが、マリカは問いかける。


「じきに、アーデンティア帝国との戦争です! ティルは、どうするつもり?」


 全員の視線が、集まった。


「俺か……」


 彼女たちの視線から逃れるように、天井を見る。


「どうしたものかね? 少し、席を外す」


 立ち上がり、トイレに行くことを宣言した。


 そのまま、夜風に当たる。


「……何の用だ?」


 俺が呼ぶと、ガシャリと金属のすれる音。


『お前たちに、良い話を持ってきた……。聖女リナを連れ出すための』


 くぐもった、男の声。


 そちらを見れば、暗がりから重装甲の騎士が出てきた。


 丸いヘルメットに、顔を覆うだけのマスクに丸い眼鏡のような目。


 グポンッと、光った。


『驚かないのだな?』


 俺が戦った、デストロイヤー騎士団だ。


 今は武器を持たず、敵意も感じられない。


「いずれ、相対するとは思っていた」


 肩を震わせた死神は、話を続ける。


『ククク……。今は、やらんよ! まさか、今連れ出すとは考えていないな?』


「二旗の隊長、副隊長とも、殺し合いになるだろう! 王都に集まっている戦力の全てから逃げ切る自信はない。あんたを含めてだ」


 愉快そうに笑った男は、思わぬ提案。


『それは、そうだ! 物は相談だが、俺たちの仲間にならないか?』


 眉をひそめた俺に、顔を見せない男が説明する。



 席に戻れば、女たちが不安そうな顔だった。


 気を遣われたから、笑顔で応じる。


 別れ際に、全てを察したようなマリカが俺を見た。


「ティル? あなたの好きにして……」


「俺は、お前が何であろうと、態度を変える気はない」


 目を見張ったマリカは、やがて呟く。


「ありがとう……」


 背を向けたマリカは、馬車に乗り、立ち去った。


 近寄ったシャーロットに、話しかける。


「よく、我慢した」

「……ここからリナと逃げ出すのは、無理だもの」


 頷いた俺は、歩きながら説明する。


「策がある! リスクもある……。俺は乗るが、お前はどうする?」


 全てを聞いたシャーロットは、悩み出す。



 ◇



 俺とシャーロットは、デストロイヤー騎士団の重装甲を身につけていた。


 ガシャリと音を鳴らしつつ、前へ歩く。


 周りの騎士、兵士たちは、恐れをなして退いた。


 顔を見せていないことから、俺たちの正体はバレない。


 先導する隊長は、前を見たままで言う。


『聖女リナに手が届くところまでは、案内しよう……。あとは、お前たち次第だ』


『どうして、こんな真似を?』


 その質問に、立ち止まった隊長が振り向く。


『俺は、ティエリー王子を好かぬ……』


 前を向いた隊長は、再び歩き出す。


 俺たちも、その後に続く。


(ティエリー王子と、何かあった? もしくは、敵対する派閥か)


 やつに大恥をかかせるか、失脚させたいのだろう。


 いずれにせよ、このチャンスを活かすだけ。


(とはいえ、ここはサクリフィ王国軍の中心……。リナを連れて脱出するのは、不可能に近い)


 マリカたちと会った夜、この隊長から提案された。


 聖女リナがいる場所まで案内してやろう、と……。


 罠?


 そうだろう。


 罠でなくても、これは破滅する可能性が高い。


 しかし、隊長から言われずとも、これが最初で最後のチャンスだ。


(でなければ、リナに近づくことすら無理)


 そして、他にも懸念がある。


『帝国は、どうして寡兵(かへい)で戦を?』


 再び立ち止まった隊長は、顔が見えなくても困惑した様子で答える。


『それだ……。俺も、それが気掛かりでな? 奴ら、何か企んでいるぞ?』


 前を向きかけた隊長は、俺に向き直る。


『貴様らが助かるとすれば、それだろう……。お前には、指揮官か参謀の素質があるな?』


『まだ命があれば、考えてみます』


 俺のジョークに、隊長は肩をすくめた。


 今度こそ、聖女リナがいる場所へ向かう。


 いよいよ、サーヴァス会戦が始まるのだ。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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