女たらしのイケメンと説教ジジイと馬鹿王子
追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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サクリフィ王国の王都、ウルティマナ。
目立つ場所にある城の謁見の間へ、二旗隊の隊長であるララ・リーメルトが足を踏み入れた。
(あの馬鹿王子に会うためかと思うと、気が重い……)
重く感じる正装で、彼女のトレードマークである大剣ではなく、儀礼的なロングソードを腰に下げている。
すると、先にいた男2人が、こちらを向く。
1人は若い男で、金髪碧眼のハンサムだ。
動きやすい短髪だが、オシャレ。
こちらを見ている2人に会釈したララは、離れた場所で待とうと――
「ワシには、挨拶をせんのか?」
白髪の老人が、絡んできた。
「どうも、ブレマー隊長……。今、会釈をしたつもりだけど?」
わざとらしく溜息をついた爺は、説教を始める。
「お前は、年長者への敬意を知らん! だいたい、レディであるべき女が――」
「歴戦のブレマー隊長がそのように叱っては、リーメルト隊長が委縮するだけでしょう?」
近づいたイケメンが、取り成した。
それを見た爺は、息を吐く。
「バスティエ隊長……。貴殿は、少し甘すぎるのではないか?」
「じきに、王子殿下もお越しになられます! 我らの結束を疑われては、ブレマー隊長の評判にも関わりますゆえ」
「ならば、仕方あるまい……。お前は、次に会うまでに礼儀を覚えてこい! 上位とは言わぬ、下位貴族の令嬢としてのな?」
言いたい放題のジジイは、背中を向け、歩いていく。
(おーおー! 他のゴツい隊長には、顔色をうかがう癖に……)
苦笑する、ララ。
面倒なのは、あれで可愛がっているつもり、ということだ。
すると、まだ近くにいたイケメンが、話しかけてくる。
「災難だったな?」
「……助けていただき、感謝申し上げます!」
ララの一線を引いた言葉に、微笑んだイケメンも片手を振りつつ、背中を向けた。
(お前も、あのジジイの性格を読んだうえで、ボクの好感度を稼ぎに来ただけでしょ?)
一から十まで、女を口説き落とすのに計算し尽くした振る舞い。
他人を利用してララを凹ませつつ、それを助けることで恩を売った流れ。
広いホールで、ララは今すぐに帰りたくなった。
腹黒のイケメンは、一旗隊の隊長である、クロヴィス・バスティエ。
伝統に縛られずに運営を変えたうえ、実力がある者を積極的に採用したおかげで、ギフテッド騎士団の中でも精鋭となっており、クロヴィスも腕が立つ。
(腹芸ができるって意味では、宮中でも頼りになるけど……)
ララは、クロヴィスの本性を見抜いている。
(つまるところ、俺の言いなり……。上手く嚙み合っているうちは、いいけど)
その証拠に、一旗の副隊長が変わっていた。
(あれ、王女の1人だっけ? 前の女は、どうしたんだろ?)
不思議がっているララに、二旗の副隊長であるナスターシャ・フィルスが耳打ち。
「新設の部隊長という建前で、飛ばしたらしく……」
同じく小声で、ナスターシャに囁く。
「うっそでしょ!? あの子、夜も相性が良すぎて困ると、さんざんに惚気ていたのに」
クロヴィスは、己が成り上がるために、全てを捧げてきた女を捨てたようだ。
その結果、どうなるやら……。
ともあれ、他人事だ。
説教してきたジジイは、三旗隊の隊長、ヴィラデッヘ・ブレマー。
さっきのように格式と伝統を重んじている大貴族で、本人に実力はない。
完全な名誉職だ。
若く強いが、家柄などの地盤がないクロヴィスと対照的。
(今の王都は、こいつらと一緒に守るのか……)
三隊もいれば、というのは、子供の考え。
クロヴィスは、邪魔な味方を排除するため。
あるいは、自分の成果を大きくするべく、わざと救援に来ない。
ヴィラデッヘは、無能だから足を引っ張るだけ。
むしろ、介護しなければ。
(実質、うちだけかー!)
やがて、ティエリー・レ・サクリフィ王子のご登場。
3人の隊長が左右で並び、その後ろに副隊長が立っている。
立ったままで頭を下げている面々に、数段上にある上座で立つティエリーが宣言する。
「面を上げろ! 今日は、聖女のリナ・ディ・ケーム公爵令嬢をみなに紹介したい」
ララが見ると、ティエリーの傍に、ダンスホールが似合いそうなドレスを着た美少女がいた。
(線が細い……のわりに、強かな雰囲気? 元平民だね)
あっさりと見抜いたララに対し、ティエリーが話し続けた。
やがて、片手を横に振ったあとで、サクリフィ王国の主力に命じる。
「不遜にも、アーデンティア帝国が宣戦布告をしてきた! 場所は、サーヴァス平原! 聖女リナを擁した我が国の力を示し、二度とそのような真似をせぬよう、叩きのめす!」
一旗のクロヴィスが、質問する。
「殿下は、どれだけの戦力をお考えで?」
「貴様ら、三隊の全てだ! 各隊は遠征に備えつつ、待機せよ!」
マジかー!
帰還したばかりのララは、頭が痛くなった。
宣戦布告による戦争は、前の小競り合いとは訳が違う。
お互いの領土や威信をかけた、本格的な衝突だ。
(マリカちゃーん! 早く会いたいよー!)
なお、この世界に転職という概念はない。
過去作は、こちらです!
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