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剣を捨てて殴ったら人生が変わった!  作者: 初雪空
第二章 聖女リナは王都へ向かう
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副隊長、ナスターシャ・フィルス

追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!

https://hatuyuki-ku.com/?p=4566

 ダガーを抜いた兵士2人は、駄々っ子のように振り回している。


(躱すのは、難しくないが……)


 握っているダガーを弾き飛ばせば、誰に刺さるやら!


 その時に、風切り音が響いて、俺と兵士たちの間を通り抜けた。


 ドカッという音と共に、細長い棒が突き刺さる。


 ビイインッと揺れたことで、兵士2人が固まった。


「ふ、副隊長……」


 誰かが呟いたかと思えば、1人の若い女がテーブルの間をぬって、近づいてくる。


 暗めの紫色の瞳で、長い黒髪をポニーテールに。


 キツ目の美人だが、雰囲気と体の動きは戦士のそれ。


 立ち止まった彼女は、俺たちを見回した。


「何の騒ぎですか、これは?」


 鋭い視線を受けた兵士どもが、慌てて言い訳をする。


「い、いえ……」

「こいつが、俺たちの女に粉をかけやがって――」

「今ならば! 王都へ戻ってから、誰もやりたがらない場所の掃除か、武具の手入れをしばらくやることで許しましょう!」


 静まり返った酒場で、美女が告げる。


「ですが、上官への虚偽報告となれば、話は別! それを踏まえて、説明しなさい」


「あのですね?」

「……うちを馬鹿にしやがったので」


 パンッ


 美女が両手を叩いたことで、兵士2人はビクッとする。


 直立不動になり、敬礼した。


「そこの女を口説こうとして、邪魔だったので……」

「俺たちをいきなり投げたから」


 その時に、女の声。


「あんたらが突き飛ばそうとしたから、反撃されただけでしょ?」


 俺たちのところへ給仕した女の声だ。


 怒った兵士たちが見回すも、上手く隠れている。


 息を吐いた美女は、最後に確認する。


「彼は……先に刃物を抜きましたか? ここで誤魔化せば、上官への反逆とします」


 護身用の短剣に手をかけつつの宣告に、兵士2人は観念した。


「いえ……。俺たちが抜いただけです」

「投げられた後でダガーを抜いて、こいつはずっと避けていました」


 訂正する声はない。


 雰囲気からも、事実のようだ。


 ため息をついた美女は、両手を腰に当てたまま、処罰を与える。


「分かりました……。分隊長! 王都へ帰還した後で、彼らに清掃または武具の手入れをさせろ! 打ち上げは、このまま参加させて構わない」


「了解! お前ら、後で覚えていろよ? たっぷり、掃除をさせてやる」


 立ち上がった男の発言で、酔っている兵士2人はガックリした。


 俺は、急いで食事を済ませようと――


 ポンと、肩に手を置かれた。


「こちらの兵が、申し訳ない! とはいえ、酔った彼らを転がしたぐらいで、『ギフテッド騎士団の二旗(にき)隊を倒した』などと自慢されたり、噂をされたりしても困る」


 美女の顔を見上げて、問う。


「どうしろと?」


「私と戦って欲しい! こちらの過失であり、そちらは剣を抜かなかったので、素手による格闘戦とする!」


 あくまで提案だが、断れば、二旗を丸ごと敵に回す。


「選択の余地はないと……。いつ、どこで?」


「ここで、今から! 酒場の外で、どちらかが戦闘不能になったら終了します! 安心してください。なるべく急所は避けますし、後遺症が残る怪我は負わせません」


 立ち上がった俺は、返事をする。


「いいだろう! そちらも、無名の誰かに負けたでは退けないよな? その代わりに俺の名前は言わない」


 即断即決に、周りがどよめいた。


 続いて、二旗の奴らが歓声を上げる。


 傍観者として座っているシャーロットは、口をはさめないまま。


 俺が外に出て行けば、その美女が続く。


 ギャラリーとして酒場から出てくる奴もいれば、周りの建物からも見物人が群がった。


 通りは暗いものの、二旗の連中が壁となり、部外者はシャットアウト。


 短剣を預けた美女が、俺と向き合ったままで自己紹介。


「二旗の副隊長、ナスターシャ・フィルス……。そちらは名乗らずとも、構いません」


「よろしく」


 シャーロットに荷物を預けて、身軽になる。


 お互いに正面から向き合いつつ、摺り足で距離を詰めていく――


 地面がえぐれて、ナスターシャの姿が大きくなった。


 片足を滑らせ、地面で円を描きつつ、伸びてきた拳を避ける。

 同時に、相手の背中への裏拳。


 振り返りつつ、その腕をとらえての投げ。


 このままでは背中から叩きつけられるが、逆に相手がつかんでいる腕にしがみついて回転する。


 それを察したナスターシャが、体を入れつつの手刀で、俺を離した。


 四つん這いで地面におりた流れで、足を払うキック。


 自分から飛んだナスターシャが、浴びせ蹴り。


 俺は転がって避けつつ、起き上がる。


 改めて向き合うも、ナスターシャの動きが速くなった。


「フッ!」


 正面からの中段突きは、弾丸のよう。


(ここら辺だな……)


 あえて受けずに、体に食らった。


 けれど、自分から後ろへ飛ぶことで、ノックバックに変える。


 勢いを引き受けた体は、後ろにあった建物の壁に叩きつけられた。


「うぐっ!」


 背中からのダメージで、そのまま倒れ込む。


 見ていたギャラリーが、ようやく話し出す。


「はっ! うちの副隊長に勝てるわけねーだろ!」

「飲み直そうぜ?」


 酒場に戻っていく、二旗の奴ら。


 他の連中も、窓を閉じるなど、自分の用事に戻っていく。


 駆け寄ったシャーロットが、俺の傍でかがむ。


「だ、大丈夫?」

「……ああ、問題ない! これで逆恨みされることもないだろ」


 あっさりと起き上がった俺に、シャーロットは目を丸くした。


「え?」


「しかし、まいったな! メシは?」


 同じく立ち上がったシャーロットは、記憶をたどる。


「まだ、あるけど……」

「片づけられていなかったら、とっとと食って、宿に戻ろう」


 これ以上のトラブルは、ご免だ。


 それにしても、ナスターシャと名乗った女、どっかで見たような顔だったな?

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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