二旗隊長ララ・リーメルトの一撃は大地を割る
追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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近代のマスケット銃。
先端から丸い球を入れて、火薬の爆発で押し出されるように奥まで突く。
単発だが、当時としては画期的。
それは、騎士の時代の終わり。
訓練を受けただけの平民、あるいは食い詰めた貧民が隊列を組んで一斉に撃てば、青い血をもつ貴族たちがバタバタと倒れる。
けれども、統一された服を着て、自分の身長ほどのマスケット銃を両手で地面に立てるように持つ兵士たちは、青い顔ばかり。
上官が、命じる。
「銃兵、前へー!」
ザッザッと、軍靴が前へ踏み出す。
「スチーム、送れ!」
最前列で横に並んだ銃兵が側面のレバーを動かせば、それぞれに繋がっているチューブからマスケット銃に高圧のスチームが送られ、抜け穴から余剰分が噴き出した。
「構えー!」
アーデンティア帝国の軍旗がはためく中で、肩づけから銃口が前へ向けられる。
けれど、お約束に従って交戦する場に、小柄な少女の姿。
彼女は、正面で一定の距離を置いて向き合う相手の列を押しのけ、前に出た。
敵対している、サクリフィ王国。
ギフテッド騎士団の二旗隊だと、巨大な軍旗で分かる。
そして、上の指揮官であろう白い軍服。
装飾が多い。
長い銀髪はツーサイドアップで、紫の瞳。
白い肌と童顔が、銃兵とその指揮官の判断を鈍らせた。
彼女は、青い裏地のマントをバタバタとさせつつ、自身と同じぐらいの大剣の切っ先を地面に突き刺し、その柄頭に両手をのせた。
可愛らしい声が、殺伐とした戦場に響く。
「二旗の隊長、ララ・リーメルトだ! すぐに退却するのであれば、追撃しない! 我が隊の旗にかけて、約束しよう」
ララは、マジックソード学院のマリカ・フォン・ミシャールに連絡をもらい、国境警備から戻りたい。
それゆえ、掟破りの宣言である。
原始的とはいえ、れっきとした小銃がズラリと横に並ぶのに対して、向き合う二旗隊はどいつも騎士の格好。
動きやすそうだが、弾丸を防げるとは思えない。
銃兵と同じように横一列の兵士に限っては、アーマーや盾のような装備も。
けれど、ララは儀式的な服だ。
(((撃てば、やれる……)))
蒸気で撃ち出すマスケット銃は、射程が短い。
命中率も悪い。
けれど、これだけ近く、全員で狙えば――
「大将首だ! 撃て――っ!」
指揮官の命令で、ドンドンッと発砲音が続く。
けれど、地面に突き刺した大剣を盾のようにしたララは、あっさり回避。
数発はガキンッと命中するも、貫くまでは至らず。
にやりとしたララは、土魔法を詠唱する。
「……アースブレイク」
急いで弾込めをする一列目と、前に出る二列目の銃兵。
いっぽう、大剣を背負うように踏み込んだララは、魔法を込めたままで上から振り下ろした。
それに伴い、切っ先から先の地面が水平線まで割れるかのように大きな溝ができる。
同時に、左右へ破片が飛び散り、それだけで敵の銃兵がショットガンを食らったように千切れ飛ぶ。
被害は列の一部だが、その動揺と混乱により、彼らは動きを止めた。
ララは、すぐに命じる。
「重歩兵、突撃せよ! 各騎士隊も、それに続け!」
「「「わぁあああああああっ!」」」
大声を上げつつ、重武装をした歩兵の列が走り出した。
先ほどの一斉射撃で倒れ、被弾で大きく凹むか、怪我をしていようと、お構いなしだ。
近代のマスケット銃は、一発、二発で致命傷とならない。
迫ってくる列に、銃兵たちは恐慌状態に陥る。
「落ち着けえええええっ! 撃てる者は、近い敵に――」
ドンッ! ドドンッ!
パニックになった銃兵は勝手に撃ち、あろうことか、まだ生きている味方を撃ち抜く。
もたもたしているうちに重歩兵が辿り着き、その武器によって肉が裂け、骨が砕かれる音へ。
乱戦だ。
こうなってしまえば、銃兵は脆い。
「全軍、退け! 退け――っ!」
趨勢が決まったことで、敵の指揮官は撤退を命じた。
「全軍、停止せよ!」
ララは、追撃をせず。
逃げ場をなくせば、死兵は尋常ではない被害をもたらすから。
それをする価値は、全くない。
「つけろ!」
「……ハッ! 送り狼を出せ!」
馬に乗った偵察兵の小グループが、逃げていく敵をこっそりと追尾する。
「近くの拠点へ伝令! ならびに、広範囲へ偵察を出すように! 囮かもしれん」
味方の救助をしつつ、残った敵のうち、身代金を払えそうな貴族だけを捕虜に。
それ以外には、トドメを刺していく。
でなければ、雑兵は必ず野盗になる……。
ララは大剣を地面に突き刺し、組んだ両手を腕に伸ばした。
「うぅーん! あいつらが素直に帰ってくれれば、マリカちゃんに会えるね!」
この世界では、騎士がマスケット銃を倒すようだ。
50名ほどの騎士に、その倍はいる兵士たちが、勝鬨を上げる。
そちらを見たララは、部下をねぎらう。
「諸君! 今回も圧勝だったな? 近くの街へ引き上げたら宴会だ! 酒と女もあるだろう! ボク以外でな?」
幼い美少女に見えるが、意外にラフだ。
こういった死線をくぐった直後に何が必要かを熟知した対応。
騎士や兵士の目つきも、信頼している上官へ向けるもの。
気持ちのいい笑いが辺りを満たすも、無残な死体も転がっている戦場。
一軍を指揮するだけの力と、その器はあるようだ。
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