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剣を捨てて殴ったら人生が変わった!  作者: 初雪空
第一章 追放というか勘当された
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命懸けの戦いで、そよ風を君に……

追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!

(旧題:剣と弓の世界で俺だけ魔法を使える~最強ゆえに余裕がある追放生活~)

https://hatuyuki-ku.com/?p=4566

 マジックソード学院で、追試の日になった。


 よく絡んでくるマリカとじゃれた翌日だ。


 青空が見えるグラウンドに立てば、外周をかこんでいる防護壁と、その上に階段状にある観客席が目に入る。


 制服を着た男女が、他人事として見学。


「どっち?」

「落ちるほう!」


「バーカ! 勝ったときに激アツな大穴に賭けるのが、通だよ!」


「とっとと、自主退学すればいいのに」

「ねえ? フフフ」


 どいつも楽しそうで、良い見世物。


(学院中の奴らがいそうだ……)


 制服で左腰にロングソードを下げている俺は、試験官となっている男の教師を見た。


 頷いた試験官が、宣言する。


「今から、ティル・スターン君の追試を始めます! 対象となる単位は、『剣に魔法を付与する』という魔法付与! なお、生徒から志願者がいたことで、2名による模擬戦です! 対戦は一対一で行い、それぞれが魔法付与する時間を設けたのちに戦ってもらいます」


 学院が公開リンチをするとは、たまげたなあ……。


 そう思いつつ、さっきからニヤついている男子を見る。


 前髪を立てた、いかにも弱いやつをイジメそうな陽キャだ。


 ロイグ・ガイアルドーニ。


 子爵家にいるが、攻撃的な魔法と剣術を得意としている。


 立ったままで腕組みをしているロイグは、険しい顔だ。


 試験官が、最終確認する。


「ガイアルドーニ君? 構いませんね?」


「お、おう! 付与する魔法に、制限はないんだよな?」


「はい……。ただし、魔法で直接攻撃した場合は処罰ですよ?」


 武者震いをしているロイグは、ゆっくりと息を吐いたあとで、左腰の柄に手をかけた。


 ゆっくりと剣を抜き、その鈍い光で辺りを照らす。


「ハ、ハハハハ! てめーが退学になる前に、全力で戦ってみたかったんだよ!」

「大人げないな、お前……」


 こちらもロングソードを抜き、両手で握った。


 それを見届けた試験官が、宣言する。


「どちらも、魔法付与を始めてください!」


 ロイグは、左手を剣身にかざし、魔法を唱える。


「ボルケーノ!」


 やつの剣がオレンジ色から赤色と、いかにも熱そうな感じ。


 それらは、1人で持てるソードに吸い込まれていく。


 まるで、新しく剣を打っているような光景。


 ギャラリーの生徒たちが解説する。


「うぉおおおっ! 炎魔法の上位じゃねえか!」

「あいつ、炎は才能あるよね……」

「なるほど! 隙だらけになるが、魔法付与の時間があるのなら」

「考えたな?」


 対する俺は、これだ。


「ウィンド、ウィンド、ウィンド、ウィンド――」


 重ね掛けすれば、初級の風魔法でも効果があるかなって。


「ギャハハハ!」

「手動の送風機か、お前は!」

「わ、笑っちゃ悪いって……。フフフフ!」

「私、もうダメ! 笑いすぎて、お腹いたい」


 ちくしょう。


 お前ら、あとで一発殴るわ。


 剣身の周りで、俺の熱気を冷ますような風が吹いた。


 試験官が、魔法付与の時間の終わりを告げる。


「はい! 只今から、模擬戦に入ります!」


 言うや否や、俺たちに背中を向けて全力疾走。


 ちゃんと、試験を見ろや?


 様々なレッドで輝くロングソードを両手で構えたロイグが、狂気を感じさせる笑いと共に叫ぶ。


「ヒ、ヒヒヒヒ! てめーでも、流石にこれは躱せねーだろ? 死ねや、おらぁあああああっ!」


 両手で、自分の後ろに回したソード。


 踏み出しながら、俺に対して半円を描いての横薙ぎだ。


 その剣身から火山のマグマのような炎が噴き出し、俺が立っているエリアを扇状に満たした。


 ロイグは、横に振り切ったまま。


 やがて、片手でガッツポーズをとる。


「や、やった……。やったぞ、おらぁあああっ! 見たか、お前ら――」


 俺は、逆手で持つロングソードを奴と向き合うように首筋へ押し当てた。


 ダラダラと汗をかきつつ、ロイグが視線だけ向ける。


「な、何で――」

「バックステップで後ろの壁へ行き、そのまま蹴った。お前の正面を避け、壁を蹴りつつ外周を回りこんだ」


 ロイグが見ると、俺が蹴った壁の部分が大きく壊れている様子が目に入った。


「ヒッ……」


 押し当てている剣身からは、ウィンドによる小さな風がある。


(どうだ、涼しいか?)


 逃げていた試験官が、宣言する。


「そこまで! ガイアルドーニ君は、ご苦労さまでした」


 ロングソードを引いて、風魔法を解除する。


 しなくても、ほぼ同じだけどな?


 同じように剣を納めたロイグは、疲れたのか、ヨロヨロと退場した。


 戻ってきた試験官が、2人目を紹介する。


「では、次の対戦! アルテム・フィルス君です!」


 視線を感じて辿れば、マジックソード学院で一二を争うイケメンがいた。


 観客席にいる女子が、すごくキャーキャー言っている。


 ロイグとは正反対で、理知的だ。


 こいつは独自の魔法を極めており、刀という武器を使う。


(けい)は、確かに強い……。しかし、ここは魔法剣を学ぶ場だ。強ければ、何をしても許されるわけではない」


「あ、うん……」


 軽く頷いたアルテムが、続きを述べる。


「私が、卿に教えよう! 魔法を使いこなすことでの強さを……」


 ごめん。


 このマイクパフォーマンス、毎回やらないとダメ?

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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