表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣を捨てて殴ったら人生が変わった!  作者: 初雪空
第二章 聖女リナは王都へ向かう
19/21

戦いは、始まるまでに勝敗が決まる

追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!

https://hatuyuki-ku.com/?p=4566

 立っているシャーロットの拳を避けつつ、その体捌きのまま、崩すように投げた。


 彼女も逆らわずに飛ぶも、こちらの片腕をとろうとする。


 取られれば、彼女が地上へ落ちる勢いのままにへし折られる、または肩関節などを外されるだろう。


 当然ながら、俺は回避する。


 手刀で振り払うような動きで弾きつつ、まだ空中にいるシャーロットへ追撃した。


 空中で受け流しつつ、ドスンと背中から落ちたシャーロット。


 俺が伸ばした片腕につかまりつつ、受け身をとっていた。


「ふうっ……。今回は、この辺にしましょう?」


 俺の片腕を引っ張りつつ立ち上がったシャーロットは、長い黒髪を指で整える。


「私と似たような戦闘スタイルがあったとは……。あの女と同じで、マジックソード学院の生徒だったんでしょ? 魔法剣は?」


「剣なら、置いてきた! これからの戦いに、ついてこられないからな?」


 引き気味のシャーロットは、突っ込みを入れる。


「そ、そう……。でも、私たちが向かっている王都ウルティマナは、あなたが言った通りにサクリフィ王国の中心! 抱かれないってのは、不安よ……。そこは理解して」


「金で雇われたわけじゃないし……。言われてみれば、そうだな?」


 俺の返答に、シャーロットは息を吐いた。


 無意識だろうが、腕を組むことで、下から巨乳を持ち上げる。


「あの女……。マリカが敵になったら、どうするの?」


「俺は、聖女となったリナを奪還する……。それだけだ」


 答えになっていないことで、シャーロットはまた息を吐く。


 ムダに色っぽい。


 そして、俺のほうを見た。


「分かった……。なら、私が戦う!」

「あいつは、強いぞ? 落第生だった俺とは違い、学院の首席クラスだ」


 こくりと頷いたシャーロットは、意味ありげに笑う。


「私も、手の内を全てさらしたわけじゃない! あとは、そのマリカ次第……。王都にいる主力だけど」


「エレメンタル騎士団が、よく分からん! ギフテッド騎士団は、学院の優秀者がスカウトされての就職先と知っているが」


 首を横に振ったシャーロットは、指摘する。


「エレメンタル騎士団は、大地、水、火、風の四元素よ? 精霊信仰の一種で、それぞれに象徴的な団長がいるだけ! 今は超常的な力がない人間による名誉職だから、気にする必要はない」


「……詳しいな?」


 肩をすくめたシャーロットは、端的に答える。


「リナと関係しているから……。私たちの一族は、そっち系でね? 今となっては、スラムと同じよ! それより、ギフテッド騎士団のことを教えて?」


「魔法剣が得意な奴らで、王国の主力……。一旗(いっき)二旗(にき)と、隊ごとに呼ばれている。正確には『一旗隊』だが、呼びにくいから『隊』を省く」


 血筋もあるが、基本的に実力主義。


 隊長、副隊長は強く、隊員も100人単位。


 眉をひそめたシャーロットが、思わず呟く。


「厄介ね? その、10隊が全て?」


「王国の巡回や反乱鎮圧もあるから……。常備軍は、せいぜい3隊じゃないか? ちなみに、俺も又聞きだし、ギフテッド騎士団の幹部に面識がありそうなのはマリカさんだぞ?」


 派手に溜息をついたシャーロットが、俺にジト目。


「奴らに、勝てそう?」

「……分からん」


 何はともあれ、王都ウルティマナへ向かうのみ。



 ◇



 マリカ・フォン・ミシャールは、マジックソード学院で募集された聖女の付き人へ立候補。


 伯爵令嬢という保証に、優秀な魔法剣士だったことで、あっさり採用。


 ティエリー・レ・サクリフィ王子の帰還に伴い、マリカは聖女リナと同じ馬車に乗る。


 護衛を兼ねているため、武装したまま……。


 馬上の騎士に囲まれているが、その警備はおざなりだ。


 小窓のカーテンの陰から窺えば、リナの声。


「あの……。ミシャールさん?」


 向き直ったマリカが、応じる。


「何でしょう、聖女さま」

「……あなたは、ティルの彼女ですか?」


 思わぬ質問に、マリカは息を吐く。


「付き合ってはいませんでした……。なぜ?」


「学院で聞いた限りでは、男女の関係にしか思えなくて」

「……逆に、聞かせてください。あなたは、どうして聖女に?」


 息を吐いたリナは、首を横に振った。


「そういう定めだったのでしょう! 王都に着いても、観光はできなさそう」

「……私、ギフテッド騎士団の二旗隊の隊長を知っているの! 良かったら、どうかしら?」


 精鋭の騎士団の幹部と会うのなら、許可が下りる可能性は高い。


 気を遣われたと悟ったリナは、向かいに座ったままで会釈。


「ありがとうございます……」


「もう1人の女子……。残念だったわね?」


 マリカの指摘に、顔を上げたリナはウェーブがかった栗色ロングを指ですく。


「まだ、決まったわけではありません」

「……そうね」


 全体の警備は厳重で、順調に王都へ近づく一行。


 ほぼ同い年の女子とあって、2人はそれなりに仲が良くなった。


(王子は……思っていた以上に顔を出さない)


 貴族の機微をよく知っているマリカは、ティエリーは聖女リナをレディとして扱うものの、婚約者への態度ではないと感じていた。


(貞操も怪しくなって、見限った? あのデカパイ女は、リナを奪い返しに来るだろうし。ティルはあいつに手を出しても出さなくても、たぶん道連れ!)


 口では言ったが、シャーロットが死んだとは思っていないマリカ。


(二旗隊の隊長……。いてくれると、いいんだけど)

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ