女子2人を連れ込んだ部屋に彼女を招く
追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
(旧題:剣と弓の世界で俺だけ魔法を使える~最強ゆえに余裕がある追放生活~)
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下水道の掃除が一段落つき、ランチタイムへ。
とはいえ、4K仕事ゆえ、街の店には行けない。
街の郊外で日雇いをしている奴らのために、大鍋で調理している場所があるのだ。
(煮込んでいるだけで、味を楽しむようなものじゃないが……)
行列に並び、器で受け取るものの――
「あん? 夜の分も欲しいだあ?」
汚れたエプロンをつけた男は、俺のお願いに聞き返した。
「ええ! ちょっと、金欠で……」
息を吐いた男は、しぶしぶ言う。
「ま、いいだろ! どうせ多めに作っているし、てめーは真面目に働いているからな……。今回だけだぞ?」
「ありがとうございます! これに、お願いできますか?」
俺が差し出した金属の容器を見て、応じてもらえる算段だったと理解した男は溜息をつく。
「いい性格してるよ、お前……。後ろが待っているし、とっとと出しな!」
「はい!」
◇
俺が持ち込んだ容器は、あっという間に空になった。
腹を空かせた犬のように、潜んでいた女子2人が食べ尽くす。
(疑心暗鬼になって、ここに隠れたままか……)
俺の昼飯も含まれていたが、それはどうでもいい。
一食を抜いたぐらい、あとで食えばいい話。
――掃除の片付け
死体袋を2つ。
汚れてもいい袋であり、そこにシャーロット、リナを入れた。
水死体は、だいたい膨れ上がっているか、破裂した後。
臭いも酷く、確認する奴はいない。
死体の安置所は、やはり臭い。
墓地の傍にある、ゴミ捨て場のような野外スペース。
そこにドサッと転がして、運んだ荷車を返却。
もう帰れる状態だが、その前に臭いと汚れを落とす必要がある。
冒険者ギルドの裏手で仕事が終わったことを報告して、そのまま水場へ向かった。
しつこい汚れのためのシャワーの前で、コソコソとついてきた女子2人も合流。
俺が利用するついでに、彼女たちも体を洗う。
とてもエロい状況になるのだ。
(下水道の臭いがする女に興奮できるのなら……)
上から水が降ってきたら、シャーロットとリナの臭いが強まった。
けれど、2人は服を着たままで全身をさする。
「生き返る……」
「服は、もうダメでしょうね?」
ぐっしょりした服を見下ろしたリナは、腕を顔に近づけて、くんくんと嗅いだ。
けれど、鼻がバカになっていて、分からない雰囲気。
抱きつくような距離で向き合っている俺のほうを見た。
「どうでしょう?」
「……止めたほうがいいな」
俺も、2人に当たらないよう、石鹼で頭から洗う。
服を脱いだ2人は、同じく石鹸を泡立ててから、自分の足で踏み始めた。
流れていく水で、洗濯される。
石鹸で頭から洗っていくと、3回目でようやく女子らしい姿になってきた。
(いい香りになった……)
なるべく見ないように洗ったものの、俺が出たら、下のほうを見ているリナが微笑む。
「ちゃんと反応してくれると、安心します……。せまいから、気にしないでください」
「着替えはあるが、期待するなよ?」
話題をそらして、シャワー終了。
「臭い、大丈夫でしょうか?」
「……問題ないだろう」
ぐいぐい来るリナに対して、シャーロットは恥ずかしそうなままで無言だった。
余裕ではさめる女が初心というのは、ポイントが高い。
いかにもお嬢様という女の色仕掛けもいい。
ともあれ、俺の宿でこっそり泊まらせて、そのまま逃げてもらう。
――宿屋
女2人を隠せる部屋ではなかったから、中級の宿へ。
前払いで外から入ってもらい、ようやく一段落。
「夜は警戒しているだろうから、早朝を狙え! 食事と歯ブラシなどを買ってきたから、今のうちに済ませろ」
「ありがとう」
「……感謝申し上げます」
けれど、リナは意味深に笑う。
「今からであれば、仮眠をとっても早朝に起きれそうですね? これだけ助けていただき――」
コンコンコン
緊張した俺たちが、閉じられたドアを見る。
けれど、聞き覚えのある女子の声。
『ティル? いるんでしょ? 宿を変えるなら、連絡して!』
マリカ・フォン・ミシャールだ……。
バッと周りを見れば、不思議そうなシャーロット、面白そうな笑みを浮かべたリナ。
ジェスチャーで、隠れろ! と告げたら、それぞれに立ち上がった。
時間稼ぎで、俺が返答する。
「誰だ?」
『……何の冗談よ? 私よ! マリカ! とにかく、中に入れて!』
部屋の中を見ると、2人は隠れたようだ。
「分かった! 少し、待ってくれ……」
ガチャッと開ければ、マリカが立っていた。
んっ? という表情で、中を覗き込む。
「……女?」
「いるわけないだろ! 入るなら、早くしてくれ」
息を吐いたマリカは、中に入った。
ドアを閉めつつ、内鍵をかける。
その音に、立ち止まったマリカが振り返る。
「逃げられないように?」
「……内鍵じゃ、意味がないだろ?」
クスクスと笑ったマリカは、椅子に座った。
「マジックソード学院に顔を出したけど……。今、このフルゴルを含めて、聖女の捜索をしているの! リナ・ディ・ケーム公爵令嬢で、サクリフィ王国のティエリー王子を殴り飛ばした女子のシャーロットも対象になっている」
「ほう?」
どうして、こうなった……。
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