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剣を捨てて殴ったら人生が変わった!  作者: 初雪空
第二章 聖女リナは王都へ向かう
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世界を救う聖女がやってきて、攫われた!

追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!

(旧題:剣と弓の世界で俺だけ魔法を使える~最強ゆえに余裕がある追放生活~)

https://hatuyuki-ku.com/?p=4566

 マジックソード学院から、問題児がいなくなった。


 敷地内に放し飼いのクマがいるようなもので、ティル・スターンが除籍によって立ち去るまでは誰もが息を殺す。


 しかし、もう自由だ!


 制服姿の男女は、大戦が終わった直後のように喜ぶ。


「いやー! まいったぜ!」

「あの野郎がいなくなって、せいせいする!」


「ミシャールさん、スターンについていったんだ?」

「物好きね……」


「そういえば、もうすぐ聖女がやってくるんだって?」

「サクリフィ王国の王子が、じきじきに紹介するとか」

「……婚約者にするの?」


 常識的に考えれば、王子が紹介するのなら、そうだ。


 けれど――


「んんー? その聖女って、平民でしょ?」

「あり得なーい! ハハハ!」


 彼らは、このサクリフィ王国で選ばれし子供たち。


 一歩でも外に出れば、殺し殺される日常があるのに……。


 魔法による剣を扱い、何の不自由もない生活。


 くだらない競い合いはあっても、それだけ。


 なぜ、魔法があるのか?


 なぜ、剣に魔法を付与できるのか?


 どうして、ティルは身体強化だけ得意なのか?


 テストに出ないことを考える必要はなく、自分たちのルールだけで動く。

 そして、学院の広い講堂に生徒が集められた。


 前にある高い舞台で、ここの生徒でもある金髪碧眼のティエリー・レ・サクリフィが、白い儀礼服で演説する。


「お集まりいただいた諸君に、お知らせする! こちらにいる女子こそ、王国を救う聖女のリナ・ディ・ケーム公爵令嬢だ!」


 演技をしている役者のように、片手で指し示した先には、学院の制服を着た女子が1人。


 同じく舞台に立っていて、壇上にいる王子の斜め後ろ。


 リナは、無言のままで、前に出た。


 平民と聞いていたが、どうやらケーム公爵家が養子にしたようだ。


 栗色の長い髪は輝き、毛先までの考えられたカット。

 その藤色の瞳に感情は浮かんでおらず、大人っぽい造形だが可愛らしさも残る顔。


(公爵家が金を惜しまずに磨き抜いたのだろうが、素質もいい!)


 低い位置で立っている生徒の集まりは、誰もが思った。


 そして、公爵令嬢となれば、王族との婚約がリーチであることも……。


 生徒たちの思いを受け取ったように、ティエリーは頷いた。


「皆も、彼女が元平民であることは知っていよう! だが、サクリフィ王国を救う聖女となれば、それを庇護する紳士にも同じだけの器量を求められる! つまり、次代の王国を担う私の――」


 その時に、舞台上を歩く女子がいた。


 他にも色々なVIPがいる中で、構わずに壇上のティエリーへ近づく。


 制服を着ている、長い黒髪で赤目をした、見ただけで分かる巨乳だ。

 しかも、可愛い。


 何かの申し送りだと考えたティエリーは、演説を中断して、そのデカパイに向き直る。


「どうした? 緊急でなければ、この後に――」


 その返事は、一瞬で姿が消えるほどのスピードでの踏み込みに、そこから伝わる先にあった拳だった。


 ティエリーの端正な顔が歪んでいき、その勢いのままに、空中へ飛んだ。


 いっぽう、無表情だったリナに、初めて驚きの表情。


「シャーロット!?」


「行くわよ! こんなところにいたら、いけない!」


 手を引っ張られて、リナも走り出す。


 ここで、誰かが叫ぶ。


「痴れ者だ! 捕らえよ!!」


「「「ハッ!」」」


 儀礼的な近衛兵たちが、立てていたハルバードで立ち向かうも――


 シャーロットは瞬く間に、突き出されたハルバードの長い柄を砕きつつ、それを持つ近衛兵たちを叩きのめしていく。


 その隙にリナを取り返す暇もなく、2人は講堂の外へ……。


 リナを抱きかかえたシャーロットは、あっさり飛び移ることで、高い塀を飛び越えた。


 重い地響きで着地したら、一目散に遠ざかる方向へ走り出す。



 グポンッ


 目の部分が光った。


 丸いヘルメットと2つの丸眼鏡のようなマスクをつけた騎士が、動き出した。


 両肩の丸いアーマーにはスパイクがついていて、いかにも強そう。

 灰色の全身装甲で、右手に長いスピアを持つ。


 胸の部分に描かれた紋章は、サクリフィ王国のもの。


 重装甲の彼らは、見えているだけで5人はいる。


 隊長らしき人物の合図で、次々にシャーロットたちを追跡した。


 とても走れない速度なのに、時速40kmを超えるスピードで馬に乗っているかのようだ。


 世界を救う聖女を守るにしては、禍々しい。


 顔が見えないけど、近くの村を一狩りしようぜ! と言いそうだ。


『我々、デストロイヤー騎士団の名に懸けて、聖女リナを連れ戻す! 抵抗する者は全て殺せ! これは王命である!』


『『『了解!』』』


 長いスピアは、馬上槍のように尖っているコーン式だが、徒歩で使いやすいようにグリップがある。


 右手でその部分を握っている重装騎士どもは、まさに一騎当千のオーラ。


 ティルのような身体能力を見せたシャーロットでも、勝てないと思えるほどに……。


 本来なら、講堂のすみで控えているべき。


 見られないように隠れていた時点で、まともな騎士ではないだろう。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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