中編その三~才能って、何だろうね(トオイメ)~
それから一月後。
「できた・・・・・・」
「あっ、出来たんだありがとっ♪」
最初の速効で書き上げた時とは違い、結構な時間がかかったけれど、それも当然。
彼も生きるために仕事していて、当然割り当てられる時間に限りがある。
そんな中で私の頼み事をやり遂げてもらったのだから、彼には感謝しかない。
「じゃあ早速だけど、読ませてくれる?」
「あ、ああっ」
「どしたの?」
「いや、その、な? 最初にいっとくんだけど・・・・・・」
「うん?」
「思った以上に、突っ込み所満載な出来で、これでいいのか散々悩んだんだけど、一応出来たからには読んで貰った方がいいと思うから、渡すけど・・・・・・その、何か思っているのと違ってたら、悪い」
歯切れ悪くいう彼に「いいよ、むしろ最初に出来上ったものに対して言ったの私だしね」とkに気にしないでと伝える。
どんな内容になっていても、kの腕なら許容範囲内だと思っているし、あくまで参考に書いて欲しかったのだ。
設定が矛盾していても、キャラが多少増えていても、私がイメージ出来れば十分だと私は”プロローグ”を読み始めた。
そして――――。
「……………」
「……………」
そのプロローグを読み終えた私。
彼は――無言だった。
「ねぇ――」
「――なに?」
ここで1度深呼吸。
「色々――言いたい事があるんだけど、いい?」
「ああ……」
彼が肯定したので、私は色々溜め込んでいるものを吐き出すため、口火を切る。
「なに、これ?」
「たのまれて、いた、もの?」
「そうね、確かに”ドンパチ”して”廃ビルが大爆発”してるもんね、けどさ」
「う、うん?」
「私、”プロローグ”って言ったじゃない?」
「そうだな」
「プロローグってさ、長くても5千くらいかなって思ってるんだ私」
「俺もそんな認識だな」
「じゃあさ、なんで、なんで――」
ここで私の感情が大爆発を起こす。
「こんな文字数になってるのよ――――!?」
読み始めて、あれ? とは思ったのだ。
ビルに到着し、会話を広げる男2人と、女1人。
彼らの会話が終わって、妹と再会する所で、「丁寧に作りこんでるなー」って。
でも、これくらいならちょっと長めのプロローグかぁと納得したのだが。
終わらないのだ。
いくらスクロールしても。
話がどんどん深堀されていって。
キャラ1人1人にドラマが生み出されて。
自然に生まれた超能力者はオリジン。
科学技術によって、生み出され完成されたものをザ・セカンド。
失敗したものをダストと、設定がどんどん作り出されていく。
姉の婚約者の男性と、その友人はオリジンであり、その力を使って数々の敵を撃破とか。
友人は実は妹が好きだったけれど、妹は姉の婚約者が好きで、超能力が分け隔てなくできる世界を目指していたとか。
それを全て知っていて、友人は妹を助けるつもりだったことか。
敵の中には、かつてオリジンであり、自身の家族を守るため、実験を志願し、失敗。
それでも家族を守るために、ダストと蔑まれても、研究所の言いなりなった人間もいて。
――お前とは、違う出会い方をしたかった――。
――阿呆、それが出来ないから、この世界はクソッタレなんだろうが。
――そうだな、それでクソッタレの世の中に、希望があっても、クソッタレの事には変わりない、か。
――じゃあな、先に地獄に行ってるから、せいぜいあがけや、クソッタレが。
――ああ、先に行ってろダスト、俺はもう少しだけ――こっちにいる。
そんな敵と婚約者のやりとりがあって。
そうして、最後。
ほとんどのものが死んで、残るものはわずかになった時、瓦礫の一角に婚約者は姉を押し込む。
増援が、くるんだってさと、婚約者は苦笑して。
――知り合いに、胡散臭い探偵がいて、色々手配してくれる、はずだ。
――この後、ここは倒壊するから、その瓦礫の中に、君と子供達を、隠す。
――そして、君達が死んだと敵が確認した後で、掘り起こす人間が現れる。
――それが、さっき言った胡散臭い探偵。色々どうしようもない、クソ野郎だけど、それでも、君達を助けてくれる。
――だから、何も心配することなく、ここにいてくれ。
――俺は約束のひとつも守れないクソ野郎で、この世界はクソッタレな事ばかりが起こるけど。
――そんな世界で、君やダチと出会い生きて来れたのは、とても幸福なことだった。
――愛してる。ただ君を愛してる。その優しさと、愛を俺に与えてくれて、ありがとう。
――君達は、守る。最期のこの約束だけは絶対に果たすから。
婚約者はその後1人で激闘を続け、自らの能力を暴走させてビルを爆破。
後は、姉と婚約者を死んでも守り抜くという思いで作り上げた障壁を生み出したあと息絶えた。
それからかなりの時間が経った後。
件の探偵が彼女達を掘り起こして、幕が降りる――。
最初、圧倒的大作を前に放心して、我に戻って文字数を確認。
――5万字だった。
5千と想定していたら、10倍になってきやがった!
いや、作品にケチをつける気は毛頭ない。
ここ最近で読んだ小説のトップ3には入る名作っ。
名作! だけれども!
けれど私が頼んだのはプロローグだし!
戦闘描写と、映画のようなダイジェストに語られる冒頭が文章でどう表現されるのか参考になればいいなーとか!
そう思ってただけなのに!
なにこれ!?
あれれ、おかしいなぁ~!?
私が頼んだのはプロローグでっ!
概要は――――。
――――――――――――――――――――――――
妹研究者。
姉子供を除く唯一の生き残り。
他数名(戦闘できるもの、超能力使用可)
敵(超能力使用可)
ビルで激しい戦闘。
後に増援が来て、味方側がどうする事もできず。
結果ビルが爆破。
爆破の中で唯一の生き残り発見(本編続く)
――――――――――――――――――――――――
だよねー!?
プロローグって事だったし、簡単にでいいからってそこまで詳しく書いてないよ!?
この概要で5万書く友人は何もの!?
アンタこれで才能がないとかどの口が言ってんの!?
むしろ才能マンだわ! とんでもないわ!! とっと書籍化作家になって、この続きを書いてください!!!
――あ、この作品の作者私だったわ(爆)
――私が自分の作品のプロローグ依頼してたんだった…………。
あまりにの予想外を叩き付けられて、頭がおかしくなってた。
もう言うならば、チョコレート買って来て☆と頼んだらホールのケーキ買ってこられ気分よ。
全てが満足の出来だけど、私が頼んだのはこれじゃない、てきな。
――OKOK、とりあえず…………落ち着いて、友人と話をすることにしよう。
「――よく、かけたわね」
「なんか、でき、た?」
いや、普通できないでしょう。
「あなた、やっぱりすごい――じゃないわね、予想以上に凄いわ」
「そうかな、俺は――」
「言っとくけど、才能無いとか、そんな事言っても今回は聞かないから」
これで才能がない、というのなら、何が出来たら才能があるというのか、真剣に問い詰めたい。
「まあ、俺も今回は色々驚いてる」
「でしょうね、こっちも相当驚いたし――あなたにプロローグを頼んだら、まさか中編を書き上げてくるなんて思わなかった」
「言っても今回が特別だと思うけど――あのさ」
「何?」
「――これで、良かったか?」
「・・・・・・えっ?」
唐突な言葉に呆気にとられる。
「だから頼まれてたものは――これでよかったか?」
――ああ、そうね。
私が頼んで書いたから、私が満足しているか、がkにとっては重要なんだ。
それができたかどうかわからないから、不安で一杯なのだ。
kは、そんな人間だったと思い出す。
「色々予想外はあったけど――」
イメージは出来上がった。
深堀のおかげで、今後の展開も、今まで以上に見えている。
これをそのまま使うことはできないし、するつもりもないけど。
けど、これなら、私なりのプロローグが書けそうな気がしたから。
――文句なしっ
私がそう答えると、彼はよかったよかったと答えた。
――これは余談なんだけど。
このプロローグは話が壮大すぎて、名称がプロローグでは味気ないと、友人が”エピソード・ゼロ”と名付けた。
またこの予想以上に話が増える、登場人物が増える現象の事を、私達の中で、”ゼロ現象”と呼ぶようになる。
『ゼロが――やつがきたっ』
と今でも話題に上がるほど。
それはともかくとして。
――このエピソード・ゼロを経て。
――遂に、待ち望んだキセキが私に訪れるのだ。




