トンネルの天井-1
ここからは、輝基の心情は入って気ません。
純粋な体験談となっております。
僕の名前はジェン。
高校の卒業式の直後、中学から付き合っていたマイの妊娠を聞かされ、翌日に入籍をした。
19歳の8月、妊娠でイライラしているマイの希望で、仕事終わりはほぼ毎晩ドライブへ連れ出していた。
これは、そんなある晩の体験でした。
いつも3時間ほどの決まったコースを、ぐるっと一周して居たのですが、同じコースに飽きてしまった僕は、昔から霊感の強いマイの制止も聞かず、いつもと違う山に入る道へ車を走らせてしまいました。
左は崖、右は岩と木のある法面の、車がすれ違う事すら不可能な道を戻る事もできないので、ひたすら上へと進んで行くと、これまた狭いトンネルが前方に見えたのです。
トンネルを見た僕は車を停車させ、山道に入ってからそっぽを向いて不機嫌なマイに話しかけました。
「マイ。先に謝っておく…あのトンネル見て貰えんかな?…あり得ない物が見えててさ…ほら、僕の見間違いかも知れんし…」
僕の言葉にマイは、何かを察し…一瞬躊躇した後トンネルに目を向けました。
「この道に入る前の、嫌な感じはこれだったか…」
マイはため息を吐いて、僕の方を一睨みし
「誰のせい?」
とどすの効いた声で聞いてきました。
「僕…かな?」
恐る恐る聞くと
「でしょうね!だから、嫌だって言ったよね?」
マイが怒るのも仕方ない状況でした。
Uターンのできないこの道で、僕らが進むしかない目の前のトンネルの天井に蜥蜴の様にへばりついた、人の形をした真っ黒な何かの目が、こちらを見て居たのです。