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07 説明しない人

1日で何度も大切なものを失った私は、失意の中歩いていく。

なのにほっぺは熱い。


「は、恥ずかしい・・・」


とんだ露出狂になってしまった自分をそっと抱きしめる。


「わ、悪いのはへへへ変身であって私じゃないしぃー」

強がったところで消えることのないココロの傷。


そう、もう変えようのない事実は、たった1日の間に2度も世間さまに全裸を晒した、というまさにそのことだ。


ぜぜぜ全裸・・・

なんか変なものに目覚めそうだ・・・


じゃないっ!


私はごく普通の真面目な(元)女子高生でいまは無職ろうにん・・・うええーん。

い、いや、無職じゃない。


私、魔法少女になったんだ!


職業 魔法少女。

特技 全裸変身。


うわぁーん!


考えることの全てが、ココロを抉って傷をさらに深くしていく・・・


私はもう、何も知らなかったあの頃には戻れない。

さらば青春!

カムバックせいしゅん~!


「着きましたよ、ブー」

嘆きながら歩いている間に、いつの間にか大きな鳥居を潜っていて、今、目の前には立派な神社が建っていた。

神社の右側にはおじさん(後で知ったんだけどこの村の村長さんだったらしい)が言っていた通りの立派な建物がある。神社を中央にして反対左側には、大きくてなんとなく長屋(もしくは学校?)みたいに思える建物が建っていた。


「なんかウチに似てる?」


右側の建物は、上(地下に潜った結果ここにきているので、便宜上ここを『下』、私が生活している街を『上』と呼ぶことにした)にある私の家に、外観がとても似ているのだ。


ただ、うちと違って、渡り廊下の先は蔵や道場じゃなくて神社の本殿になっているのだけど。


多分右側の建物が母屋なのだろう。

不思議とうちによく似ているし。

「まさか中まで一緒とか言わないよねぇ」


とオカルトちっくなことを考えながら、私は自分の家そっくりの引き戸をゆっくり開け、


「シルバー、いる?」


と奥まで聞こえるくらいの声で尋ねてみた。


それから、これもウチ同様に広いタタキに入ってしばらく待っていると、さっきシルバーの肩に乗って飛んでいったホウちゃんが、小さな羽をパタパタさせて奥からゆっくり飛んできた。


「やっと来ましたか、おせーですね」

羽をパタパタさせながら甲高い声で得意げに語る。


「いや、だってあんたたちが私のこと見捨てるから・・・」

そんなこと言われたら、憎まれ口の一つくらい叩きたくなるよね。


「あの程度で魔力切れとか、オホホホホぉ」


「くーっ・・・こいつハタキ落としていいよね、ゼンタくん!」


「気持ちはわかりますけど、さすがにそれは・・・ブー」


ゼンタくんが心配そうに廊下の奥を見つめていると、ウチの茶の間があるあたりの引き戸が静かに開く音がして、


「なんだい、早く上がっておいで」


「えっ、おばあちゃん⁉︎」


今朝着ていた着物のままの、なぜか髪だけ下ろしたおばあちゃんが出てきたのだった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



所はちょっとだけ変わり、茶の間に揃った私たち2人と2匹?が、座卓に集まっていた。


「ありがとう」

おばあちゃんが、お茶の入った湯呑み(これも私のにそっくり)を渡してくれた。


ホウちゃんはおばあちゃんの横、小さいからか座卓の上にちょこんと座っていて、ゼンタくんは私の横に、こっちは生意気にも座布団の上でくつろいでいる。


「生意気って・・・ボクは高貴な精霊なんですよ、ブー」


あー、なんかこの『ブー』はちゃんとブーイングっぽい。


「変なとこ感心しないでください、ブー」


「ところでおばあちゃん、私、銀色の魔法少女追いかけてきたんだけど、どこにいるか知らない?」


ぶふっ


みんな一斉に吹き出した。


「えっ、私なんか変なこと言った?」


「やっぱりミコさまが言った通りでしたね。真琴さまはボケボケちゃんだって」


ホウちゃんがコロコロ笑っている。

なんか悔しい。


「な、なんでシルバーなんかにそんなこと言われなくちゃならないのよっ!」


「いやー、それは言われても仕方ないと思います、ブー」

えっ、ゼンタくんまで。

あんた私の味方じゃなかったの!?


「マコちゃんはほんと、昔から変わらないねぇ」


そう言いながら、おばあちゃんが袂から青いリボンを出し、両手に持ったまま長い髪を左右に分けて持った。


えっ、ええええええええええっ!


そ、そういえば顔にシワわわわわわもなななななぁい!


「あははは、やっとわかったんだー」

シルバーなおばあちゃんが、子供のような高い声でにっこり笑った。


そうだ、これはきっと夢なんだ。

私は、どうやら夢をみていたらしい。


今朝起きて稽古して朝ごはん食べて祠に入って・・・

はみんな夢なんだそうなんだ・・・

早く起きなきゃ・・・


と湯呑みを両手で包み込んだまま茫然としていると、


「夢じゃないですよ、ブー」


冷め切った声が横から聞こえてきた。


・・・ブタ、いた。


「ブタじゃないです!

ちょ~高位精霊のゼンタです!!」


さすがにブーはつかなかった。


「ほらほら、宴会まで時間ないんだから、聞きたいことあったらさっさと聞きなさい」


いつの間にかリボンで長い髪を一つにまとめた、本物の巫女さまチックなおばあちゃんが目の前にいた。


「・・・えーとさ、まず、その・・・おばあちゃんがプリンセスシルバーで、いいんだよ、ね?」


「そうだよ」


「あああ、あんなカッコして恥ずかしくないの⁉︎」

思わず立ち上がる私。

だだだって、ミニスカだよ肩出しだよ白タイツだよ!

おおおおばーちゃんなんだよっ!


「わたしゃ女優だからね」

ふふんと笑うおばルバー。


何言ってんですかいつからですか!


「さてっと、身バレもしたことだし、話を進めようかね」


あーやっぱりそうですよねー。

私の疑問なんか無視して、いつも通り自分のペースで、話を進めましたよこの人。


でも、この後に続いた話は私にとっても衝撃的なものだった。


なんと、私、魔法巫女の末裔だったのだ。


そして、下の世界では私も現役巫女で、職種(巫女に職種なんてあるんだ)は戦闘巫女というなんやら物騒なものらしい。


で、こっちでは巫女1人に使い魔精霊がついていて、ゼンタくんは私の使い魔。


おばルバーの精霊はホウちゃん。

年はボクのほうが上です、ブーとかなぜかゼンタくんは自慢げに言ってた。


そしてこのオヤシロ村は私たちが守護する村で、


「今日からお前が守護役になるから」


と、当然のごとく仰りましたよ、おばシルバー。

何よ守護役って、ちゃんと説明して!


「まあそこはおいおいわかってくるから」


修行の時もこうなんですよ、うちの祖母。


弟子はいつも振り回されてばっかりで・・・どこのブラックだ!


「で、私はなにやればいいの?」


ここまで話されたものは、もう何を言おうがおばあちゃんの中では決定事項だ。

今さら拒否なんてできっこない。


「とりあえずはこの辺りに出る魔物退治だね」


「魔物って、さっきのワイバーンみたいなやつ?無理だよあんなの」


「あはは、あそこまでのは滅多にいないさ。もっとちっちゃいのばかりだよ。具体的には・・・そこのブー太くんくらいかしらね」

と、ゼンタブーに視線を送るおばあちゃん。


「ですから、ぼくはゼンタです、ブー」


「はいはい、それでね・・・」

やっぱり完全無視ですか。


「時々ブー太くんが出るから・・・

真琴、スマホ持ってるだろ」


「うん」


「ちょっと開いてみな」


言いながら、おばあちゃんがブー太を足で払って横に座った。


「なな、何するんですか、ブー」


「私を畳に座らせようってのかい?」

ですから怖いです、その笑顔。


「・・・そう、です、ね、ブー」


哀れなゼンタくん。


その間に、私は自分のスマホのロックを解除した。


「・・・あったあった、このアプリ」


「ええっ、いつの間に入ってたの⁉︎」


「これ、お母さんからもらったんだろ。なら最初から入ってたはずだよ」


確かにこのスマホは、というか歴代スマホはみんな私のお母さんから渡されたものだ。


「それってどういうこと?」


「このアプリは玲花が作ったものだからね」


ええっ、うちの母そんなことまでやってんですか!?


確かにうちの母は大学准教授なんて娘には似合わないインテリなお仕事をしていて、大学の研究室は「美魔女の魔窟」とか呼ばれていて、なんの研究をしているのかもわからないなんてこと聞いたこともあるけど、まさかアプリまで作れたとは・・・


「で、このアプリがなんなの?」


「これはね、この村の村長と繋がってるのさ」


おばあちゃんは、アプリを起動させて『オヤシロ村村長』を押した。


トゥルルルル・・・


「ありゃ、真琴さまからかね?」


「村長、準備はどうだい?」


「ミコさまでしたか。もうほとんど終わってるだで、来てもよかですよー」


「もう少ししたらいくから」


と、簡単な会話をしてスマホを私に返した。


「じゃ、行こうか」


だからぁ、ちゃんと説明してー。

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