天然(やらかし)の後片付け
今回区切り良いとこまで書いたら長いです。そして前半ちょっと重い
ジャイアントムカデの襲撃後、ボイコットのような行動を起こしていたワイバーン達が突然竜舎から出てきて騎士も乗せずに飛び立った時には騎士達が騒然となったけど、副団長から放牧ならぬ狩りに行っただけだと聞かされ、今は竜舎を動かす準備を各々がしていた。
私サラ・リー・マクレガンはジャイアントムカデとの戦闘に参加出来ず、後方支援に従事していたのだが…その原因であった愛竜と今竜舎で向かい合う状態になっている。
団長の愛竜であるメルメルが側に居たのだが、リオナに声をかけられ竜舎から出ていった。
ジャイアントムカデとの戦闘時に頑なに竜舎から出てこなかった愛竜に…ここで驚愕の事実を聞かされるなんて思ってなかった。
「リオナが…卵?」
…産んだ?いつ?昨日?
『まだ…先の事だと思ってたんだけど…思った以上に遠征が長くて…』
そもそも危険な任務だとメディシア副団長から言われていた。でも直接声をかけてもらって…浮かれすぎていたんだ。
リオナの事をわかるのは私しかいないのに…自分の竜の妊娠を見逃すなんて…
雌のワイバーンと主従契約をする時にあんなに注意されていたのに…
「卵はどこ!?」
リオナが卵から離れている状況が信じられない。
ワイバーンは番で卵の育成をする…雌雄で必ずどちらかが卵の側にいるはずなのに、リオナの番は首都にいるドランドだ。ここにいるはずがない
『あ、それなんだけど…実は卵がちょっと弱っちゃって…とある人に預かってもらう事になったの』
弱った!?大事なリオナの子供が?
群れで行動する習性があっても、卵の育成に関しては他のワイバーンが手を出す事は決してないはずなのに…誰に預けたというの?
『ごめんねサラ…戦闘の時動けなくて…』
「そんな事がどうでもいいのよっ!!!」
しばらく私に遠征の予定なんかなかった…今頃は首都でドランドと一緒に卵を育ててるはずだったのに…私が無理にこの遠征に連れてきたりしたから…
「なんで…言ってくれなかったの…」
言われる前に気づかなければならなかったとわかってる…でもつい言葉が出てしまった
『ごめんなさい…サラがすごく嬉しそうにこの遠征の事を話してたから…言えなくて』
確かに今回の遠征は団長と副団長が選んだ精鋭メンバーだと聞いていて、そこに選ばれたと知った時正直浮かれていたと思う。
「私の…せいね」
大事なリオナと子供を…危険な目に合わせて…ドランドに殺されても仕方ない…
『馬鹿バーン!!!お前の過失を全部バディに擦りつけるな!!』
『ぴゃっ!!!』
突然竜舎の中に少し高い子供の声が響きわたる。
竜舎の入り口に立つその姿は逆光で銀色の髪しか見えない。
「…誰?」
『そもそも一緒にいるはずのメルメルはどうした!?』
『あの…その…私が説明したいからって…』
『お粗末っ!!!!』
少年がどかどかと竜舎の中に入ってくるその手には大きな籠を持っていて…その中に毛布に包まれ入っているのは
「た…まご…」
泣く資格なんてないのに、涙が止まらなかった…
『ほらみろ!!お前の拙い説明のせいでバディが泣いてるじゃないかっ!!』
『え?え?』
「…大丈夫でしゅか?」
「…?」
すぐ側でとまった少年がこちらに声をかけてくれる。
止まらない涙の中で、不思議な違和感に気づく…リオナに向かって叫ぶ音と…私に大丈夫かと聞いた声が違う。
「…あなたは?」
「サラ、ナナ様だ」
ナナ様?……今回の遠征目的のフィース様のお子様…
「ナナでしゅ。この度は遠いところを母の我儘でありがとうごじゃいましゅ」
『お前が妊娠を申告しなかった事が1番悪かったのだとさっきあれほど言っただろうがっ!!』
『怒られると思ったんだもん!!サラにもしかしたら捨てられちゃうかもしれないなんて嫌なんだもん!!』
『子供かっ!!!!お前はもう母親だろうがっ!!!』
『うわーーーーんっごめんなさーーーーーいぃぃぃぃ』
リオナを怒る声は彼の肩から聞こえていて、そこには野営地で噂になっていた小型獣人がいた。
「あーっと…本人?ワイバーンだけど…まぁ反省してるんで…黙ってた事許してあげてくれましゅか?」
「えっ?…許すも何も……私が無理に遠征に連れてきたりしなければ…」
「あっ発情してない雌の妊娠は本人の申告が無ければよほど精密な検査魔道具を使わなければわからないそうなので、サラさん?の非はほぼ無いと思って大丈夫でしゅよ」
「…でも」
「なので黙っていたリオナしゃんを許してあげて、相殺という事でどうでしゅか?」
フィーナ様のお子様は資料では5歳と記載があったが…ほんとに5歳?
…私の罪悪感を取りつつ、リオナと私の間にしこりを残さない提案をしてくるこの少年が5歳?
『謝る相手が違うだろうがっ!!!』
『わーーーーん、サラごめんねーーーーー!!!』
「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
リオナに首アタックをされ尻もちをついてしまう。そのままリオナが頭を擦り付けてくるからそっとその頭を撫でた
「いいのよ…私こそごめんね」
『サラぁぁぁぁぁぁ』
ぐりぐりとリオナがさらに頭を擦り付けてくる向こうでニコニコと笑うナナ様を見て…
「…5歳?」
とサラは首を傾げてしまうのだった。
ついったーやってます
@poko_taneda




