仕事デキなAI
扉をノックしてみるも…頑丈そうな鉄の扉はノック音すら響かない。
もちろんノブを回してみるも…回るわけがない。
「え?ここまできて詰みでしゅか?」
魔法でぶっ飛ばす事も出来なくはないけど…それをした後の説明もろもろを考えると、時間が足りない。
「さて…どうしましゅか…」
こうしてる間にも時間はどんどん過ぎてしまう。
前世でも泥棒じゃあるまいし、さすがにピッキングの技術は持ってないんだよね…
本気で扉の破壊を考えていたら…
「ナナ君!!!!」
何と扉が開いてメリンダさんが飛び出してきた
「あ、メリンダしゃ」
「ナナくぅぅぅぅぅぅん!!!」
飛び出してきたメリンダさんが迷う事なく僕に抱き着いて号泣している。
美人は大号泣してても美人である。
ただし彼女の力は…かわいくない、ミシミシと音を立てて背骨が折れそうだ…
「めっ…メリンダしゃん。落ち着いて…」
もう背骨が……
「何も言わずに出て行って…連絡も取れない。調査隊が湖に言ったら激しい戦闘の後があるっていうし、砂漠の方でも複数も戦闘後が見つかったって……でもナナ君達の姿がどこにもないってぇぇぇぇ」
うん…湖のは完璧に亀達のやらかしだし……砂漠のやつも、僕が卵の呪いを解除してる間に暇だからって亀が遊んでた後だろう……全部亀のせいじゃん……
「無事でよかったよぉぉぉぉぉぉ」
だいぶ心配をかけてしまったらしい…それにしてもどうして僕が地下水路にいる事がわかったんだろう?
ー朱果ヲ使ッテ、ロックスウェル家ノ家令二連絡ヲ取リマシター
え?いつの間にそんな事…
ーナナ様ガオ札ヲ投ゲタ辺リデスー
仕事デキなAIが居ると、ほとんどの事がすぐ解決できる
「…ご心配おかけしましたでしゅ。あのぉ町の危機は解決したんでしゅが……ちょっと他で…町の危機再びというか…緊急事態でしゅ」
僕の言葉を聞いた途端、メリンダさんは涙を引っ込めて真顔になった。
「ナナ君どういう事?」
「帰りに問題に遭遇しまして…人手が必要なんで、ちょっと詳しい話をしたいんでしゅが…」
そっからのメリンダさんの動きは速かった。
ギルドに戻ろうと僕を抱きかかえた。
「あぁ!!メリンダしゃん待って!!魔法陣を消すおくしゅり持ってないでしゅか?」
「魔法陣を消す…?ポイゴント液の事?」
…ポイゴント液とはなんぞや?ポリゴン…進化系か?
ー『ポイゴ』トイウ薬草カラ採取スル、魔力ヲ無力化出来ル薬デスー
それはさっき言ってた魔法陣を消せる薬?
ーハイ、魔法陣ハインク二魔力ガ込メラレテイマスノデ、ソレヲ無力化スルト陣ノ形ヲ保テナクナリ、魔法陣ガ崩壊シマスー
へぇ、便利な物があるんだね
ーチュートリアル『薬草ノ知識ヲ獲得シヨウ』デ詳細ガ分カリマスガ、受ケマスカ?ー
え?このタイミングで??
いや、受けないでしょ?時間制限のある緊急事態中だよ?
ー残念デスー
…なんかすみません。
リフィの心底残念そうな声に思わず謝罪してしまう。
そんな僕らのやり取りを知らないメリンダさんが、自分の腰についてる鞄の中を探り、一本の瓶を取り出した。
「これがポイゴント液だけど…何に使うの?」
「え?そんな普通に鞄に入ってるもんなんでしゅか?」
「魔導具師は魔法陣の修正をする為に普通持ってるわよ?」
消しゴム的な物だった…
「ちょっとお借りしていいでしゅか?」
「今?何に使うの?」
「ちょっと消したい魔法陣があるんでしゅ…」
メリンダさんは僕の言葉に顔に疑問を浮かべながらもとりあえず瓶を渡してくれる。
僕は一度おろしてもらって、触手巻きのリーダーの元に向かった
「えっ?なにこれ?」
今まで見えてなかったのか、メリンダさんが触手巻きを見て眉間に皺を寄せた。
うん、触手に拘束されてる人間なんて……見た目グロテスクですよねぇ
「地下水路で悪い事をしようとしてた人達でしゅよ。あ、グルグルしてるのは無害でしゅから大丈夫でしゅ」
触手が安全物だとぺしぺしと触ってみせる。
「悪い事って?」
「これでしゅ」
僕はリーダーの上に乗せてた爆発物を指さす
「これを避難所の真下に設置しようとしてたでしゅ…」
「これは…っ!?」
箱を確認したメリンダさんが驚いた顔でこちらを見る
「町に7箇所同じ物を設置したみたいでしゅ。ギルドの地下にもありました……なので後5個でしゅ」
「何てことっ!!」
「僕はこれを無効化してからギルドに行くので、メリンダしゃんは先にカレニアしゃんに話をしてきてくだしゃい」
「そんな!!危ないわっ!!」
まぁ…5歳児に爆弾だと…こういう反応だよね?普通
「父さん印の結界が張られてるから大丈夫でしゅ!」
「リクト様のっ?!」
僕の言葉にメリンダさんの目がオタクの輝きを増した
…言い訳に使った言葉が仇となった瞬間だった。




