心配されるっていいもんだ
手に預けられたのは純白の鎧……の一部。
知ってる?鎧って胴体だけで10kg以上あるんだよ…そんなの5歳児が鎧を全部持てるはずもなく…いや、重さ的には持てるけど、とにかくデカいから持つのに一苦労するのだ。
ならばと聖騎士の紋章がついた籠手の部分を持たせてくれた。
ただ、僕が籠手を持つことさえ騎士のアンデット達には心配なようで…
「あのぉ…」
わらわらと僕を取り囲んで頭をなでたり、籠手を代わりに持とうと手を差し出したり…騎士道精神にあふれたアンデット
「あの、大丈夫でしゅので…離して頂けるとありがたいというか…」
いたたまれない…
なんならここに案内してくれたアンデットに向かってカタカタと『あんな小さな子に鎧を持たせるなんて』と抗議しているアンデットもみられ…言葉はわからないのであくまで推測だけれど…
最近人間やめてる説がはびこってて…こうやって普通に心配してもらえるのってありがたいよね…アンデットだけど…
だけど、こうやってなでてもらってても事は進まないので…
「じゃあこの籠手をお借りして…ちょっと村まで行ってくるでしゅ。もうちょっと離れたところで静かに待っててもらえましゅか」
案内してくれたアンデットがカタカタとうなずいているので、「ちょっとすみません…」と僕を囲むアンデット達に言いながら村へと向かう。歩いていける距離だけど、5歳児には遠いのでスケーターに再び乗る…決して怠惰ではない。
アンデットの集団から少し離れたところでリフィに問いかける
「で、これはセントヴィアージュ教会の紋章なわけ?」
籠手の手首の部分に埋め込まれたエンブレムが多分そうなんだろうけど…
ーハイ、セントヴィアージュ教会ノ物デ間違イアリマセンー
つまり、聖女によって犯罪が行われた事が立証されるわけで…
「これは母さんのとこに行かなきゃダメですかねぇ…」
国単位の事件とか…規模がデカすぎて一人でどうこうできる話じゃない。
ーソロソロラナ様ノ目覚メモ近イデス。一度首都二行カレル選択肢モ有リカトー
なぁんか嫌な予感がするんだよなぁ…ほんと聖女がらみはっもう勘弁してほしい…
村の入り口にはすぐ着いた
簡易の木で出来た柵のような物は、夜だからなのか、それともアンデットのせいなのか閉まっており、気軽に入っていける雰囲気ではない。
「すみましぇーん!誰かいましゅか~!」
目に入るところには人の姿は無く…だけど勝手に入るのはダメな気がして、一応大声で村の中へ叫んでみるが返事はない。
しばらく待ってみても…なんの反応もない
「…人がいないのかな?」
ーイエ、生体反応アリマス。家二隠レテイルヨウデスネー
「町に住む人達じゃなくて…もともとここに住んでる人?」
ー反応ガ多クナイノデ、ソウダト思ワレマスー
アンデット達がいるから…夜は閉じこもってるのかな…
「すみませーん!!町のギルドから派遣されてきたんでしゅけどぉ!!」
今度の呼びかけには何軒かの家の明かりが点いた。
そうして今度こそしばらく待つと、ある家の扉が開いた




