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グレンドリア その頃フィースは

「……なんですって」


思わず握りつぶしてしまった手紙をフィースは慎重に開き直して中身をもう一度確認する


『フィース様


フィース様の自宅へ到着が完了し、ナナ様への接触も無事行いました。

ですが、そこで得た情報は信じられないものであり、落ち着いてこの手紙を読んで頂きたく存じます。


まず、伺っていた話と違いリクト様はご不在であること。

ナナ様がラナ様の面倒を見ておられ、現在までご無事に過ごされている事。


なお、ナナ様が魔力操作に目覚められ、ご自宅の維持は問題なく出来ていると聞いています。


現状ラナ様が覚醒休眠に入られている状態らしく、首都への移動は難しいとの事です


我が部隊もジャイアントムカデに遭遇し、ザーク団長以下怪我人が出ている状況ですので、しばらくフィース様の自宅近辺に陣を建て、ナナ様とラナ様の見守りへと任務を移行させ実行していきます』


「ナナはまだ5歳なのよっ!?」


想像より遥かにひどい状態にフィースは取り乱す。


「魔力が覚醒しなくてはならない過酷な状況になっていたなんて…リクトはどうして…」


目に浮かぶのはナナとラナの可愛い寝顔で、それが損なわれていたかもしれない恐怖にフィースは愕然としてしまう


「戻らなくちゃ…」


もはや国などどうでもいい…そもそも自分は継承権を放棄した身ですでに王族の籍も抜けている平民なのだ。

ドレスを脱ぎ捨てようと、手紙を机へ投げ捨てたら紙がもう一枚ある事に気づいた


「…?」


何か他にも報告があるのかとそのもう一枚を手にして文字を見た瞬間、フィースは泣き崩れたのだった。


『お母さんへ


ナナです。ラナもぼくもげんきです。

メディさんからお母さんがかっこいいおしごとをしているとききました。


ラナがおきたらお母さんのところにいこうとおもいます


それまではこのいえがぼくらをまもってくれるのであんしんしてください。


かっこいいお母さんがぼくはすごいとおもいます。

あまりむりしないでおしごとがんばってください。


ナナ


ついしん

お父さんがぼくにつよくなれるほうほうをおしえてくれました。

だからしんぱいしないでね』


「ナナ!ナナ!ナナぁぁぁ!」


まるで我が子の様にその手紙を抱きしめ、涙が溢れるまま叫び続ける。


…いつの間にこんな立派な手紙を書けるようになったのか?

クレヨンで書かれた手紙は小さな子供が書いた手紙そのままだったが、フィースにとってそれは我が子からの初めての手紙であり、この世界の何物よりも価値のある物だった。

母としての情けなさと、喜ばしい我が子の著しい成長…それを間近で見ることが出来なかった恨み…


フィースはナナからの手紙を机の重要書類が入った鍵のかかる引き出しに丁寧に入れた。

そして机の上のベルを鳴らすと側近のジュアンを呼んだ


「フィース様どうされ…」

「すぐに議会を招集しなさい!!さっさとこの現状を打破するわっ!!」


あの手紙からして、この状況を放棄して帰ったらナナに嫌われてしまうかもしれない。

ならばナナが来るまでに全てを終わらせ帰るのだ、我が家へ。



「カイン…覚悟なさい…地獄に落としてやるわ…」


鬼の形相で部屋を出るフィースに、侍女が何人も気を失う被害が出たのだった。

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